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―箱庭で生きた少年―
「嘘でも良い。まやかしでもいい。僕はここで生きるよ」
闇が退いて、世界が再び照らし出される。
エンドロールの流れた舞台に、役者が現れれば、劇は進んで行くだけだ。
「確かに何もなかったかもしれない。歩いてきた過去を振り返れば、何も残されてないのかもしれない。けれどそこに意味をつけるのは、いつだって後からだ」
世界は変わらずに存在している。
闇に姿を隠すことなく、そこにあり続けている。
捜せばきっと、ペンはある。紙だって見つかるだろう。
「新しい物語を始めてはいけないと誰が決めた? 解釈を変えて読んではいけないと誰が決めた?」
最初に綴る文字は、はじまりはじまり、そしてオープニングだ。
「闇の中にだって光はある。夜空にだって星はあるのだから」
タイトルを決めて、作者名を記そう。
やがて、誰かがこの舞台に上がって来るだろう。
満ちた明りを消そうとするかもしれない。
けれど、彼が手を止める事はない。
「照らす為の光なら、心にあるから」