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僕達の日常  作者: さきち
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ラーメン

店の外は寒い。キンと冷えた空気が頬を刺す。電線の隙間から夜の空が見えた。

忘年会が終わり、二次会へと繰り出す者と、帰る者に分かれる。彼女は友達の同僚に挨拶している。名前は確か、赤城さんだったかな?

こっちを見てニヤニヤしている。何か誤解しているんじゃないだろうか?

「ではラーメン食べに行きますか。」

「おー!」

彼女は片手をグーにして返事をくれた。

結構茶目っ気があるタイプみたいだ。第一印象は大人しそうと思っていたけれど、この数時間で面白い子に変わった。表情も豊かで、笑顔が可愛い。成る程、顔だけじゃなくこの親しみ易さだったら、男はほっておかないだろう。

罪作りだなぁ。チラリと横目で見ると、上機嫌で鼻歌を歌っている。


お酒が入っているからか、外の気温が低いからなのか、頬はピンクに染まっていて、眼は潤んでいた。紅い唇から、白い息が溢れる。

なんとも言えない気分になり、目を逸らして前を向く。

捕らわれそうな気持ちに蓋をして、話しかけた。

「ラーメン好きなの?」

「好きです。でも一人じゃ行きにくくて。」

「確かに、女の子一人じゃ行きにくいか。好みのラーメン言ってみて、適当に見繕うから。」

「黒川さんの行きたいとこで良いですよ。背脂いっぱいのコテコテのでも大丈夫ですから。」

「じゃあ、豚骨ラーメンにするか。」

そう言えば、この辺に博多ラーメンの美味しい店があったはず。僕達は並んで歩き出した。


白いスープの中に細くて真っ直ぐの麺が漂っている。麺の上には、紅生姜とキクラゲと煮卵があって、葱ともやしも乗っている。高菜がカウンターに置いてあるので、更にトングで掴んで乗せた。

「いただきます。」

手を合わせて言うと、隣でも同じようにいただきますが聞こえた。

「すりごまかけると美味しいよ。」

彼女の方に容器を手渡す。早速すすっていたらしく、モゴモゴしながらありがとうございまふと聞こえた。おかしくて笑ってしまった。

「慌てなくても盗らないよ?」

「なんか、馬鹿にしてませんか?」

むすっとした顔で言うのが可笑しくて、また笑ってしまった。

「してない。可愛いとは思ってるけど。」

「そう言うこと言うと、誤解されますよ。」

呆れた顔で言うものだから、口が滑った。

「してくれても良いよ。」

「思ってないですよね。」

バッサリ切られてしまった。うーん。やっぱり僕は恋愛対象じゃ無いみたいだ。

「可愛いラーメン仲間が出来て、嬉しいとは思ってるよ。」

「じゃあまた、誘ってくださいね。ラーメン仲間ですしね。」

「いつでもどうぞ。」

美味しそうにラーメンを食べる彼女を見ていて、そんな関係も面白いと思った。


帰りの電車の中で電話番号を聞かれて、メッセージアプリ友達になったのは単純に嬉しかった。どうやって連絡を取るつもりだったのかと聞かれて、忘れてただけだと言ったら更に呆れた顔をされた。

ちゃんと次誘って下さいねと念を押される。彼女の最寄駅は、僕のより三駅手前なので電車の中で別れた。

ご馳走さまでした、と言って笑ってくれた顔を見たら、誘わないわけにはいかないな。次はいつ誘おうかと考えながら車窓を眺めた。

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