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僕達の日常  作者: さきち
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お正月と挨拶

 昨日の元日は、実家でお祝いだからと、しこたまお酒を飲まされてしまった司さんは、夕方に自宅に帰ってから、ずっと眠り続けていた。電車の中でも普通だったのに、自宅に帰り、着替えると糸が切れたようにベットに入って寝てしまう。お酒は強い人なのに、こんな姿は初めて見る。明美さんにメッセージを送ったら、あの位なら大丈夫だと、心配するだけ損だと返信が来た。

 それでも心配したけれど、寝癖のついた髪を気にしながら、朝にはおはようと言ってケロリと起きてきたので、お馴染みのまずいドリンクを飲ませてあげた。

「…不味い。ありがとう。」

 隣に寝てても、心配でちゃんと息してるか何度も確かめてしまったぐらいだ。おかげでこっちが寝不足になってしまった。心配するだけ損だと言うのは、本当だなぁなんて考える。


 黒川家の皆様はお酒が強いらしい。青木さんは途中でついていけなくなり、眠りこけてしまった昨日の出来事を思い出すと笑えてくる。ご両親にちゃんと結婚の報告をしたのだけれど、あまり驚かれなかった。

 そうなると思っていたと、黒川家の皆様から口々に言われるのが不思議で、思わず司さんを見詰める。何故なら、司の態度が、前とは違っていたからだと口を揃えて言われた。司さんはいつものポーカーフェイスを崩さなかったけれど、恥ずかしそうに視線を背けている。そして、否定もしない。私だから選んでくれたのだと思えば、それが凄く嬉しくて仕方なかった。




 身支度を整えて私の実家に帰ると、母や父に出迎えられた。年末の大掃除を終えてから自宅に帰ったので、一日ぶりだけれど。

 弟の優は彼女を連れて、昨夜から帰って来ているらしい。母の予想通り、婚約の報告だったそうで、めでたいと思う。早速、優の婚約者の美樹さんと挨拶を交わした。笑顔が可愛い感じの良い子で、父さんの機嫌が良いのは、気のせいではないだろう。

 両親に挨拶する時に、実は…と司さんが婚約の事実を告げた。お母さんは大袈裟に驚き、お父さんも目を丸くしていた。弟の報告と重なったから余計に驚いたのかも知れない。もちろん結婚のお許しも貰えたので、司さんはほっとした様だ。


 みんなで、テーブルの上のおせちやお刺身などを囲みながらの食事は賑やかだった。普段は二人だけの食卓だから賑やかなのが嬉しいと、母が張り切って美樹さんや司さんの世話を焼いている。

 去年のお正月に結衣に写真を見せてもらってから、ずっと食べたかったと、白味噌のお雑煮を見て嬉しそうに笑う彼に、母はお椀を差し出す。母は終始ご機嫌だ。

「いっぱい食べてねぇ、まだいっぱいあるから。」

「ありがとうがざいます。」

「いっぱい食べたら、他のものが食べられなくなっちゃうじゃない。」

 おせちだってあるのだから。

「アンタは、水指すような事ばっかり言うなぁ。」

 何で突っかかるん?と呆れた顔で母は私を見る。

「事実を指摘してるだけ。」

 別に、私が司さんのみかん好きを知らなかった事なんて、気にしていないんだから…。…本当だよ?

「…は、はぁ〜ん。焼きもちか…。お母さんと司ちゃんが仲良いから。」

 コレだからお子ちゃまは…と母はせせら笑う。…ムカつく!

「はぁ?気にしてないし!って言うか、私の方が仲良いから!」

 何たって、婚約者なのだから!そんなやり取りをしていたら、司さんの肩が震えていた。どうやら笑いを堪えているらしい。ああ、こんな筈じゃなかったのに!家だとどうも子供っぽくなってしまうのだ。美樹さんにも笑われ、優と父は呆れ顔だ。まずい…姉としての威厳が…。

「こんなんでホンマに良いん?司ちゃん。」

「こんなんって何よ!」

 ああ、また!

