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僕達の日常  作者: さきち
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海とバーベキュー

季節は八月に入り、夏真っ只中だ。今日は、夏っぽい事をしたいと言う黄瀬さんの提案で、彼の知り合いの別荘を貸してもらって、泊まりがけで一日遊ぼうという予定になっている。天気も快晴で、申し分ない。


僕と結衣はナビを頼りに、車でやって来た。郊外とはいえ、駐車スペースも広くて庭もあり、豪邸といっても差し支えなさそうだ。これで別荘なんだから、お金って、ある所にはあるんだなぁなんて思ってしまった。一体どんな知り合いなんだか。


先に来て待っていた黄瀬さん夫婦と、先に到着していたらしい青木と姉さん達が、玄関で出迎えてくれた。

「お邪魔します。黄瀬さん、広いですね。」

「そうだろ?」

自分の手柄の様にニヤリと笑った黄瀬さんを、涼子さんは苦笑いで見ている。


「司君!結衣ちゃん!海!海行こうよ!早く!」

浮き輪に空気を入れてもらって、穴の中に入りながら瑠璃は僕の手を引く。早速水着に着替えているところを見ると、待ちきれないらしい。

「はいはい、荷物置いてからね。」


午前中に到着したから、荷物を置いた後、早速海へ繰り出した。瑠璃のはしゃぎっぷりはそのテンションで一日保つのかと心配になる程。青木と姉さんの手を引いて、砂浜に走っていく様子を、転ばないだろかと見守った。

青い空と白い雲、寄せては返す波と砂浜を眺めやる。波の音と瑠璃達の笑い声が聴こえていた。

瑠璃じゃなくても浮き足立った気分になる。隣には水着姿の結衣がいて、つい上着の裾から覗く白い太腿に目がいってしまう。普段も見ている筈なのに、その白さに目眩がしそう。昼間の太陽の下だからだろうか。


結衣と一緒にビニールシートを敷いて、パラソルや折りたたみの椅子をセットしていたら、赤城さんと緑川先輩が、海へやって来た。僕達は手を振る彼らに、手を振り返す。

緑川先輩は、肩からクーラーボックスをさげていた。そう言えば飲み物を持って来ていなかった。さすが先輩、それとも赤城さんかな?気がきく。

もう、皆んな到着したと、緑川先輩が教えてくれる。

「黄瀬さん達は来ないんですか?」

「おじさん世代は、海は遊ぶものではなく、眺めるものなんだってさ。女性陣は日焼けは嫌だって。」

これ以上シミが増えるのは、我慢ならないらしい。…なるほど。

「遊ぶのも、楽しいけどなぁ…。」

「その代わり、バーベキューの用意しながら、もうビール飲んでる。」

「早っ!まだ午前中なのに…。」

「父さん達は、アレで楽しんでるんだよ。桃井さんは、本当のバーベキューを教えようって張り切っているし。」

「本当のバーベキューって何だろう?」

「焼肉とバーベキューを混同している人が多過ぎるって、嘆いていたけど。」

まぁ、美味しい肉が食べられるなら文句はない。


喉が渇いて、飲み物を飲みにパラソルに戻って来ると、先に椅子で休んでいた先輩に声をかけられた。

「青木、上手くいっているみたいだな。」

皆んなが仲良く遊んでいる様子に目を留めて、緑川先輩が呟いた。

「そうですね。僕の両親にも気に入られてましたよ。」

「そっか。良かったじゃないか。」

「そうですね。」

今、青木達と結衣と赤城さんは、砂の城の作成に心血を注いでいる。水と砂の配合から、城のデザインまでもの凄く凝っていて、砂遊びってこんなに真剣にするものだったっけ?と思うぐらい。凝り性な赤城さんの指示でいつのまにか、皆んなが動いていて、さっきまでそこにいた自分も真剣になっていた事を、離れて見てみると笑えてくる。

