帰郷
「おぎゃあ。 おんぎゃあ」
眼が覚めると、見慣れない天井。
鳴き声を自分で止めることはかなわない。
うまく体を動かすことはできず、視界の端にチラチラと小さな手が見えることを覚えている。
「よしよし。 いい子ねぇ」
「おぎゃあ。 おぎゃお」
綺麗な人がこちらを見下ろしている。
ツノが生えていて、牙を口の中に隠すその人は、まるで人のようには見えない。
そこで、バタンとドアが開かれる音が聞こえる。
そこには、ひかる剣と、輝く盾を持った男が立っていた。
「まさか、君だったなんてな」
「あぁ、あなた。 この子には罪はありませんよね」
「……魔物の子を、見過ごすわけにはいかない」
「あなた……だったら」
その女性は、思いつめたような顔をしていたのを覚えている。
女性は、俺の顔を一撫でした後、ひたいにあるツノをつかんだ。
そして、暖かさが流れた後、それは痛みに変わった。
「おぎやあ!!」
一層、俺の鳴き声は大きなものとなる。
「お前っ!!」
「これで……この子は。 見た目はただの人です」
「……わかった」
男の人は泣いていたことが記憶にある。
そこで、記憶が途切れた。
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「寝ていたのか? すごくうなされていたようだが」
夢にいた、男の人。
俺の父親である。
「赤ん坊の頃の夢を見ていた……」
「そんな昔のことを覚えているわけないだろう……そんなことより、そろそろ祖国に戻るぞ。 また、戦場だ」
俺たちは、父子家庭で、傭兵をやっている。
そして、祖国であるルクセン王国と、隣国であるブルク王国で戦争が起きている。
俺たちは、ルクセン王国の援護をするために帰国をすることとなった。
「外へ出てみるといい。 懐かしの風を感じられるぞ」
親父はそういうと、先に外へと出て行った。
俺は、その後についていった。
次回、世界観説明です。