可愛い生き物
なんて可愛い生き物だろうか。チョコチョコ動く感じが栗鼠みたいだ。会社で見る印象と全然違う。素がでているのかもしれない。
スウェットを着た格好を指摘したら、顔を真っ赤にしていた。下着姿を見た事は黙っていた方が良さそうだ。
朝食は何を作ろうかな?元気そうだったから食べるかもしれない。
キッチンに行くと、昨日のチョコレート達が入った袋を見つけた。そういえば置いておいたんだったっけ。
なんとなく気になって、彼女からのチョコの箱を開けると、5つチョコが入っていた。真ん中にある赤いハートのチョコを見て笑ってしまう。彼女の気持ちを知った今では、ただただ可愛いと思った。丁寧に箱を閉めて、冷蔵庫に仕舞う。後で食べようと思いながら。
彼女がお風呂から戻ってきた様だ。スッピンもあんまり変わらないなぁ。少しあどけなさがあり少女の様だ。
「あの、ドライヤー何処ですか?」
濡れた髪を気にしながら、恥ずかしそうに聞いてくる。
「あぁ、こっち。」
洗面台まで一緒に行って、棚の中から取り出す。
「メイク落としとか洗顔フォームとか、ありがとうございます。歯ブラシも。」
「どういたしまして。」
「コレどうしましょう?」
コンビニの袋を示して聞いてきた。
「持って帰っても、置いて帰ってもどっちでも。また来ることがあるかもしれないし。」
また、彼女は赤い顔をする。笑いそうになるのを我慢する。反応が面白くて癖になりそう。
「…置いて帰ります。」
目を伏せながら、小さな声で言った。
彼女の身支度が整った様だ。化粧をしているの見て、少し残念に思う。そのままでも可愛いのに。
冷蔵庫から、ペットボトルの水と二日酔い用ドリンクを取り出す。
「水飲む?ドリンクもあるよ。」
彼女はありがとうございますと言って受け取る。ドリンクをじっと見て、ふっと笑うと僕を見つめた。
「黒川さんは変わらないですね。」
そう言ってドリンクを飲む。
「やっぱり不味いですね。」
そう言って笑った姿を見て、僕は五月のある日の事を思い出した。
なんか色々腑に落ちた。
「昨日は結構呑んでいたの?」
僕は端の椅子に座る。斜め向かいに彼女が座った。
「はい。自分の不甲斐なさに嫌気がさしたと言うか、自棄酒です。莉子に色々愚痴ってしまいました。」
ペットボトルの水を見つめながら彼女は自嘲する。
「それって、僕も関係してる?」
「…はい。というか、ほぼ黒川さんの事なので。」
多分覚えていないと思うんですけどと前置きして彼女は僕達の出会いを話し出した。