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僕達の日常  作者: さきち
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お店(番外編)

 初めてのデートは上手くいったと思う。会社帰りに二人でビールの飲めるバーに行き、話も弾んだし感触も悪くなかった。取り敢えずマリンちゃんの助言を参考に、自分の事を話すよりも彼女の嗜好や興味を探るのに努めたお陰で、次のデートの約束を取り付けたのだ。別に恋愛が初めてな訳ではないけれど、歳を重ねるにつれて慎重になってしまうのは、その先を考えてしまうから。今幸せならそれで良いなんて、昔は考えていたのに…。

 デートは次の日曜日、その前にもう一度マリンちゃんに話を聞いてもらいたかった。助言と言うより、精神安定剤みたいな意味合いで。


 そう言えば、同僚を連れて来いと言われてたんだっけ?…だけど連れて行くにしても、人を選ぶな…。こういう生業の女性を、低く見ないでいてくれる同僚は…。

 取引先を回って帰ってきた営業部のオフィスを眺めてたら、たまたま青木と目が合う。お疲れ様ですと笑顔で言う彼に、また誘ってくださいと言われた事を思い出した。黒川もお疲れ様ですと、作業中のパソコンから目線を上げて俺に挨拶してくれる。

 …合コンは、外したんだよなぁ…。何故なら赤城さんと接点を持たせたくなかったから。二人とも良い奴だから、万が一にも赤城さんが彼らを気にいったら困る。それだけ俺の中では、認めていると言う訳で…。多少の罪悪感を拭い去る為にも、ここらで奢っておこうと決めた。金曜日の今日なら、誘えるかな?

「青木、黒川、今日の晩用事ある?」

「いえ、空いてますよ。」

 青木は答えた。

「僕も用事はないです。」

 黒川もそう言うと、言葉の続きを待つ様に俺を見た。

「飲みに行かない?オネェ様方が居る店なんだけど…。」

「行きます!」

 すちゃっと手を挙げて、青木は即答した。

「オネェ様ですか。」

「そう、オネェ様。ショーもあって、見応えもあるよ。」

「僕、初めてかも。」

 黒川は興味がありそうで、表情は変わらないものの、瞳がキラキラしている。お、好感触。意外と誘われないと、行きにくいもんだからな。

「じゃあ、今日仕事早く終わらせろよ。」

「はぁーい!」

 と青木は元気良く良い、黒川は了解ですとふっと笑った。



 お店に入って、出迎えられた俺たちは、ソファー席に案内された。小さな舞台が良く見える特等席だ。青木の口数が少ない…。

「…お姉様って言いましたよね?」

 青木がジト目で俺を見る。

「言ったよ。オネェ、様って。」

「え!勘違いした僕が悪いんですか!?」

「ガールズバーとかキャバクラなら、女の子のいる店って言うし。黒川はちゃんと理解してたけど?」

「ええ!そうなんですか!?」

 驚いた様に黒川を見詰める青木。見詰められた黒川は、涼しい顔をしている。

「嫌なら帰っても良いよ?」

 俺はそう言ったんだけど。

「嫌じゃないんですけど…騙された感が…。」

 青木はまだブツブツ言っている。だけど、奢りだからまぁいっか、と納得してビールを飲み始めた。

 人選を失敗したかと思ったものの、目の前に現れた美女に、青木は態度を急変させた。瞳をキラキラさせて、魅入っている。切り替えは早さはピカイチだな。

 二人は初めてだから、マリンちゃんが気を利かせてくれたのか、あまりアクの強くない子達を選んでくれた様だ。

「胡蝶です。」

「蘭です。」

 名前も古風だな。胡蝶ちゃんは最近入ったばかりで、初々しい。容姿も女の子っぽい。彼女は青木の隣に腰掛けた。蘭ちゃんはキャリアもそこそこで、話が上手い。黒川の隣に行くかと思ったら、俺の隣に腰掛けた。遅れてやって来たマリンちゃんが、黒川の隣に座る。おや?と思ったもののその時は気に留めなかった。

 マリンちゃんが少し席を外した時、蘭ちゃんが倉田さんがまた旅立ったことを教えてくれる。しばらくはゆっくりすると言っていたのに、忙しいんだな…。日本には二週間ほどしかいなかったらしい。倉田さんらしいっちゃ、らしいけど。

 蘭さんがショーの時間だと席を外した。胡蝶ちゃんは舞台に立てないので、ショーが始まるまでの間、占いをしてくれると言う。話すのがまだ苦手な彼女は、お客さんとコミュニケーションを取るために使っているのだと、はにかみながら話してくれた。

「青木さんは、来年運命の人が現れると出てますよ。」

「…僕の運命の人は、あなたではないでしょうか?」

 彼女の手を握って、見詰める青木。

「あ、あの、えっと…。」

 胡蝶ちゃんは困り顔なので、俺が青木を小突いておいた。お触りはやめとけ!


 ショーが始まり、音楽と共に歓声が上がる。黒川も楽しんでいる様で、マリンちゃんと話が弾んでいる様だ。それを横目に見ながら、楽しんでくれて良かったと思う。



 帰り際、満足げな青木は上機嫌だ。

「僕、自分の中に新たな可能性を感じました!」

「ああ、うん。恋愛は自由だと思うよ。」

 他人の恋愛に興味ないし。ただ、胡蝶ちゃんは彼氏いたんじゃなかったけ?…言わなくて良いよね?

「黒川さんまた来てね!」

 マリンちゃんが手を振ると、黒川もぜひと返していた。…黒川気に入られてる。マリンちゃん浮気かな?

 そして黒川の後ろ姿を見て、俺は気付いてしまった。雰囲気や背格好が、倉田さんに似ている事に。背の高さといい、飄々とした雰囲気といい。

 ああ、そうか。マリンちゃん、寂しいんだ…。当たり前かぁ、しばらくはゆっくりするって言ってたのに、すぐまた海外に行っちゃったんだから。


 三人でネオンの灯の中を泳ぐ様に歩く。

 倉田さん、マリンちゃんに愛されてるんだなぁ…なんて感慨深く思ってしまった。だけど、黒川はもう連れてこない方が良いかもね…。意外とモテるのを忘れてた。

 いつもお読みいただきありがとうございます。

 新キャラのマリンちゃん達は、気に入っていただけてるでしょうか?以前タイに行った時、オネェ様に、女は女である事にあぐらをかいて努力しないから駄目だ!と厳しいお言葉をもらったことがあります。我ながら耳が痛かったのを思いだしました。

 最近、世間の状況に心を整えることが出来ずにいます。心の状況は体にも反映されるため、筆が進まず書けない日が続いておりまして…。

 気持ちを前向きに持っていこうと、色々試したりはしているのですが、ニュースを見る度にずどーんと気分が落ちこみます。影響を受けやすい性質なのを自覚して、情報は最低限にしていても、こんな体たらくで情けなくなりますね。

 こんな時だからこそ、楽しんでもらいたいのですが、来週は投稿出来るか未定です。出来るだけ頑張りますけどね。

 普段していないゲームや、マスク作りでの裁縫して気持ちを整えつつ、書き書きします!『サスカッチ』と『旅かえる』にハマっています。人生初めて課金しちゃうくらい(笑)。小さな楽しみを見つけて、乗り越えたいと思います!

ではまた!あなたも無理せずボチボチと☆

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