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けっとう

 で、どうしてこうなってしまったのか。


 俺の目の前には、拳を固めやる気満々のアリアがいる。


 そして、俺たち2人を囲うように、クラスメイトたちが立っていた。


「レム。 お互いに手加減なしで良い戦いにしましょう」


「あ、はい」


「なによその気の抜けた感じ、気を抜いてると……死にますわよ?」


 くそっ、こいつやる気満々じゃあないか。


 落ち着け……思い出せ。 どうしてこうなった。


 確か、自己紹介の後、みんなの実力を見せあおうってアリアが言い出して、発表会になったんだ。


 それで、1番と2番が戦えばいいんじゃないとか、ローラが言い出して……なるほどな。


 アリアめ、はじめからそのつもりで提案してたな。


「どうなっても知らないからな。 泣いてもやめてやらないぞ?」


「泣くのは一体どちらでしょうね」


 お互いの間で、バチバチと火花が散る。


「さて、準備はいいようだな……始めっ!!」


 ライル先生の合図と同時に、アリアが距離を詰める。


 確かこいつ、武闘家の娘だったな。


 何度かパンチを受け、力を見る。


 ガードをすれば、ダメージにはならないってところか。 受け逃しはしたくないな。


「なかなかやるな」


  「そちらこそ」


 アリアは軽く跳躍して、拳を振り下ろそうとしてくる。


 なにか、違和感を覚える。 アリアの魔力が……妙だった。


 バックステップで距離を取り、拳を避ける。


 すると、その地は割れて凍りつく。


「こいつ……やりやがる」


「やっと表情が強張りましたね」


 地面を張る氷は広がっていき、立っていることでさえ難しくなってくる。


 なるほどな。 アリアめ強いな。 伝説の武闘家の血はもちろん、魔法まで操ることができ、さらに実践慣れもしている。


 最初、軽い攻撃をあえてガードさせ、次なる一手に防御を誘発させるか。 かなりの駆け引き上手だ。


「だが、武闘家にとってこのフィールドは致命的だろう。 踏み込みが満足にできまい」


 もちろん、そんなことは思ってはいない。


 自ら、自分に不利なフィールドを作るような相手ではないことはわかっている。


「さて、ソレはどうでしょうか」


 アリアは、足に手を当てると、氷のスケートシューズを作り出す。


 表情を滑りながら、高速で接近、攻撃、離脱を繰り返す。


 一方的に有利なフィールドを作り戦う。 かなり理にかなっている。


 さて、どうするか。


 氷を溶かすだけなら簡単だが……どうせなら利用してやりたい。


「そんなに氷が好きなら、好きなだけやろう」


 俺は、さらに氷の魔法を上書きし、表情に凹凸や壁を作る。


「流石に、あなたも氷の魔法を使えますよね。 でも、それがどうしましたか?」


 アリアは、氷を殴って砕きながら、砕氷を飛ばしてくる。


 それを腕で払えば、アリアの攻撃が避け切れずもらってしまう。


 それの繰り返しにより、少しづつダメージが重なってくるが、俺は構わず氷を作り続ける。


 床には、散らばった氷の破片が積もっていき、スケートシューズでも、滑ることが難しくなっていく。


「なるほど、それが狙いですか? でも、これなら踏み込むことができます。 その狙いは的外れだったようですね」


「……いいや、これだけ積もれば十分だ」


 俺は、魔力を溜め、炎の柱を作る。


 それは、氷に熱が奪われ、一瞬で消えるが、足元には暖かい水たまりができる。


 それは、かなり早い速度で蒸発していく。


「どういう意図があっての行動でしょうか」


「見てればわかる……出来たらでいいから、ガードをしてくれよ」


「……親切にどうも」


 俺は、雷の魔法を使い、周りに電気を走らせる。


 それは、空気中のチリを通り広範囲に飛び続ける。


 そして、目標物であるアリアに触れ、その身体を痺れさせる。


「くっ、なかなかやりますね……ですが」


 アリアは、氷のトゲを作り出し、俺の足元に投げた。


 それを軽く避け、雷を出し続けるが、その雷はある一点に向かって飛び、アリアに触れることはなかった。


「なに? これは……」


「そう、避雷針です。 氷の即興ですが、うまくいきました」


「そうか。 そうだよな。 お前、死の覚悟はできてるか?」


「なにを?」


 俺は、その間も雷を出し続ける。


「いいから、出来てるか?」


「当然です。 たとえ学生同士の戦いであろうとも、命を懸けての戦いだと思って行ってます」


「そうか、いい覚悟だ。 なら、仕方ないよな」


 雷を、止める。


 そして、少しの炎を出現させる。


 それは、急速に広がっていき、一瞬で消えた。


 呼吸が次第に苦しくなっていく。


「くっ、はぁはぁ。 いったい……なにを」


「水素爆発で……ふぅ。 あたりの酸素を奪った」


「はぁはぁ。 水素……爆発?」


「氷を溶かしてから、電気分解をしたんだ。 後は、火種を作れば……というわけだ」


「しかし、これは同条件です。 なら、負けるわけには」


「いいや、違うね。 魔法をある程度使える俺と、武闘家のお前ではこの条件は大きな差を生む」


「大きな……差?」


「お前が無酸素でどこまで戦えるか、見てやってもいいが。 降参してくれればそれで平和に終わるぞ」


「誰が……くそっ」


 アリアは、拳を振るい、蹴りを繰り出しこちらを倒そうとしてくる。


 俺は、それを最小限の動きで避け、捌く。


 だんだんその動きは鈍くなり、しまいには止まってしまった。


「悪いが、そこまでですな」


 ライル先生から止めが入る。


 ホッと一息ついて、周囲を見ると何人か座り込んでいた。


 まぁ、大体立っていられるなら、かなり優秀と言えるな。


「ありがとうございました」


 アリアがこちらに手を伸ばしてくる。


「こちらこそありがとうだ」


 戦いの後の握手を行なった。


 アリアは、両手を添えて、言ってくる。


「また、よろしくお願いします」


 やだね。 もうごめんだ。


 そうは思っても、言うことは出来ない。


「まぁ、機会があればな。 さて、他の組み合わせで戦ってるのも見せてくれよ」


 クラスの人たちの実力が知りたい……か。


 確かに、自分のことを公開さえしなければ、同意する内容だな。


 この後も、色々な組み合わせで戦いを行っていった。


 その間、アリアからの視線がすごい感じられた。


 気に入られたのか……その逆か。


 その逆ならちょっとやだな。


 結局、その日は何事もなく終わっていった。



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