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僕達の日常  作者: さきち
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結衣の想い人(番外編)

 結衣が会社に来てから、数日経った九月初頭のある日。他の部署にも噂が広まった様で、チラチラこちらを覗いている男性がいるのに気付く。中にはあからさまに結衣に話しかけてくる人もいるぐらいだ。

 そんな様子を横目で見ながら、さすがだなぁと、他人事の様に呟いていたら、君が来た当初もこんな感じだったよ?と呉さんが苦笑いしていた。…そうだったっけ?

 今も見覚えのあるイケメン社員に話しかけられている結衣の様子を、昼休憩もうすぐ終わるなぁなんて考えながら、何とはなしに見つめていた。


 結衣はクリルとこちらを振り返ると、キラキラした瞳で、私に突進して来た。思わずその迫力に後ずさる。

「莉子!莉子!どうしよう!」

 一大事とばかりに、私に話しかける結衣。何が起こったのか分からない。

「何?どうしたの?」

「見つけた!あの人!いつかの、電車で会った人!」

 遠くに見えてる男性二人の後ろ姿を指差しながら、結衣は熱のこもった声で説明する。

「え?さっきの?」

「そう!ねぇ、名前、分かる!?」

 確か、愁と一緒にいるのを見かけた事がある…。

「営業の人だと思うよ?」

「営業なんだ…。」

「でもさっき、名前名乗ってたでしょう?青木って。」

 イケメンで有名なので、私でも知っているくらいだ。

「違うの!その人じゃなくって、後で来た人!背の高い…。」

 女子同士の会話で、話題に上がる事もあった様な…確か…。

「黒川さんじゃなかったかな?」

「…黒川さん?黒川さん!」

 電車の彼は黒川さんだったらしい。不思議な縁だな。熱のこもった瞳で、ぼんやりと彼の去った方向を見つめながら、結衣はポツリと呟いた。

「出会えた…。ねぇ、莉子、縁あったんだと思う?」

「そうだね。」

 今日は作戦会議だ!と結衣が言うので、やれやれと付き合う事を了承して、休憩が終わったので仕事に戻ったのだった。




「って、事があって。なのに結衣ったら、一ヶ月以上話しかける事すらしないの。グズグズしてたら、もうその内年末になっちゃいそうよ?ただ、用事がなければ話し掛けられないのは、理解できるんだけどね。」

 残暑の厳しかった九月が終わり、今はもう長袖の季節になっている。涼しくなっても、相変わらずビールは美味しいので、愁と二人で飲んでいるところだ。ビール好きは、寒かろうと暑かろうと、一年中飲むんだけどね。

「じゃあ、俺が紹介しようか?」

 黒川さんは、愁の後輩にあたるので、気安く彼が言う。

「それが…頑なに拒否するの。自分で出来るから大丈夫だとか、機会を伺ってるって言い張って。意地っ張りと言うか、負けず嫌いと言うか…。」

 思わず、ため息が漏れた。

「見た印象とは違うよね、白石さん。」

 そうなのだ、大人しそうな見た目のくせに、負けず嫌いで意地っ張りなところがある。そのくせ、意外と怖がりだったりするので、難儀な性格だと思う。

「見かねたら、お願いするかも?」

「いつでもどうぞ。」


 愁との付き合いは順調で、小さな喧嘩はありつつも、上手くいっていると思う。一緒にいて、心地良いし、こんなに楽な関係は初めてかも知れない。ちゃんと私の事を好きでいてくれているのを、実感できているし、丁度良い依存関係を構築で出来ている気がする。

 もちろん、愁がどう思っているかは、分からないのだけれど…。

「…良かった。黒川の様子を、莉子がよく聞いてくるから、心配だったんだ。」

 フゥッと息を吐き出して、彼は私を上目遣いに見る。

「そうなの?」

 初耳。

「黒川さんって彼女いるの?とか言うから、そりゃ心配にもなるよ。結衣ちゃんの方ね、納得。そして安心。」

 大袈裟な動作で頷きながら、身長は今さら伸ばせないからどうしようかと悩んでたなんて言われると、笑えてくる。

「マリンさんが言ってた心配させる手口が、図らずも出来てたって事かな?」

「ヤキモキしましたとも!」

「それは重畳!」

 私の言葉に、愁はギョッとした顔をする。

「え、もうやめて?」

 心臓がもたないと彼は笑う。う〜ん、残念な様な、嬉しい様な…。


「あ、そうそう、マリンちゃんが引っ越す先のマンションで、引越し祝いのパーティーやるから来てだって。」

「行く!行きたい!」

 倉田さんが写真家だと知って彼の写真集を買ったら、凄く素敵でハマってしまった。マリンさんもセンスが良いので、二人の愛の巣どんな感じなのか気になる。

「お祝い、何にしようかな?」

 考えなくては…。センスが良い人のプレゼント選びは難しい。

「愁は?何にするの?」

「観葉植物が欲しいって言ってたから、それにしようと思ってる。って言うか、もうこの店のここで、この植物を買えとか指令が来てんだけど…。予約しといたからって。」

 欲しいものリストを作って、予め言っておくなんて…。

「…超合理的だね。」

「…マリンちゃんだからね。」

 他の人にも、そんな感じだと思うよ?と愁は苦笑いした。二人でそれを買ってくれたら良いって言ってたから、一緒に買おうと言う彼と、顔を見合わせて笑い合う。

 それだけだと味気ないので、少し考えても良いかもしれない。やっぱり相手の喜ぶ顔を想像しながらの買い物は、悩ましくも楽しいものなのだ。


 愛の巣に行くの、楽しみだなぁ。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

 次回か、その次が最終話の予定です。ざっくりですみません、検討中です…。

 次週はお休みさせて頂きます。…読みたい本が溜まってきてまして。

 ではまた☆あなたの貴重な時間を使って頂いて、ありがとうございます!あなたが楽しんでくれています様に♪

 

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