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僕達の日常  作者: さきち
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お友達?

メッセージアプリの友達に追加した、結衣のお父さんとお母さん。そのお母さんから、メッセージが来るわ来るわ。と言っても返信は要らないと、最後を毎回締め括っていて。ただ送りたいだけだから、ほって置いたらいいと結衣は言う。そうは言われてもと、律儀に返していたら、お母さんからもホンマに返信いらんで?と関西オカンキャラのスタンプが来た。こんなスタンプあるんだなぁ、初めて知ったよ。それからは、特に興味をそそられた内容にだけ返信する事にしている。

肝心の内容なんだけど、今日の料理の出来が良いだの、本の感想だの、面白かった話など色々で。

なので僕はお母さんに、提案してみた。SNSで発信してみてはどうかと。結構面白い内容が多くて、さすが関西人?って言ったら関西の人に怒られるかな?

ただの自己満足だと言っていたけれど、反応がある方が面白いだろうなと思ったんだ。自分で発信する事は殆ど無いけれど、僕は営業だから、知り合った人の近況などはチェックしている。話のネタになるから。その人なりの視点が面白くて、ついつい観てしまったりね。

まずは登録してみてはどうかと提案したら、結衣に教えてもらうわぁとメッセージが来た後、ホンマにええ子やなぁとオカンキャラの微笑んだスタンプが届く。使い道は無いけど、そのスタンプ欲しいかも。



朝、いつもの様にガタゴトと電車に揺られながら立っていた。

「司さん、母に余計なこと言いませんでした?」

いつもの様に同じ電車に乗り込んで来た結衣が、おはようございますと言った後に、そんな事を言う。

「え、SNSで発信してみたらって言ったこと?」

「それです!」

「イン◯タとツ◯ッターとフェ◯スブック、どれがええかなぁ?って電話が来て。司ちゃんが面白いって、褒めてくれはるからぁって嬉しそうに。母に何、吹き込んでるんですか!」

うん?今、司ちゃんって言わなかった?聞き間違いかな?

「え〜、僕、思った事言っただけだよ?」

「調子に乗ると、面倒臭いんですってば!」

昨日だって、散々電話で喋りまくられて、いい加減辟易したと結衣はぼやく。ありゃ、そんなところに影響が出ているとは…。


「ねぇねぇ、それよりお母さんの使ってるスタンプ、欲しくなって買っちゃったんだけど。」

「使い道、ないでしょう?」

冷静な顔で結衣は指摘した。まぁね。僕、オカンじゃないからね。

「…そうなんだけど。面白いよね?」

「…毒されてる。」

額に手を当てて、彼女がうな垂れた。

「そう?」

「面白さに重点を置くようになったら、毒されている証拠です!」

がばっと顔を上げて、僕に言い含めるように話す。え、そうなのかなぁ…。

「うちの母親の価値観では、かっこいいよりも面白いの方が上なんです。他にもイジられたら美味しいと思え!とか。」

私は芸人じゃないのに!と不服そうな顔をする結衣。

「あれ?お父さんはそんなに面白い感じじゃないよね?」

寡黙な感じだし。タイプとしては真逆じゃない?

「母に言わせると、実際に格好良いのと格好つけてるのでは違うんですよ。お父さんはカッコいいらしいです。ちなみに、結婚相手に面白さは求めないんですって。」

ああ、何となく分かる。結衣のお母さんの好みは、俺かっこいいだろアピールをしてない男ってことなのかな?僕、お母さんの好みの分析してどうするんだろ…。


駅を出て、会社に向かって歩く。途中でいつもの様にカフェに寄った。僕はブラックコーヒーを、結衣はカフェオレを注文して席に向かい合わせで座る。

前に実際に会った時の、僕への評価は悪くなかった様で、彼女が両親が褒めてたと言ってくれた。

「司ちゃんはええ子やわぁって、言ってましたよ?」

「ちゃん…ちゃん付け?」

小学生以来だよ。そんな呼び方されるの。さっきのやっぱり、聞き間違いじゃなかったんだ。

「何故か気に入られてますよね。」

多分、司さんが面白そうに話を聞いてたからだと思うと、彼女は分析している様だ。

「カッコよく無いからかな?」

少なくとも、お母さんに格好つけてるとは思われて無かったみたいだ。そもそも、格好付けようにも、イケメンじゃないしね。

「司さんはかっこいいですよ?青木さんや緑川さんよりずっと。私の中では。」

結衣はジッと僕を見詰める。

「…かっこいいって、初めて言われた!」

ちょっと、言葉にならないくらい、嬉しくて感動。その言葉を思い出すだけで、しばらく生きていけそう…。人目がなければ、思いっきり抱き締めていたと思う。

ああ、テーブルが僕の邪魔をしている。仕方ないので、テーブルの下で彼女の手を握った。

「…そうでしたっけ?」

あれ?みたいな顔をして結衣は僕を見る。いや、間違いなく初耳だよ?

「あのぉ、出来ればもう一回言ってくれる?」

お願いの思いを込めて、手をギュッと握りながら結衣を見詰めると、仕方がないなぁと笑ってくれた。

「…司さんはかっこいい!」

「くぅ〜。僕、頑張るから!」

結衣の手を握りながら、その言葉を噛み締める。

「今日の僕は、無敵かも知れない!」

「…かっこいいに、そんな効果があったとは…。」

彼女はポツリと呟いた。



その数日後、SNSを始めたお母さんから友達リクエストが来た。丁度風呂上がりに、リビングで寛いでいた時だ。

それと同時に、珍しく結衣のお父さんから、毎回ご飯を食べる前に妻が写真を撮るので、お預けされた犬状態です。ワン!とメッセージと一緒にわんこのスタンプが届く。お父さん、意外とお茶目?じゃなくて!申し訳ございません!とビビりつつメッセージを送ったら、冗談だよ?と軽く流された。ホッとして、力が抜けた身体をソファーに横たえる。

僕はまだまだ、白石家を理解していなかった様だ。あのお母さんとずっと一緒にいたら、僕なんかよりずっと毒されている…もとい、影響を受けているに違いないのに。


そんなやり取りの後、僕はお父さんへの認識をお茶目な人に改めたのだった。

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