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僕達の日常  作者: さきち
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バル

落ち込む私に莉子は一緒に呑みに行こうと誘ってくれた。世界中のビールが呑めるバルに来ている。莉子はビール好きなのだ。ソーセージの盛り合わせや、オニオンフライ、フィッシュ&チップスを注文する。すぐにビールが運ばれて来た。

有名なドイツのビールは色が濃くて、泡が細かい。莉子はゴクリと一口飲んで、あぁ美味しと言う。唇についた泡をペロリと舐めとる様は、色気がある。私に莉子の半分でも色気があれば良いのに。


何故落ち込んでるかと言うと、本命チョコを義理チョコと間違われたからだ。一緒にチョコレートを買いに行って、メッセージカードの助言もくれた莉子もがっかりの結果らしい。


「でもさぁ。あれは無いわ。分かんないわよ。」

何がと言うとメッセージの文章の事だ。アレは義理チョコの定型文だと言われて落ち込んだ。

「自分にがっかりしてるのは本人です。」

何故もう少し、勇気が出なかったのか。あれでも精一杯だったのだ、自分にとっては。

「馬鹿ねぇ。折角のチャンスだったのに。」

「…そうだね。」

本当に自分が情けない。

「で?彼が持ってたチョコを見て焦ってると。」

「おっしゃる通りでございます。」

彼の持っていたチョコのいくつかは、とても義理とは思えない物だった。チラリと見ただけだが、勘違いされたくない相手に、ハートのパッケージの物は選ばない。本人が気付いているかどうかは別として。

「言っとくけど、結構人気あるんだから。背も高いし、仕事も出来るし。」

そんな事は分かってる。彼の良いところはそんな所にあるのではない。もっと別の所だ。

飄々とした態度なのに、人の感情に敏感なのだ。彼は優しい。感情を読み取って手を差し伸べる。ただ、みんなに優しいから人気がある。なので、競争率が高い。ただ、恋愛感情には鈍感みたいだが。


きっと、青木さんが懐いているのも、そういうところに由来するのだろう。青木さんと言えば、あの二人仲が良過ぎないだろうか?

「あの二人仲良いよね。」

羨ましい。もの凄く羨ましい。

「ああ、青木君?何?青木君に嫉妬してるの?」

莉子が呆れたように言う。

「いっつも一緒だもん。今日だって、二人で呑みに行ったんだよ?」

「青木君はあなたに夢中みたいだけど?」

「フリだったりして。」

「実はつき合ってるとか言わないでよね?二人ともノーマルに見えるわよ?」

「じゃあ何で二人共フリーなんだろう?」

考えると変に思えてくる。青木さんはイケメンだし、黒川さんも人気があるのだ。

「ちょっと悪酔いしてるんじゃないの?考えが変な方向に向いてるわよ?」

「まぁ、そんな訳ないか。」

ちょっと考えてしまっただけだ。嫉妬もプラスされている。

花の様に揚げられたオニオンフライをナイフで切り分けて、ケチャップを付けてパクリと食べた。飲んでばっかりで食べていない事に気付き、次々と口にする。お腹が減っていると、変な考えに沈む。食べよう。


「もう、諦める?」

莉子が聞いてくる。

「それは嫌。」

今の時点でその選択肢はない。

「頑張るんでしょ?」

「うん。」

愚痴るだけ愚痴ったら、前を向こう。次の手を考えないと。

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