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対抗戦 実行委員

 そこは、空き教室だった。


 正確には、今の時間はだれにも使われていないので、綺麗に机が整頓されている教室だ。


 そこで適当に促され、ライル先生の対面に2人は座った。


「話というのは、対抗戦についてです。 その時期が近づいているのは知ってますね?」


 俺は、手を上げてその質問に答える。


「その手のものがじきに始まるというのは知っているが」


「はい。 知っているが……なんですか?」


「そもそも対抗戦っていうのが何かわからない」


「なるほど。 対抗戦を知らない」


「うん」


 ライル先生とアリアが顔を見合わせる。


 あぁ、やはりこれも、この国では常識なんだろうな。


 さっさと常識知らずを卒業したいぜ。


「どこから……そうですね。 この国には、学校が2つあります。 王立である本校と、軍立の第2学園です」


 ライル先生が、指を立て、それを振り回しながら教えてくれる。


「その2つの学校で競い合う……対抗して戦うってことか」


「えぇ、そういうことですね」


「種目は?」


「今年は模擬戦争です。 40対40で旗の取り合いをするようですな」


「ふうん。 そっか。 説明ありがとう」


「どういたしまして。 それでですね。 あなた方に実行委員。 つまりはリーダーとして指揮を取ってほしいという話です」


 面倒くさそうだ。


 最初にそう頭をよぎったが、こういう責任ごとを任されるというのは、なかなか誉れ高いな。


 若干照れ臭いながら、もう1人の任命者がどういう反応を示すのか気になり、俺は隣に座るアリアの方を向いた。


 相手も同じことを考えていたのか、顔を見合わせる。


「私はとても光栄に思います。 レムとならきっと2校にも遅れをとることはないでしょう」


「やる気満々だな。 なぁ、先生。 これは、一体俺たちは何をすればいいんだ? 面倒ごとはパスなんだが」


 ライル先生は、急に難しい顔をしながら、おっそりと喋り出した。


「それなんですけどね。 はい、難しい話なんですが、まず確実に2校に勝利して欲しいんですな」


 それくらいなら、まぁ簡単だろう。


 所詮学生だろうし、俺が本気を出せば……あるいはアリアもいるしな。


「簡単だろうって顔をしてますな。 2つ目の条件として、あなた方は戦線に出ないで、ということでお願いしたいんですよ」


「ん、どうして?」


「この対抗戦は各校の交流、及び教育の成果をアピールする場として設けられています。 つまり、あなた方が強いのは周知の事実ですが、その強い人たちが頑張るだけじゃ、学校としていいアピールにはならないんですな」


