表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達の日常  作者: さきち
103/135

みかんとプロポーズ

 クリスマスも数日後に控えた週末、コタツで雑誌を読みながら、結衣は僕に話しかけた。

「莉子、マーメイドラインのドレス着たいからって、写真を先撮りしたんですって。」

 彼女は、定位置となっているコタツの上のみかんを手に取り、剥き始める。

「お腹が目立たないうちに?」

「そうなんです。で、式は別のドレスらしいですよ。お腹が目立たないデザインの。」

 最近はそんなドレスが色々あるらしい。確かにマーメイドラインは、体のラインが出るから、スタイルが良くないと着られないデザインだ。結衣はどんなドレスが似合うだろう?どれも似合いそうだなぁ…。

「僕達の時は、どんな式にしたい?」

 彼女はポカンとした顔をした。みかんを食べようとしていた手を止め、固まってしまう。あれ?ピンと来てない感じ?

「好きなデザインのウエディングドレス、着たいよね?」

 結衣は目をパチクリとした後、しばらく黙り、おずおずと口を開いた。

「…えっと、そういう意思があると思って良いんですか?」

「一応プロポーズのつもりです。」

「…分かりにくいです。」

 彼女は溜息をついた。あ、やっぱり?

「じゃあ分かりやすい方で…。」

 一つ咳払いをして、結衣をまっすぐに見詰める。

「おススメポイントとしては、家付きなので家賃はかからないです。固定資産税と光熱費はちょっとかかるけど…。あと、借金もありません。欠点はデリカシーがないらしいところと、野菜が嫌いなところですけど。それでも良ければ、結婚してください。」

 言葉にすると、少し緊張する。結衣の返事を待つ間、不安が表情に出ない様に気を付けた。大丈夫だとは、思っているけれど…。

「はい。野菜を食べてもらえるように頑張ります。」

 結衣が微笑む。その顔を見て、身体から力が抜けた。思っていたより、緊張してたみたいだ。

 僕の目の前に、剥かれたみかんが一房差し出される。彼女の手から、パクリと食べると、甘酸っぱい味と爽やかな香りが、口の中に広がった。一気に日常に戻った気分。

 多分結衣は、僕の緊張を察してくれていたんだと思う。やっぱり僕には君じゃなきゃ駄目なんだと、改めて感じた。


「あのさ…、エンゲージリング一緒に見てくれない?指輪のサイズも分からなかったし、まだ買ってないんだよね、実は…。」

 僕は正直に言う。カッコつけたって、失敗したら元も子もないし…。

「こういうのは、プロポーズの時に用意しておくものじゃないんですか?こう、パカって中を見せるイメージなんですけど。」

 結衣は両手を重ねてパカっと開くジェスチャーをして見せる。手の中にはみかんが入っていた。…芸が細かい。

「自分の、女性へのプレゼント選びのセンスを信じてない!気に入らないものあげたくないし…。」

 彼女からみかんを受け取りながら、正直に話した。

「…今まで、プレゼントって、どうしてたんです?」

「…姉とか、人頼り。」

「仕方ないなぁ。一緒に選びに行きましょう。その代わり、もう一度プロポーズしてくださいね。」

 ニッコリと笑いながら、彼女はそんな要求をしてくる。

「まさかのテイク2!?そんなに気に入らなかったの!?」

 カッコつけても仕方ないと思っていたけど、少しぐらいはカッコつけた方が良かったんだろうか…。しょげた僕を見て、結衣は違いますとクスクス笑う。

「何度してもらっても嬉しいから、良いじゃないですか。」

「二度目も…ちゃんと『はい』って言ってくれる?」

「当たり前じゃないですか。」

 その言葉を聞いて、安心して卓に突っ伏す。あ〜、良かった。


「お正月は、君の家族に挨拶出来るね。元旦は僕の家にも。」

 みかんを剥いて食べながら、僕はそんな事を話す。まだクリスマスも来ていないと言うのに、気が早いだろうか…。

「あ、もしかして、考えてくれてたんですか?」

「丁度いいでしょ?」

「…はい。」

 返事した後、結衣はふっと遠い目をした。

「?どうかした?」

「あの…母が、何やら企てを…。」

 この前の電話でのやり取りを、結衣は僕に話してくれる。思わず、お腹を抱えて笑い出してしまった。もう!どうしたもんかと困ってたんですからね!と彼女は横を向いて、口を尖らせる。

 でも、お母さんらしいと納得してしまった。期待を上回れば、どういう反応をしてくれるだろうか。

「ねぇ、逆サプライズ出来そうじゃない?」

 僕はニヤリと笑う。

「ふふふ。イイですね。」

 結衣もニヤリと笑った。

 あのお母さんの驚いた顔が見れるなら、面白いかも知れない。挨拶は緊張するだろうけど、楽しみになって来た。


 数日後の会社帰りに、指輪選びをした。クリスマスプレゼントは、これで十分だと結衣が言ったけれど、また別じゃないかと思って、ついでにネックレスも一緒に買うこことにする。そっちがクリスマスプレゼントという事で。


 プロポーズのテイク2は、結衣が満足してくれる出来だったとだけ、伝えておこう。

 いつもお読み頂きありがとうございます。

 プロポーズの話でした。ゆるい感じですみません。ちなみに私の時も、夫にテイク2させました。せめてシラフで言え!と思ったものですから。(笑)

 一応次回で終了予定です、が、その後、番外編として莉子と愁の出会いの話を書く予定でおります。日常の話なので続けようと思えば続けられるのですが、一番良い時で終わらせて頂いて、後はあなたの御想像にお任せしたいと思います。

 他に書きたい話もありますので、そちらでお会い出来たら良いな…と思いつつ。

 ではまた☆あなたが楽しんでくれています様に♪良いお年を♪

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