「考え直すなら、今のうちやで?」

 なんちゅう事を言うのだ!母親のクセに!とギョッとしてしまう。

「大丈夫です。」

 と司さんは母と私を見て微笑んだ。うん、ほっとした。出来れば、やっぱやめるとかナシにして欲しい。テーブルの下で司さんは私の手を握る。急に大人しくなった私を訝しげに見ながらも、母は次は美樹さんを構いだす。そんな感じで食事は進んでいった。


 コーヒーを淹れに私は席を立つ。優も私の後に続いた。そしてキッチンで優は不思議そうに私に問う。

「何で、司さん、母さんにこんなに気に入られてんの?」

「私達姉弟よりも、熱心に話を聞いてくれるからじゃない?」

「…なるほど。」

「営業だから、心を掴むのが上手いのかもね。」

 ふと思いついて言ってみる。粉をスプーンで量りながら、フィルターにセットしてスイッチを入れた。

「姉さんの心も、それで掴まれたと…。」

「…さぁね。」

 コーヒーメーカーが、コポコポと立てる音に耳を傾ける。いい匂いがして来た。

「優こそ、どうなのよ?」

「美樹?それは僕の魅力で…。」

「…嘘。小鼻膨らんでるよ?」

 弟の嘘をつく時の癖だ。バレないとでも思っているのだろうか…。お姉ちゃんを甘く見過ぎだと思う。

「…地道にアプローチを続けた結果です。」

「始めから正直に言え。」

「僕の涙ぐましい努力を、見せてあげたいくらいだよ。」

 挨拶から始めて、デートに誘うまでにどれだけ頑張ったか力説される。

「あー、ハイハイ。」

「聞いといて、何?その態度!?」

 私は大掃除を手伝わなかった弟を許していないのだ。豚まんも買って来なかったし…。そう言うと、匂いが気になって美樹に遠慮したのだと言われて、尻に敷かれるの決定だなと密かに思う。

 私はコーヒーをカップに注ぎ、弟はソーサーにスプーンなどを乗せた。

「それよりさぁ、優の持って帰って来た手土産食べようよ。豚まんより美味しかったら許してあげる。」

「並ばないと買えないやつだから!コレ!絶対姉さん気に入ると思うよ?」

「ほほう、自らハードルを上げるとは…、期待出来そう。」

 箱から出したバームクーヘンを切り分けて皿に盛っていく。弟はその間にコーヒーをテーブルに運んでくれていた。フォークを添えて私も弟の後に続く。


 バームクーヘンを一口食べて、優に告げる。

「許す!」

 本当に美味しいよ、コレ!ふんわりとした食感と、甘さが絶妙だ。

「良かったぁ。」

 ホッとした顔をした優と私のやり取りを見ながら、何?何が?と不思議そうな司さんに、優が豚まんを買って来なかったから怒ってたと言うと、家族には呆れられ、司さんや美樹さんには笑われてしまった。美樹さんは今度は買って来ますと笑う。あ、良い子だ。それとも私が単純なのか?姉の威厳はもう気にしない、って言うかそんなものは初めから存在しない。

「あ、こっちも許してもらったよ。」

 司さんはニッコリ笑うし、美樹さんはニヤニヤしている。

「へ?何が?」

「一緒に住む事。」

「…一緒に住む?」

「結衣の部屋の家賃も勿体ないし、僕の家に来れば良いと思ってたんだ。」

「そうなんやって。司ちゃんはしっかりしてはるわぁ。結婚資金の足しにはなるやろ?」

 そりゃそうだけど。

「…いいの?」

 誰にともなく聞いてみる。司さんはもちろんと笑うし、お父さんとお母さんも笑っている。

 …司マジック!?どれだけ気に入られてるんだろう。両親が結婚前に一緒に住む事を許すとは思わなかった。順番にはうるさいんだけどなぁ…。


 司さん、実は凄い人かも知れない。

 あけましておめでとうございます☆いつもお読み頂きありがとうございます。

 先週最終話とお伝えしたのですが、結衣目線で書いてしまったので、次回を最終話とさせて頂きます。行き当たりばったりで書いているもので、すみません!

 今年の目標は書き散らかした小説の整理でしょうか…。早く完結させて、新しい話を書きたいですね。書きたい話は一杯あるのに、手が追い付きません。時間も足りないけど、頑張ります!

 ではまた☆今年があなたにとって良い年であります様に♪

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