君は本当にばかだなぁ
「君はほんとうにばかだなぁ。」
そう言って声を出して笑う君が大好きだった。
「私は君のそういうところが好きだよ。」
他人と比べると頭もいいわけじゃないし何かできるわけでもない、顔だってかっこよくない僕を君は好きだと言ってくれた。僕は君が好きだと言ってくれた僕の部分をそれだけは貫き通したいと思った。
若かった当時の僕たちは二人で笑っていられればそれだけでよかった。きっと君もそうだった。
「私うまくできるかな?ちゃんとやれるかな?」
少し大人になって君が自分の夢を叶えれるかなんて悩みが出てきたとき。僕はいつものようにおどけ、駄目でも僕がいるからなんていったっけ。
「君はほんとうにばかだなぁ。」
その時も君はこう言って笑い、二人で抱き合った。君と一生一緒にいたい。僕はこの時間を一生続けていければと思った。
「疲れたなー。私どうすればいいんだろう。」
大人になった君が挫折したり、悲しんでいたとき。僕は大丈夫だよ、君のそばには僕がいる、僕が君の悲しい気持ちなんて吹き飛ばしてあげるからなんておどけながら君を抱きしめた。
「君はほんとうにばかだなぁ。」
その時も君はこう言って涙を流しながら笑い。頑張ってみるねと力強く僕に言った。僕は君のそばにいられたらそれでよかった。君が笑ってくれたら幸せだった。
「私、好きな人ができた。」
もっと大人になった君が覚悟を決めたようにこういったとき。僕はそうなんだ、僕といるより君がしあわせなら幸せになれるなら僕はそれでいいよと少しおどけながらそう言えた。
「君はほんとうにばかだなぁ。」
君はもう笑っていなかった。ただ少し泣きながら今まで楽しかったありがとうとだけ僕に言った。
最初に君のそういうところが好きだといってくれた時から僕は何も変わっていない。変わらなかったら君のそばにいられると思っていた。
君はどんどん大人になっていった。
僕は本当のばかだ。
「君は本当にばかだなぁ。」
そういって笑う君が大好きだった。
作者ツイッター@usotukiryosuke