表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達の日常  作者: さきち
50/135

彼と野菜

昨日ラジオで仕入れた情報で、ラジオのイベントに参加した。無料のライブやフリマもあって、凄く楽しかったねと彼と話す。飲食スペースも充実していて、大満足だった。司さんはラジオのナビゲーターの人と握手して、凄く嬉しかったらしい。

帰りの電車で、スーパーで買い物して帰ろうと彼に言ったら、そうだねと同意してくれる。


「昨日は結局ラーメンでしたから、今日は野菜を食べないといけないですね。」

「…野菜。」

彼の表情が曇る。最近はちゃんと食べてるって言ってたのに。社食だけかなぁ?

「何か作りますよ。何か食べたい物ありますか?」

「ハンバーグ食べたい。」

「確かに、一人暮らしだと作らないメニューですね。」

莉子だと気にせず、作ってそうだけど。そう言えば、焼くだけのものを買って済ませてしまうかな。私は揚げ物なんかも嫌厭してしまう。油が飛び散ると掃除が大変だから。でも、そうすると、ワンパターンになってしまうんだよね。

自分の為に作るのは億劫に感じるのに、二人分だと作る気力が湧いてくるから、不思議だと思う。やっぱり食べてくれる人がいるのと、いないのとじゃ、違うんだなぁ。


早速スーパーに寄って、野菜売り場にやって来た。

「レタス買うの?」

私がレタスを選んでいると、そう言って、彼は少し困った顔をする。給食で嫌いな物があった時の、小学生みたいだと思う。

「嫌ですか?」

「…レタスって苦いよね。食べられない事は無いけど、他の方が良いなぁ。」

そう言って彼は、私をチラチラ伺う様に見る。苦い野菜が嫌いなのか。お子ちゃまだな。


ちょっと意地悪したくなって、試しに私がピーマンに手を伸ばすと、目を見開いて、この世の終わりかのような顔する。更にゴーヤにも手を伸ばそうとしたら、泣きそうな顔になった。


どうしよう…可愛い。思わず顔がにやけてしまう。弱みを握った事が嬉しくて、しばらくそんな風に、彼がどういう反応をするのかで遊んでしまった。私って性格悪いかも。

「なんか…、遊んでない?」

「…まさか。」

ちょっと調子に乗り過ぎただろうか。

私がブロッコリーを手に取った時、彼はほっとした顔した。これは大丈夫みたいだな。付け合わせの野菜は茹でたものにしよう。生野菜苦手だって言ってたし。

どうせなら、人参のグラッセも作ろうと人参もカゴに入れた。付け合わせの野菜だけだと、野菜少ないよね。角切りにした野菜スープも作ろうかな。私は、自分に彼に野菜を食べさせようという、使命感が湧いてくるのを感じていた。


「料理の最終目標ができましたね。ゴーヤとピーマンを司さんに食べてもらうことに決まりました。」

「そんな大げさな。」

彼はそう言ったけれど、私はニヤリと笑う。

彼はえ?本気?と驚いたような顔する。

「私、頑張りますから。」

「…そんなに頑張らなくても、良いんじゃないかな〜?」

司さんは、控えめに主張する。

「いつか食べてもらえる日が来るのが楽しみですね。」

覚悟しておいてもらおう。

「…ソウデスネ。」

彼は遠い目をした。

「あれ?でもコーヒーは普通に飲んでますよね?苦いのに。」

「コーヒーと野菜は違うじゃないか。」

逆に不思議そうな顔をされてしまう。

「一緒じゃないですか?」

「苦味の種類が全然違うんだ!」

そう彼は力説する。苦さに種類なんてあるんだろうか…。彼は青臭さと苦味について、持論を展開していて、私は一応耳を傾けた。う〜ん、やっぱり分からない。私は野菜は何でも好きだから。

理解は出来なかったけれど、突っ込むのはやめておいた。あまりいじめると可哀想だから。


一通り材料を揃えて、レジに向かう途中、私はお酒コーナーに目線を移した。

「お酒買いましょうか?」

昨日たくさん飲んだので、もうあまり残っていない。ビールとワインと酎ハイと…、頭の中でリストを作る。

「買うのは良いけど、今日は、結衣はあんまり飲んじゃダメ。」

「え!どうしてですか?」

せっかくの休みなのに!

「寝るから。している最中に、うとうとされるとさすがにヘコむ。」

昨夜の記憶が甦る。

「…昨日はちょこっと、飲み過ぎたかも知れません。」

「ちょこっと?」

「…ごめんなさい。結構飲みました。」

う、彼は根に持っていたみたいだ。だって、次の日休みだと思ったらつい…。あ、マズイ。いつのまにか、形成逆転されてしまった。

「結衣は一杯だけね。」

「そんな殺生な!せめて二杯は…。寝ませんから!」

「仕方ないから、二杯は許してあげよう。」

彼はニヤリと笑って、私を見詰める。う〜、さっきの仕返しかなぁ。

「寝ないんだよね?」

「…はい。」

「まぁ、寝かせないけどね。」

にこにこ笑いながら、彼はワインのボトルを手に取る。

「…お手柔らかにお願いします。」


私は彼に、意地悪し過ぎたみたいだ。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