思いで
私は最初、お兄様が嫌いだった。
それは私が物心がついた頃、お兄様はいつも一人で何かをしていて私を見てくれなかったからだった。
王宮の中では私は、お兄様とは違い色々な人達が私をかまってくれるのだ。しかし、お兄様は私に興味が無いのかほとんどかまってはくれなかったのだ。お兄様はいつも一人で姿を消し暗くなるとひっそり帰ってくるのだ。
(っ私が居るのに、なんでどこか行くの?私と一緒にいたくないの?)
と幼いながら思ったものだ。
しかし、そんな思いもこの後すぐに消される事になるのだ。
お大人達はシェリーにいつもプレゼントを持ってきては私に
「シェリー様、私は先代より貴女達に仕えていますサバス伯が長男ビートでございます。どうぞ、国王にお見知りおき頂きたくおもいます。」
と仕えていると言いつつ仕えている者に紹介を願う者が居たり、
「どうぞ、国王に、、、、、。」「国王に。」
と私に笑顔を向けるが実際には父上に愛想を振り撒いているのだ。
私は、そんな大人達から逃げるように王宮内の植物園に来ていた。植物園はこの大陸に咲いている様々な種類の植物が他の国より友好の証として献上されているのである。
赤や黄色など様々な色の花の中、いつの間にか寝てしまっていた私はこの植物園には似つかわしくない3人の男達が居るのに気が付いた。
辺りはもうすっかり暗くなっていたが、男達が手に持っている植物園には必要の無い大きな剣を持っていたのだ。
(おかしいわ、衛兵を連れてこないと!)
私は、幼いながら男達の異様な出で立ちから直ぐに危ないと本能で感じていた。
「おい、本当にここから王宮内に侵入できるだろうな。」
リーダー格の男はそう部下に言いはなった。
「兄貴、それは大丈夫ですよ。なんせアイツが経路を確保してる筈ですよ。」
「兄貴がここのお宝をいただいている間においらはもう1つの依頼をこなしてきますよ。ぐへっへへへ、、。」
と軽薄そうな顔の男が気持ち悪く笑っていた。
私は、衛兵を呼ぶ為にこの場をはなれようとした。
しかし、幼い少女がその場を動くのは彼らにとって気付かない訳が無かった。そう、眠っていて無意識に自然体になっていたシェリーは生まれて初めての恐怖に気配を隠すことが出来なかったのだ。
「だれだっっ!!!」
とリーダー格の男は叫んだ!
私は怖くて直ぐに動けなかった。
やっと動けたと思ったら男達にはあまりに遅すぎた。
あっさり私は捕まってしまった。ここは王宮の中でも人が来ない場所だった。
私は外に衛兵が巡回しているかもと思い大声を出そうとした。
「「だれっ、、ごぼぉ!」」
大声を出そうとした私に男は容赦なく蹴りをいれてきたのだ。
あまりの痛さに息が出来なくなっていた。
ごっほ、ごっほっと私はせきこんでしまった。
「おいおい、なんだこのガキは?」
「兄貴、このガキ上玉ですぜ!奴隷にでもしたら貴族様ならいくらでも金を出しますよ。」
「でも、このままだと今回の仕事の邪魔だぜ。いくら上玉でも王宮に侵入したのがバレれば拷問を受けた上で処刑されちまう。」
「なら殺すしかないな。」
男達はそう言うとようやく呼吸を取り戻した私に殺意を向けてきた。
(誰か助けて!!父上、母上、、、お兄様!!)
私は最後の瞬間なぜかあの私に無関心のあの男の事を思い浮かべていた。
お男達がその凶刃を私に振り下ろそうとした瞬間、
ドカッツ!!
という音と共に植物園の扉が吹き飛んできて賊の一人に当たって止まった。
扉が当たった賊は頭に扉が刺さり見るも無惨な死に方をしていた。
「「だれだ!!」
賊のリーダー格の男は手下の方を一別すると扉の吹き飛んできた方向に叫んでいた。
其処に立っていたのは女の子のような顔をした子供だった。
(お兄様っ!!)
