マンション1
タクシーから降りてエントランスに向かう。ロックを解除しつつ彼女を落とさない様に気をつけた。小柄なので横抱きにしているが、バッグや荷物もあるから結構辛い。エレベーターで8階へ行く。
自分の部屋に着いてドアを開けて中に入る。靴を脱ぎ、彼女の靴も脱がせる。取り敢えず彼女を寝室のベッドに寝かせた。コートは後で脱がせれば良いだろう。エアコンのスイッチをオンにした。ほっと一息つきたい所だが、客間の和室に布団を敷かなくては。
叔父さんは友人が多かった為、客用布団もある。布団を敷いて彼女を移動させる為、寝室へと向かった。
ガチャリと部屋のドアを開けると飛び込んできた光景に驚く。寝ていると思っていたのに下着姿でいるので、慌てた。不可抗力だと言いたい。
「…寒い。」
いやいや、脱ぐからだろう。どこかぼんやりしている彼女に、慌ててスウェットの上下を用意する。黙って上だけを着ると納得したらしく、またベッドに潜り込んで寝息を立てて寝てしまった。寝惚けてる?
コートと服がきちんと畳まれている。僕はシワにならない様に彼女のコートと服をハンガーに掛けた。布団は僕が使うことにした。
「下着は黒か。意外だな。」
見てしまった事は取り消せないので、感想を呟く。
今日はどっと疲れてしまったので、風呂は明日の朝にしよう。コンタクトを取り、着替えて布団に潜り込んだ。
朝、目を覚ますと見慣れない天井だった。そう言えば、和室で寝たんだったか。風呂に入ろうと思い、眼鏡をかけて浴室に行く。栓をしてボタンを押した。
彼女はまだ起きてないみたいだ。お湯をはっている間にコンビニに向かう。結構呑んだと聞いていたので、二日酔い用のドリンクを買った。歯ブラシもいるな。後は水で良いだろうか。適当に買い込んで部屋に戻る。
戻っても静かだったので、まだ起きていないのだろう。着替えを持って風呂場に行く。
身体と髪を洗い、湯船に浸かるとふぅと息を吐いた。さて、どう説明しようか。まぁそれはなんとかなるか。
それよりも考えないといけないのは、自分がどうしたいかだろう。答えは決まっている。ちゃんと話さないと前へと進めない。正直言うともう少し猶予が欲しかった。心の準備というものが。
それにしても彼女の行動が不可解だ。何故僕なのか?話したのだってそれ程多くない。たくさん喋ったのは忘年会が初めての筈。何処かで会った事があるならともかく。
会ったことはないよなぁ?でも初めて見た時見覚えのある気がしたんだよね。うーん。考えても仕方ないか。