城の完成が告げられて、歓声が上がっていた。皆んな満足げな表情だ。その後は写真撮影に余念がない。

「あ、幸せな青木を埋めてやろう。」

緑川先輩はニヤリと笑うと、スコップを持って青木に近づいて行った。…青木頑張れ。



バーベキューの準備が終わったらしく、美穂さんが僕達を呼びに来た。戻って、シャワー浴びて着替えるとサッパリして気分が良い。

あ、青木はどうなったかって?ちゃんと皆んなで掘り出してあげたよ。青木を置いて帰ろうとした先輩が、子供の前で意地悪はダメだと、赤城さんに怒られていたのを僕は見なかったフリをした。これは処世術というヤツです。


ウッドデッキの上にセットされたテーブルには、色鮮やかなサラダが並んでいて、すでに焼き上げられた肉や野菜が皿の上に乗っていた。日陰だし、風が気持ちいい。早く食べてと桃井さんが僕たちを急かす。至れり尽くせりで良いんだろうかと思ったけど、聡子さんはアレで楽しんでるんだと笑う。世話焼きの彼らしいと。

そんな感じでバーベキューとビールを楽しんでいた。海で遊んだので、心地良い疲労感が僕を包む。もうあまり動きたくなくなってきて、後で瑠璃と一緒に昼寝でもしようかななんて考えた。

黄瀬さんと緑川さんは、既に出来上がってしまっている。二人ともアルコールには強いから、顔色は変わらないけど、いつもより陽気でお喋りだ。


瑠璃は膝から膝へみんなを渡り歩いている。その度に愛想を振りまき、大人達を落としていて、どこでそんな技を覚えたのか非常に気になった。保育園で習得したのだろうか?今は緑川さんの膝の上で、ウインナーをパクついている。

「この中で誰が一番好き?ママ以外で。」

緑川さん、禁断の質問をぶち込んできたな…。みんなの視線が瑠璃に集中する。何気ない風を装っているけど、焼くのに集中していた桃井さんも、聞き耳を立てているみたいだ。

「みんな、好きじゃ、だめ?」

少し困った顔で、潤んだ瞳で瑠璃は答える。

「…良いよ!みんな好きなんだよね!」

ああ、緑川さん秒殺。会社では絶対にしない顔だよ、アレ。桃井さんも顔がにやけている。

「うん!」

「4歳でオヤジ共を転がすなんて、将来有望だな。」

黄瀬さんは感心している。いやいや、逆に心配だわ。

「でどう?ここ気に入っただろう?まぁ、内装は古いけど。」

黄瀬さんが緑川さんに話し掛けた。

「リフォームしないと難しいんじゃないか?」

確かに、綺麗だとは言っても一昔前のデザインだ。

「逆に言えば、好きにリフォーム出来るぞ?」

「お前、リフォーム費用浮かせようとしてないか?」

「……まさか。」

間がありましたよ。答えるまで。

「図星だろ?」

「でも、その分安くするけど?」

緑川さんは、瑠璃をジッと見つめる。

「…孫ができたら考える。」

ぶほっ!と緑川先輩が吹いた。赤城さんは、咳き込む彼の背中を撫でている。

天然なのか、圧力なのか、微妙な所だな…。先輩と違って緑川さんは涼しい顔で、そんな息子を眺めていた。美穂さんも苦笑いだ。


グラスに汗をかいた、少しぬるくなりかけたビールを飲み干して、海を眺める。

結衣や姉さんや、青木も、皆んな笑顔でここに居ることが不思議で、この時間が愛しい。今までも色々あったし、これからも色々あるんだろう。だけど、こんな風に皆んなで笑い合えたら、幸せな時間を共有できたら、どんな事も乗り越えていけそうな気がした。

いつもお読み頂きありがとうございます。

私の住んでいる地域では、今桜が満開です♪毎日、花見をしながら通勤していますが、綺麗ですよね。

ソメイヨシノが終われば、枝垂れ桜、その次は八重桜と次々に楽しめるこの季節が好きです。山が萌黄色になるのも、もうすぐでしょうか。

冬場は体調が低空飛行だったので、春は上昇気流に乗りたいところ…。

ゴールデンウィークは仕事で、10連休ではありませんが、きっとそういう方も多いはず。頑張りましょうね☆

では、また☆あなたが楽しんでいてくれますように♪

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