「アリアはともかく、俺もばれてるのか?」


「はい。 アピールの相手は王様や軍団長が主ですが、あなたの顔見知りでは?」


「え? レム、そういう方々と面識があるんですか?」


「まぁ、そうだね。 そういうことか」


 王様はもとより、たまに王の横にいたりしたしなぁ。


「じゃあ。 俺たちがすることは、40名の選出とそれを鍛えることか?」


 それを聞くと、ライル先生はさらに複雑そうな顔をして答えた。


「その40名の選出なんですが、学校側での選出になるんですよ。 これがまた、色々ありまして」


「なんでちょっと渋そうなのさ」


「色々あるんですよ。 大人の世界には……でですね。 レム達にはまぁ選抜者を鍛え上げてもらえればいいんですが」


「ですが……なんですか?」


 アリアが聞く。


「ちょっと、2校ではちょっと黒い噂があるので、その調査もお願いしたいです」


 黒い噂ねぇ。


「それは一体」


「どうも、禁忌に手を触れた……だとか。 詳しくはなんとも」


「アリア……どっちが得意だ?」


「どっちというと?」


「調査とプラクティス」


「プラクティスて……どちらかといえば、教えるほうが得意ですかね」


「わかった。 基本的にはそっちを頼む。 ライル先生、噂の方だが、突き止められなかったらそれはそれでかまわんな?」


「白か黒かだけでもという感じですね。 まぁ証拠もない段階では自警団も動かないので、頼みます」


「まぁ、アリアや。 困ったら助け合うということで、ちょっと鍛える方は頼むぞ」


「はい。 任されました。 まぁ、この私のことかですから、完璧にやり遂げてあげますよ」


「そうやって自分でハードルを上げていくんだな」


「ええ。 自信からくる発言ですから」


「……無理はするなよ」


「無理なんて……いえ、ありがとうございます」


「じゃあ、先生。 俺はもう帰っても?」


「いやいや、この後クラス全員で文化祭についての話が……あ、文化祭というのはですね」


「流石に文化祭についてはわかるわ!! その文化祭の話だけど、俺がいなきゃダメ? 後からナギサに聞くけど」


「…………わかりました。 全く、気をつけてくださいね」


「あいあいさー」


 3人で教室に戻ると、だいぶ授業の雰囲気は崩壊しており、各々が好きなことをしていた。


 やっぱり、知らない奴の方が多いなこのクラス。


 そんなに数が多いわけじゃないのにな。


 あ、そうだ。


「あ、お前らせっかく今日来たんだし、俺飯でも奢ろうか? そうしよう。 ローラ、お前さっさと帰るんじゃねえぞ。 ナギサは絶対だし……ジャイケル以外はみんな行こう」


「え? まじ、いくいく」 「やった、きゃあ来てよかった」

「さすがぁ」 「なんだと、俺も絶対行くぞ」

「もう、強引だなぁ」


 なかなか、評判がいいな。


 てか、放課後に誰も予定がないのかい。


「じゃあ、放課後にまた、学校に顔出すからな。 じゃねー」


 俺は教室を後にする。


 なんとなく。 帰るんかいとツッコミが聞こえた気がするが気のせいにしておこう。


「さてと」


 第2校の場所は、ここから真反対か。


 ……視線を感じるな。


 ちょっとおびき出すか。


 そう考えた矢先、背中から、声をかけられる。


「ちょっと顔を貸してもらおうか」


 おびき出すまでもなかったか。


「どこまでだい?」


「いいからついてこい」


 俺は、その男に黙ってついていく。


 かなり歩いてたどり着いたそこは、軍立第2学校。


 そこの体育館に連れ込まれた。


 かなりの人数がいる。 全員ここの生徒……なんだろうなぁ。


「何するつもりだ……エロいこと?」


「なんでやねん!! じゃねえ。 対抗戦が近い。 そして、1校には強い奴が2人もいる。 とすれば……わかるよなぁ?」


 あぁ、こいつら、俺を潰しとこうってことか。


 ふうん。 まぁいいや。


 俺たちが、対抗戦に出ないってのは知らないみたいだし、情報力は残念だな。


 とりあえず潜入成功か。


「丁重にもてなしてくれるの?」


「てめぇ、さっきから太々しいな。 状況見てもの言えよっ!!」


「俺が強い奴だってわかってて言ってる?」


「はっ!! どれだけ強かろうと、この人数だぜ。 対抗戦までベッドでうんうん合わせるには十分だろう」


「はぁっ。 お前バカじゃねえのか? 人数で囲めば潰せる? いいか。 覚えとけ。 そういう小細工が通用しないから、強者なんだろうが」


 そういうと、男はひるんだ様子を見せた。


 が、すぐに俺に向けて魔法を放つ。


 当然、受け流す。


「ちっ、お前らやれ」


「はぁ、面倒くせえ」


 俺は、少し力を加えながら、そいつらを蹴散らすことにした。


 それほど時間もかからないで全員を気絶させることには成功した。


 100人切り達成……いや、100人には足りないのか?


「まぁ、とりあえず。 このぐらいのレベルなら、うちでも勝てそうではあるな」


 せっかくなので、2校の中を探索させてもらおうか。


「ふっふっふ。 これをアレしてなんとやら」


 黒い噂について、少しでも何か分かるといいが。


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