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僕達の日常  作者: さきち
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マンション2

シャワーの音が聞こえる。段々頭が覚醒してくる。はっきり目を覚ますと知らない部屋で焦った。知らない男物のスウェットを着ている。必死になって昨日のことを思い返す。莉子といた筈だ。ならこの状態は何なのか。下着を着ているからセーフだよね?流石にしてしまっていたら分かる。

服とコートはハンガーに掛かっている。ブラウスは畳んで置いてあった。腕時計やピアスなども揃えてベッド脇のテーブルに置いてある。ブラウスの畳み方からすると、私がやったのだろうか。


あ。黒川さん。

昨日同じタクシーに乗って帰った筈だ。そこで記憶が途切れていた。

と言うことはここは黒川さんの家か。見覚えのある鞄とコートを確認して確信する。迷惑をかけてしまった。莉子はいつも私を送ってくれるのに、昨日は何故か黒川さんに送るように言っていた。もしかして、謀られた?

ちゃんと言えということか。友人の厳しさに苦笑いが漏れる。取り敢えずお礼を言わなければ。黒川さんを探す事にした。


ベッドのすぐ下にスリッパが置いてあったので、それを履いた。部屋のドアをそっと開けて辺りの様子を窺う。広い家だなぁ、一人暮らしには十分すぎる広さだ。パタッパタッと歩く度にスリッパの音が響く。

リビングらしき部屋があった。テレビはあるが、真ん中にラグが敷いてあるだけで何も無い。殺風景と言うよりは、物が少ないのかも知れない。ダイニングの方には一枚板の木の立派なテーブルが置いてあった。8人くらいは座れそう。椅子もお洒落だ。なんだかリビングとダイニングではチグハグな印象を受ける。

ダイニングテーブルの上に、無造作にコンビニの袋が置いてあった。なんか、部屋に合わない。

姿が見えない事に不安を覚えた。そもそも勝手に家の中を動き回って良かったのだろうか。


そんな事を考えていたからだろうか。近づいてくる人影に気付かなかった。

「起きた?」

背後から掛けられた声にビクッとなる。心臓がドキドキしている。

「ビックリした。お、おはようございます。」

「おはよう。」

彼はタオルで髪を拭きつつ、挨拶を返してくれた。風呂上がりらしい。そういえばシャワーの音がしていた様な。

「あ、眼鏡。」

「ああ。コンタクトしてないからね。」

そう言いながら、こっちをじっと見ている。

「良い眺めだからずっと観ておきたいけど、お風呂入ってきたら?」

そう言ってコンビニの袋を渡してきた。良い眺め?

自分の格好を確認してみると、スウェットの上を着ているだけ。太ももの半ばまでしか隠れていない。

「ひあっ。すみません!」

思わず顔が赤くなる。

「お風呂そっちね。」

彼が指差す方に急いで駆け込んだ。自分の迂闊さを呪う。大失敗だ。


お風呂に駆け込んだのは良いものの、着替えを持ってくるのを忘れてまた部屋に戻る。

もう一度お風呂場に戻る私を、彼は面白そうに眺めていた。

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