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僕達の日常  作者: さきち
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引っ越し

 今日は緑川先輩と赤城さんの引っ越しに来ている。結衣と青木も一緒だ。

 賃貸のマンションだけれど、結構な広さがある。手伝いと言っても引っ越し業者さんがほとんどやってくれるプランだったので、実際はあまりやる事がない。さすがはプロ。かえって邪魔になってしまいそうなので、大人しく待っていた。


 手持ち無沙汰の僕達は、引っ越し業者さんがキビキビ作業を進める中、話をするぐらいしか出来ない。

「父さん、母屋をリフォームするって言い出してさ。いい機会だから、バリアフリーにしてしまおうって。」

 緑川先輩はそんな事を話し出す。

「へぇ、良いじゃないですか。」

「リフォーム中って社長は何処に住むんです?」

 青木が気になったのか、質問する。

「今はゲストハウスになってる離れに仮住まいだって。」

 以前は緑川さんの祖父母が住んでいたらしい。

「なんでリフォームなんて言い出したんだろって思ったら、孫に遊びに来てもらうためだって。まぁ、古くなってたのは確かなんだよ。良い機会だからだって。」

 家族の増減で変化するのは、家も同じなんだなぁ…。姉さんと瑠璃が実家に帰ってきた時も、部屋の様子がガラリと変わったのだ。テーブルの角にL字型のコーナーガードが付けられたり、明るいおもちゃの色が部屋を彩ったり。

「吉田さん達に来てもらうとはいえ、一人暮らしは寂しいのかなって、莉子と話してたんだ。」

「そっか、一人なんですね。」

 結衣は広いお家に一人だと、やっぱり寂しいでしょうねと言った。

「うん、だからさ。もしかしたら実家に戻るかもなんだよ。」

「実家にですか?」

「うん。すぐって訳じゃないけど、いずれはね。そう言ったら、父さんが張りきちゃってさ。」

 赤城さんと緑川先輩は顔を見合わせて笑う。

「キッチンは、莉子の好きな様にしてくれって言ってるんだよな。」

 夢のキッチンを実限出来そうだと、赤城さんは嬉しそうだ。

「お陰で、やる事増えて大変なんだよ。ただでさえ、結婚式の準備で忙しいのにさ。」


「結婚式の日どりって決まったんですか?」

 気になっていた事を聞いてみる。僕も呼ぶからと、緑川先輩は言ってくれているんだ。

「祖母の四十九日が終わるのが年末なんだけど、場所の問題やら、出席者のスケジュールの都合やら、なんだかんだで二月中頃になると思う。」

 日付けや場所を数ヶ所押さえてあるのだとか。さすが後取り息子。呼ぶ人が多いと大変だなぁ。

「こんなに結婚式の準備が大変だなんて、知らなかったよ。」

 衣装や会場のコーディネートはもちろん、ケーキの飾り付けだとか、打ち合わせる事が沢山あって忙しいと先輩はボヤいている。一方赤城さんは、私は楽しいけどなぁ…と言っているので、結婚式に対する捉え方は、男女に差があるものなのかも知れない。

 料理も、友達だとアレルギーとか好き嫌いは把握しているけど、会社関係の出席者はそれを確認するのが大変なのだとか。父や母の助言も参考にしつつ、何とかやっているとの事。


「青木はどうすんの?式は挙げるんだろ?」

 緑川先輩は話を青木にふる。それは僕も気になっていた。

「二人とも初婚ですし、そのつもりですけど…。」

「けど?」

「あまり派手にはしたくないって、明美が言ってるんで。身内だけでひっそりかなぁ…。身内だけなら海外ウエディングもアリかなぁって、話してました。」

 姉さんは、南の海のビーチで式を挙げて、みんなで食事をして、海上コテージでのんびり過ごせたら…なんて漠然と憧れてるシチュエーションがあるのだとか。はじめて知ったよ、姉さんのそんな夢。

「俺は呼ばれない訳?」

 緑川先輩はジト目で青木を見た。俺は青木呼ぶのに…なんてブツクサ言っている。

「まぁ、身内だけですし…。」

「…俺は悲しい!自腹で行くから呼んで?」

「ハイハイ。」

 青木は苦笑いして、仕方ないなぁと笑っている。

「そうなんだぁ、私も行きたいなぁ。」

 結衣はポツリと呟いた。海上コテージ良いなぁ…と赤城さんとうっとりしている。

「白石さんは…。」

 青木は言いかけて、ちらりと僕を見た。

 …ハイ。言いたい事は分かってる。何もかも僕がはっきりしないのが悪いのだ。ただの恋人と、婚約者では扱いが違うと言いたいのだろう。

「まだ先の話ですし…、何も決まってないですから。」

 青木はそう話し、話題は別のことに移る。


 もう、待ったなしかな…。

 隣りで笑顔で赤城さんと話す結衣を、僕は意識しないではいられなかった。

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