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ガイド

 心地よい日光の中、まどろみの中で俺はそれと出会った。


「ええと、さっきまで授業受けてたはずなのになぁ。 おやおや」


 ひざ下まで泥に浸かり、周囲は木々が生い茂っている。


 木はぴったりと生えており、外に脱出することはできなさそうまだ。


「まぁ、これもまた一興」


 これは、夢であることがはっきりと理解できていた。


 そのためか、焦りなどの気持ちはなかった。


「眷属さんいらっしゃいましたね。 思ってたよりも成長してるようで驚いています」


 どこからともなく声が聞こえる。


 キョロキョロと見返すが、どこにも人影はない。


「どこを見てるんですか? ここですよ、ここ」


 声を辿ると、そこには一つの書物があった。


「いやいや、本が喋るわけないよな」


「そうですよね。 私もそう思います」


「……さすがは夢、なんでもありだな」

 

「いえ、私、現実世界でも喋りますよ。 ただ、一つのガイドです」


 今の言葉の情報量はなかなか多い。


 だが、その中でも特別、きになることがあった。


「現実世界でもって?」


「あ、じゃあ本題に入りますね。 私、ガイドと申します。 今はダンジョンの最深部にいますね」


「ここが、最深部ってことか?」


「そうですね。 もちろん、現実世界のここにきていただく必要がありますが」


「ごめん。 ダンジョンってなに?」


「あら、そこからですか。 ダンジョンというのは、アーティファクトの魔力により、全ての生物や地形に影響された場所のことです」


「へぇ、ちなみにアーティファクトって?」


「お答えしましょう。 私がアーティファクトです」


「うーん。 答えになってるような、なっていないような」


「まぁいいじゃないですか。 それでですね。 眷属さんには是非、私を見つけてほしいんですよ」


「なんで?」


「なんでって、私、かなりお役に立ちますよ? それに、先代の意思でもありますし」


「先代の……意思ね」


「はい。 あの方には、とても返しきれないほどの恩があります。 ので、是非見つけてくださいね」


「見つけろったって、場所はわからないぜ」


「いいえ、分かりますよ。 あなたになら。 魔王のダンジョンの最深部にいます。 このまま最終章まで放置して、急に思い出す展開はよしてくださいよ」


「なんの話だよ……わかった、必ず役に立つんだな?」


「はい、絶対です。 では、そろそろお時間のようなので」


「時間……?」


 そう聞くと、世界が白くなっていく。


 バタン。 頭を何かで叩かれた。


「レムくん。 来るのは偉いことですが居眠りは感心しませんね」


「……あぁ、そうだ。 ごめんなさい」


 ライル先生の説教は意外とクドクドして長かったが、俺の耳には届かない。


 魔王のダンジョンね。 ちょっと行ってみるか。


 授業が終わるまで、俺は上の空だった。

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