決着
ある条件が揃ったら、それは岩の巨体を穿つ一撃を放つ。
最高の攻撃力と、防御力を併せ持つゴーレム。
そいつを倒すことができるかは、賭けであるが、大分悪くない賭けだ。
「作戦名、矛盾。 開始だぜ」
氷の魔法を放ち、床を凍らせる。
ゴーレムの攻撃は全て踏み込みからの突撃であり、凍った床では攻撃力も機動力も活かせない。
「さて、あとは……」
それでも、ゴーレムは攻撃をやめようとはせず、滑ってはコケるを繰り返す。
腕だけで振られる拳は、かなりの風圧を起こしている。
これなら、このままでも問題ないかもしれないな。
「まぁ、何がどうあれやってみるか」
魔力を貯めると、周囲の魔力が呼応して昂ぶっていく。
大きな氷柱を作り出し、尖った先をゴーレムに叩きつけた。
「プランBと共にCも進めていくか」
氷は砕けるが、ゴーレムには傷1つつかない。
「これじゃあ、だめみたいですね」
ガイドが心配そうに声をかけてくれる。
「安心しろ、まだBがだめになっただけだ。 メインプランは先にある」
ゴレームが立ち上がり、こちらをみる。
床の氷を砕きながら、こちらへ突っ込んでくる。
真っ直ぐに、最速の一撃。
この場にいる中で、最高の攻撃力を持つゴーレム。
その至高の一撃。
「最強の攻撃力と、最強の防御力を持つか……まさに矛盾だな」
突如、ゴーレムの腕が曲がり、自身を攻撃しだす。
ゴーレムの表面はくだけ、中が露出する。
「これは……魔力回路を乗っ取ったんですか?」
「あぁ、一瞬だけだが十分だった。 そして、今回は他の方が上みたいだったな」
ゴーレムの中に、ひかる岩の心臓がある。
それを取り出して、手のひらに転がす。
「これが、魔力供給機関か?」
「はい。 それを砕けば、機能を停止します」
「そっか。 じゃあな。 ゴーレム」
手のひらを握りしめて、それを砕いた。
ゴーレムの目の光は消え失せ、その活動は完全に停止した。
「おめでとうございます。 まさか、単騎でゴーレムを倒せるほどの実力者とは思いませんでした」
「お前……正直だね。 まぁいいや。 帰り道どこ?」
「あ、案内します」
ガイドの案内についていくと、ダンジョンの外に出ることができた。
あとは、王国に帰るだけだ。
「そういえば、マスター。 プランCは何だったんですか?」
「んー。 究極魔法の使用であの場の魔力を枯渇させることだよ」
「ははっ。 冗談がうまいですね」
「うーん?」
「え?」
「いや、そうだよ。 冗談だよ」
「……冗談じゃなかったのですか」
「さて、それはもう確かめる手段がないね」
帰り道は、二人の会話以外はかなり、静かであった。




