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僕達の日常  作者: さきち
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初詣

暇なので、姪っ子の瑠璃を誘って近所の神社まで初詣に行くことにした。姉も母もゆっくりしたいだろうと思ったからだ。やんちゃ盛りの3歳女児は元気いっぱいで、寝ている時以外は常に動き回っている。油断すると手を振り払って、何処かに行ってしまうので、道路では気が抜けない。


姉は妊娠し、出産して実家に戻って来た。瑠璃は私生児と言うやつである。始めは意地を張って、帰って来るつもりはなかったらしいが、一人で子育てしながら働くのは想像以上に大変らしい。憔悴している姉を見て両親が説得したという。子供の為にもその方が良いだろうと、納得して提案を受け入れた様だ。

前は近くに住んでいたので、よく顔を出していた。こんな僕でも居ないよりはマシらしく、姉が短時間出かけるときに、子守をしたりしていた。オムツ替えだって平気だ。


赤ちゃんの頃から見ているせいか、物凄く可愛い。会いに行く度にぬいぐるみや玩具をあげていたら、姉や母に呆れられた。嵩張らないものにしてという姉の提案を受け入れて、最近は髪留めや絵本、服などにしている。服は嵩張るが、すぐ大きくなるのでいくつあっても良いらしい。


「あんた見てると、誠司さんを思い出すわぁ。」

と母が言っていた。誠司とは叔父の事だ。生涯独身だったので、姉や僕を本当の自分の子供の様に可愛がってくれていた。そう言えば叔父さんも色んな物を、持って来てくれたなぁと思い出す。

病気で一年前に亡くなってしまった。僕は叔父の遺産のマンションを譲り受けたが、整理がまだ終わっていない。賃貸アパートとマンションを行き来して生活している。一月中には完全にマンションに移行するつもりだ。


「つかさ〜。遅い!」

神社の石段を先に駆け上がって行ってしまった姪っ子を追いかける。

「せめて君付けで呼んでくれる?」

追いついて文句を言う。

「だってじいじもばあばもママも、つかさって呼んでるよ?」

成る程、納得する。いやいや、駄目だ。

「お友達のことも、君とかちゃんとか付けないの?」

瑠璃は少し考えた。

「…つかさ君て呼ぶ。」

なんとか納得してくれた様だ。成長を感じて嬉しくなる。

「ありがとう瑠璃ちゃん。さすが、もうすぐ4歳だねぇ。」

瑠璃は、ふふんと得意げに笑う。

今度はゆっくりと、手を繋いで残りの階段を上がった。


元旦の朝と言うだけあって、チラホラと人がいた。有名な神社ではないが地元の人々から愛されている。手を洗い、口をゆすぐ。

がらんがらんと鈴を鳴らす。僕がお賽銭を入れると、瑠璃もしたがったので抱っこして入れさせてあげた。二礼二拍手して手を合わせる。一礼をして目を開けると、瑠璃はまだ熱心に祈っている。目を開けたところで何を祈っていたのか聞いてみた。

「ママに楽しい事がありますようにってお願いしてたの。」

「あるよ。きっと。」


姉さんは頑張ってる。仕事に子育てに、家事も。華やかな見た目に目が行きがちだけど、誰よりも強くて優しい、自慢の姉だ。そういうところを本当に分かってくれる人が現れたら良いのに。

男を見る目が無いのか、悪い男に好かれるのか。そんなこと言ったら、姉に精神的に追い込まれそうなので言わないが。

姪っ子が優しい子に育ってくれて嬉しい。前は赤ちゃんだったのになぁ。


今日は元旦だからか、神主さんや巫女さんがいる。御守りも売っていた。

境内の木におみくじの紙が括り付けられているのが目に止まる。

「おみくじしようか?瑠璃ちゃん。」

「うん!」

八角柱の御神籤と書かれた筒を持って振る。瑠璃には重かった様で、手伝った。数字を巫女さんに伝えてお金を払う。

御守りが売っていたので、家族へのお土産に買って帰ろう。

瑠璃は吉、僕は大吉だった。幸先が良いと嬉しくなって、スマホで写真を撮って青木と彼女に送る。


家に帰ると、みんなが正月番組を観てくつろいでいる。お土産の御守りを渡す。

「車によく乗るお父さんには交通安全ので、習い事が多いお母さんのは上達守で、姉さんは美守です。」

「…私も美守が良かった。」

母が姉に買ってきた御守りを見て、不服そうな顔をする。今更そんなの欲しがるとは思わなかったので、困った。いくつになっても美しくありたいのは女の性なのかもしれない。

父が目線で、お前もまだまだだなと語っていた。

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