表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
僕達の日常  作者: さきち
1/135

忘年会

秋頃の事だっただろうか。事務に綺麗な子が入って来たと、後輩が騒いでいる。興味本意で覗くと、成る程綺麗だ。サラサラとしたロングの黒髪に、綺麗なアーモンド型の眼、スッと伸びた鼻筋にぷっくりとした形の良い唇。何処かで見たような気がしたが、気のせいだろう。こんな美人は忘れない。

仕事も出来るらしく、同期の事務職は手放しで褒めていた。

尻尾を振った犬の様に、後輩が彼女に近ずくが、緊張してるのか警戒してるのか、彼女の表情は強張ったままだった。

「コラ、サボるな。行くぞ。」

後輩の頭を小突く。

「ごめんね。」

彼女に謝ると、首をブンブン振って目を伏せた。人見知りみたいだな。そんな感想を抱きながら、その場を後にした。


その後は挨拶ぐらいかしなかったが、たまたま忘年会で隣の席になった。

「ビールで良いですか?黒川さん。」

彼女が名前を覚えてくれていたのに驚いた。

「名前知ってたっけ?」

「一応覚える努力はしています。」

「ありがとう、白石結衣さん。」

「…名前。」

「君は有名だから。」

フリーの男どもを騒つかせるぐらいには美人だし。

「…そうですか?」

「そうですよ。」

人見知りだと思っていたのに、彼女は喋りやすかった。適度に相槌を打ち、質問してくれる。たわい無い話をしながら唐揚げをツマミにビールを呑む。お酒は軽くしか呑んでいないが、色々料理を摘まんでいる姿は見ていて楽しい。

「結構いっぱい食べるねぇ。」

感心しながら僕は言う。

「デリカシーが無いって言われませんか?黒川さん。」

彼女は半眼で僕を見る。

「…それで振られた事がある。」

「納得です。」

「褒めたつもりなんだけど。」

少食よりは見ていて気持ちいい。

「大抵の人には、通じないんじゃ無いですか?」

「そうかなぁ?」

「そうですよ。」

「褒めたんだよ。」

「ハイハイ、わかりましたって。」

苦笑いをしながら彼女はビールを注いでくれた。


店員が焼きそばを運んで来た。

すかさず、彼女はいります?と聞いてくる。

「焼きそばよりも、ラーメン食べたい。」

「それは同感ですけど、無理でしょうね。」

メニューは予め決まってるだろうし、勝手に頼んだら予算オーバーになってしまうだろう。

「帰りに食べようかなぁ。」

ポツリと呟いた独り言に返事があるとは思わなかった。

「良いですね。」

彼女はニッコリと笑って答えた。

「まだ食べるの?」

失言に気付いた時、彼女は半眼で僕を見ていた。あ、マズイ。

「ごめんなさい。ラーメン奢るから許してください。」

「やった。約束ですよ。」

笑顔に戻った彼女に、僕は負けたと思った。

評価をするにはログインしてください。
この作品をシェア
Twitter LINEで送る
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