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今度の派遣先は異世界です  作者: 近江 上総
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めでたしめでたし

その後、オリヴィちゃんはこうすけと共に教会の外に出て、村の人達に今回の事態の説明をした。

今回の事は、クァンタンの暴走を止めるために、ロワイエ教の本来の教義に従い、魔物と共に教義の是正を図ったこと。

本来の教義とは、勇者と魔王は人間と魔物の間の橋渡しをする存在であり、協力することで平和が保たれるというものであること。

今までの魔王の悪行は、クァンタンに協力を強要されたためであること。

そんな中今回の勇者が魔王と共闘して、クァンタンに反旗を翻し打倒したこと。

こうすけが、被害が出る前に信者に避難を促したのを目撃していた人が多かったことと、オリヴィちゃんの横にいるこうすけが、大きな怪我を負っていたことも後押しして、村の人達は表立ってオリヴィちゃんに否定的な態度をとりはしなかったみたい。

まあ、本当に皆が納得するまでには、まだまだ時間がかかるんだろうけど。

クァンタンは、今回の件の責任を取って処刑という声も出たらしいだけど、オリヴィちゃんが村からの追放ということで治めたそうだ。

これからは、前にオラスが治めていた砦で、オラスの監視の元、隠居生活ということになる。


一ヶ月後。

「てか、俺を引き起こしてくれた時、こうすけも怪我してたんだね。」

「ん? おう。ヨルゴの核を持ったおっさん逃がす為に、ヨルゴに斬りかかったからな。カウンター食らって右腕折れてたんだよ。」

「そうだったんだ……。オリヴィちゃんに、先に治してもらっちゃえば良かったのに。」

「ま、死ぬほどじゃなかったし、オリヴィも防護壁を連続で使って、疲れてたからな。」

「そっか……。優しい奴だね、こうすけは。」

「おうよ。知らなかったのか?」

にやりと笑って、こうすけは言う。

腕の怪我は、後日落ち着いてから治してもらったらしい。

「さ、大事な大事なお披露目の時間だ。行こうぜ?」

「お披露目とはちょっと違うと思うけど……ま、いいか。行こう。」

約三週間ぶりの再会をした俺とこうすけは今、教会の鐘つき台に繋がる階段に居る。

これから、人間代表のこうすけと魔物代表の俺が、鐘つき台で握手をすることで、人間と魔物の和解を印象付けるセレモニーを行うんだ。

本人のたっての希望で、バルタザールもこの場に来ている。

まあ、野生の魔物も恐いものばかりで無いと示すには丁度良いかもしれないね。

ちなみに、不可侵条約を侵して魔物を狩る人間には勇者こうすけが、人間を狩る魔物には魔王の俺が鉄槌を下すと明言してある。

魔物達にも、人間と不可侵条約を結ぶと俺の名前で宣言した。

周りの魔物の反応としては、歓迎と興味なしが大半って感じかな。

気に食わない奴は俺の城に実力行使で直訴しに来れば良いと言ったら、最初にゴーチェが来てビックリした。

人間と仲良くしたくないのかと思ったら、単に俺と戦ってみたかっただけらしい。

レベル差があったお陰で何とか勝ったけど、結構苦戦した。

ゴーチェってあんなに強かったんだなぁ。

俺に負けた後は、自分の元々住んでいた場所に戻って、大人しくしているようだ。

それから、俺が城に帰ってすぐに、ラミーヌが城に訪ねてきた。

悪魔達の元にも噂話が届いたらしい。

「あ、あの……魔王様。」

「ああ、ラミーヌ!」

「え、ええ!? ど、ど、どうして私の名前……っ? わ、私、何かしてしまいましたかっ!? すすす、すみませんっっ!!」

と、ラミーヌを大混乱させたのは俺の凡ミス。

全て終わった気分でいて、気が緩んでいた。申し訳ない限りだ。

そんなラミーヌは、俺が拠点とすることになった双子砦の片方で、城からの異動を希望したジャメル達と一緒に、今は留守番中だ。

元の城は、人間の村から遠すぎて不便だから、ヨルゴに核を戻させない為の保険ということで、管理をアルドに任せている。

そんな感じで、今日も世界では概ね平和に時が流れている。

鐘つき台の上----俺達二人の横で、今回のセレモニーの意義を説明をしていたロワイエ教の新教主、オリヴィ・セレスタンが一際大きな声で宣言をした。

「それでは、この度の立役者お二人に、固い握手を交わして頂きましょう!」

歓声が上がる中、俺と孝介はがっちりと握手を交わす。

その後ろでは、バルタザールが満面の笑みで、揚げたイモを両手に持ちながら万歳をしていた。

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