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一面ボス戦 その1

 ルクセン王国の正門から出て、南西に8キロメートルほど進んだところに、魔王のダンジョンはあった。


 周辺は平原だが、ある一部分だけは木々に囲まれている。


 それほど大きくはないが、これがダンジョンなのか?


 そう思いながら外周を歩きながら見て回る。


 すると、一箇所だけ空間が歪んで渦が出来ている場所を見つけた。


「はっはーん。 なるほど、ここが入り口か」


 本当にこれに触ってもいいのか。


 そもそも、触れれば入れるのか。


 わからないが、周囲を見ても進む以外の選択肢はなさそうだ。


 念のため、火の玉を軽くダンジョンにぶつけてみるが、見えない壁に衝突して消えていった。


「外部からの影響はないってことか……じゃあ、いくしかないなぁ?」


 ゴクリと一息を飲んで、渦に右手のひらを触れる。


 すると、周囲が光に包まれ、身体は渦に飲み込まれていった。


 一瞬、意識が飛ぶ。 そして、次に気がついた時には、森林地帯の中にいた。


 鳥はさえずり、木々は生い茂る。


 そして、葉の隙間から光が差し込めていた。


 それほど暗くはないが、方向感覚がつかめない。


「こういう時は……っと」


 コンパス。


 自分の進むべき方向を指し示すアイテムだ。


 これを使えば迷うことはあるまい。


「どこにしまったかな……ここか」


 コンパスを取り出し、進むべき方向を確認する。


 その針は、クルクルと回る。 だんだんと速度を上げながら。


 どうやら、ダンジョン内では効果を発揮出来ないようだ。


「ポジティブに受け取れば、どこへ進んでも正解ってことか」


 とはいえ、前も後ろもわからないのでは悪戯に時間と体力を失う。


 目立ちやすい木に印をつけ進んでいくことにした。


 ある程度進んでいくと、視線を感じる。


 気配をうかがうと、視線だけではなく、獣の息遣い、魔物の詠唱、そして、それよりもヤバイ気配を放つのがいくつか感じられる。


「この気配……魔獣か。 しかも複数体」


 非常に厄介だ。


 そもそも、今の実力で、魔獣の相手はできない。


 一面のザコでこれは、さすがはラスダンと褒めるしかないな。


 懐の剣に手をかけると、詠唱が止まる。


 抜くと同時に、魔法が飛んでくる。


 発生源はわからないため、見てから避けることになる。


 くそっ、避けるのに精一杯で、敵を探すどころじゃないぞ。


 避ける動作は最小限を心がけるが、それでも隙が生まれてしまう。


 そして、周りの獣はその隙を見逃さない。


 火球を腕を上げて避けると、脇が開く。 その脇腹を目掛けて、獣が牙をむき出しに突撃してきた。


 身体を半身で晒して避け、剣の刃を当て首を刈り取る。


 四足歩行のこの獣は、首を飛ばされると機能を失い、動かなくなった。


「ちぃっ。 これでまだ1匹か……こなくそ」


 詠唱のタイミングがずれ、魔法の波状攻撃が飛んでくる。


 そして、それを避ける動作の隙に獣が攻撃と離脱を繰り返す。


 牙を生やしたイノシシの頭に、犬猫のような身体。

 そのアンバランスな獣の突撃は掠るだけで出血が止まらない。


 1匹……また1匹と獣の数を減らすが、周囲の気配は減ることを知らない。


「魔獣め。 賢いな。 ザコをけしかけて弱ったところを狙うか」


 呼びかけてみるが、返事はなく、ただただ攻撃が返ってくる。


 出血が多く、疲労感が身体を重くする。 息を切らす。


 避ける動作が次第に緩慢になっていく。


 くそっ、今のは当たっててもおかしくなかった。


 そう思える攻撃がだんだんと増えてきた。


 今のは……じゃなくて、これを続けていたら、いつか当たるな。


 これは、奴らにとっては狩りなのだろう。 ヒトを弱らせて、首を取る。


 だからこそ、そこに慢心が生まれるというもの。


「この俺が、駆け引きをしなければならないとは……悪いな。 だが、そこまでさせた自分たちを誇れ」


 俺は、バランスを崩して膝から崩れる。


 他に膝をつけながらも、剣で魔法を流して、直撃を避ける。


 だが、そんな無理は許されず剣は弾かれ手元を離れた。


 その隙に、獣たちが一斉に飛び出す。


 11匹、これが周囲にいた獣の全てだろう。


「さすがは獣、所詮は罠にかかるような畜生だな。 それはラスダンだろうと変わらないか」


 俺の周りに、光の魔法陣が生まれる。


 避けながら地に刻んだ魔法陣、それに魔力を流し浮かばせた。


 それはかなりの魔力を注いだもので、強力な結界となる。


 それに触れた獣は、触れた部位からチリになる。


 獣は全て消滅した。 その後に飛んでくる魔法も、打ち消される。


「はぁ……はぁっ。 一面でこれはダメでしょ。 でもまぁ、引きづり出したぜ」


 周囲を囲むように、魔物が現れる。


 目に、手と翼をつけたような姿。


 その魔物たちの間から、二足歩行の獣が3匹現れた。


 単眼の、巨人。 その肌にびっしりと毛を生やし強烈な咆哮を聞かせる。


 その巨人の一撃が来る。


 耐えられるか。


 そんな祈りは届かず、結界は破られ、俺に拳がとどく。


 腕を、あばらを軋ませながら、俺の体はノックバックし、木に打ち付けられた。


「折れてないな……とりあえず、戦える……戦えるなら勝てるっ!!」


 結界は壊れたが、光の魔法陣の破片はまだ残されていた。


 それを操り、周囲に振り回す。


 それに触れた魔物は消滅していく。


 悲しいことに、魔獣には効果がないようだが。


 数匹、魔物を残してしまった。


 魔獣が拳を構える。 その拳は、赤く、あるいは青く光る。


「悪いな……肉弾戦なら負けない」


 俺は、落ちた剣を拾い、構えた。

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