私は其処に立っている人物驚いていた。なぜならそこには私に興味を持ってなく相手にしてくれないあのお兄様がたっていたからだ。
「…………。」
お兄様は無言だった。ただ微かに身体が震えているのを私は見逃さなかった。
賊の一人が何かに気付いたようでお兄様に向かってこう言った。
「おお、もう1つの依頼が自分から来てくれたぜ。大人しく死ねやぁああ!!」
男はそう言うととんでもないスピードでお兄様との距離を詰め正確にその首をはねようと剣を振るったのだった。
お兄様が殺されると思い目を離せなかった私はとんでもないモノを見てしまった。
お男はトウヤの目の前までダッシュすると身体を回転させトウヤの首を狙って来たのだ。
トウヤは、一歩前に出ると男の手首を掴み内側に捻り相手の勢い利用し投げ飛ばしたのだ!植物園の花がクッションになり男は反撃をしようと意識したがそれは叶わなかった。
トウヤは、倒れた男の喉仏を掴みそのまま潰したのである。
賊の男は喉仏と気管を潰された事により、声を出せずに苦しみながら死んでいったのである。
いくらトウヤでも6歳児の身体で大男を投げ飛ばすには力不足だった。しかし魔力を身体に纏いまるで筋肉のように扱う事できるようになっていた。
手下を失った賊のリーダー格の男はそんな様子をみて冷や汗をかいていた。少年の力ではなく手下を殺した際、相手の剣を使わず苦しむ殺し方を平然とやってのけたのだ。
「貴様、一体何者だ!!」
「………………。」
「黙っていないで答えろ!!」
リーダー格の男はその恐怖と苛立ちから大声を上げていた。
トウヤはここでようやく、
「俺が誰だって?なら教えてやる!俺はそこに居るシェリーの兄のトウヤ・クリスタだ!!シェリーに手を出したことこの世でもあの世でも後悔しろっ!!!!」
トウヤは絶叫した。
私はこの時初めてお兄様が私の事で怒っている事を知った。あれほど無関心だったお兄様が私の為に怒ってくれているのである。
そう思うと私の胸に熱い感情が押し寄せてきたのである。
賊の男はそんな私の様子には気付かずお兄様に斬りかかっていた。素人目でもハッキリ判るほど賊の男は動きが違うのだった。
お男はトウヤに捕まるとあの力でダメージを受けてしまうと考えトウヤの死角に入ろうとした。ここは植物園、花以外にも多種多様な木も生えている。男は木から木に移動し隙をみてはトウヤに斬りかかっていた。
しかし、男の剣はトウヤに当たることは無かった。
トウヤは右手に魔力を込めると地面に叩きつけた。するとトウヤを中心に半径10Mほどのクレーターが出来ていた。
賊の男は突然無くなった足場に対応出来ずに地面に叩きつけられてしまった。
トウヤは賊の男に素早く近づくと男の首を跳ねていたのあった。
呆然とするシェリーにトウヤは近づくと優しく抱き締めてくれたのだった。
シェリーはトウヤの胸のなかで堤防が決壊したようにないたのである。
後日談になるがあの時トウヤがなぜ植物園に来たかと言うと以前、エリサに光の矢を放った魔導師がトウヤの態度や己のプライドで手引きをし賊をいれトウヤを亡きものにしようとしていたのだ。
トウヤがそれに気付きシェリーの安全の為に距離を置いていたのだが賊が入った日に魔導師の様子がおかしかったので身体にOHANASIしたところ吐いたのだ。
シェリーが居ないことに気付き探していたらシェリーの悲鳴が聞こえ、シェリーの姿を見てキレたのであった。まだ魔力をコントロールできていないトウヤはその後1週間、意識をうしなっていたのだった。
ちなみにシェリーはその話を聞いて兄の事を異性として意識するのであった。
そして現在~トウヤ12歳、シェリー10歳
(私が、14になるとクリスタ女学院に入学しないといけないのに。早く既成事実つくらないと、、。)
難しい顔でシェリーは考えていた。
(もし駄目だったら、お兄様は成人してしまうし、、、。成人すれば当然、王子として妻をめとらないといけなくなるし。こうなったらもし駄目だったらあの手でいくか。)
((お兄様は誰にも渡さないんだから~~~!!)
そうシェリーは心の中で叫ぶのであった。