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僕達の日常  作者: さきち
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ひらひらゆらゆらふわふわ

私には今悩んでいることがある。なかなかしてくれないと莉子に愚痴る。そんなに魅力が無いだろうか?キスやハグはしてくれるのになぁ。胸は平均的な大きさだ。大きくも小さくも無い。もしかして、黒川さんは大きい方が好きなのか?

私達はいつもの様に、お弁当を食べている所だ。いつ見ても莉子のお弁当は美味しそう。色鮮やかで綺麗だし。でも見た目だけじゃなくて、私は本当に美味しい事を知っている。

見た目も中身も兼ね備えている所が、莉子の様だと思ってしまう。私はどうだろうか…。う、自信がなくなってきた。


「植物の実が何故赤色や黄色をしているか、わかる?」

莉子先生の講義が始まった。

「…美味しそうだから?」

私は真面目に答える。

「そうよ。鳥に食べて貰うために美味しそうな色をしているの。人間だって同じだと思わない?食べてもらう為には努力が必要なのよ。」

「見た目に気を使えって事?」

「そんな事は当たり前。人間は鳥じゃないんだから、それだけじゃダメなのよ。」

「他にどんな努力をしろと?」

「誘うのよ。」

「誘うって言葉で?」

私の疑問に、莉子は呆れた顔をする。

「そんな事しないわ。ひらひらゆらゆらふわふわよ!」

「何それ?」

「結衣は見た目が良いから努力しなさ過ぎ!デートの常識でしょ?」

努力不足なのは認めざるを得ない。

「うう、言い返せない。一から教えてください、莉子先生。」

「しょうがないわね。狩猟本能をくすぐるのよ。」

「狩猟本能?」

「そう、男の人ってゆらゆら揺れるものとかに弱いのよ。捕まえたくなるんだって。」

「へぇ。そうなんだ。」

「身に付ける物にゆらゆら揺れるものを取り入れるの。そうね、例えばネックレスとか、ピアスとか。」

「ひらひらも同じ理由ね。スカートの裾がひらひら揺れると、目で追っちゃうのよ。」

「ほう!ふわふわは?」

「触りたくなる様な素材の服を着るとかね。」

「成る程。勉強になります。」

「その歳まで女やってて、知らないのもどうかと思うわ。」

また呆れられた。女子力低くてすみません。


「あんまり揺れるタイプのピアス持ってないなぁ。」

仕事中邪魔になるから、揺れないタイプの物ばかりだ。

「買いに行く?」

莉子が聞いてきた。

「付き合ってくれるの?」

「良いよ。私も買い物したいし。」

「ありがと、莉子。大好き!」

私は莉子に抱きついた。うん、柔らかい。私とは胸の大きさが全然違う。

「ハイハイ、じゃあ仕事早く終わらせてね。」

「了解です!」

午後からの仕事を最短で終わらせようと心に決めた。

「思ったんだけど、黒川さんって結構慎重なタイプなんだね。」

「そう…だよねぇ。」

「それでもダメなら自分で言ったら?」

「…そんな事言えない。」

恥ずかしすぎる。って言うか、負けたみたいでヤダ。

「…負けず嫌いだよねぇ、結衣は。」

苦笑いして、莉子は私を見詰めた。いつもの事だけど、心を読まれてるみたいだ。

「だって、負けたくないもん。」

私ばっかり好きみたいじゃないか。私は実感したいんだと思う。彼から愛されている事を。不安に感じる余地もない程に感じていたいんだ。自分は何て我儘なんだろう。そうは思うけれど、やっぱり譲れない。


仕事を定時で終わらせて、二人で買い物に行く。ピアスは色々な所で売っている。服屋でも売っているし、雑貨屋などでも売っているのだ。何軒か回って良さそうな物を見つけた。

「コレとかどう?」

気に入ったピアスを莉子に見せる。シンプルだけど、控えめにゆらゆら揺れるのが気に入った。シルバーの繊細なデザインで、バーの先にキュービックが付いていて可愛い。

「いいんじゃない?似合う。」

同性の意見は貴重なのだ。

「ふふ。コレにする。」

今度のデートに着けて行こう。ひらひらしたスカートも着ないとね。どうか効果があります様に。

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