お久しぶりです
さてと。
半月以上ぶりになる、あの二人に会いにいかないとね。
「おーい、バルー!」
近くで遊んでいるであろうバルタザールを呼ぶ。
少し待つと、バルタザールが駆けてきた。
「まーさまー! 終わったー?」
「うん。箱の中身はこれだったよ。」
鍵を取り出して、バルタザールに見せる。
「これが大事なものなのー?」
不思議そうに鍵を見つめるバルタザール。
「というか、大事なものがこの鍵がかかった場所にある、のかな。」
「ふーん?」
バルタザールは首を傾げたが、すぐに気を取り直したように笑顔になった。
「あそびにいくんでしょー? まーさまー!」
「あ、うん。それなんだけどさ、こうすけ……勇者がこの辺で遊んでると思うから、一緒に遊ぼうと思うんだ。」
「あー、勇者ねー。いるよー! 勇者にあうー?」
「うん、お願い。」
「わかったー! じゃあ、落ちないようにつかまっててねー!」
そう言うとバルタザールは、俺を乗せて走り出した。
「やっぱり近くに居ると、匂いで分かるんだね。」
「においもそうだけど、勇者とはさっきあそんでたから、わかるんだよー?」
え?
「……さっき遊びに行ったのって、勇者のとこだったの?」
「そーだよー。」
普通に答えるバルタザール。
そうだったのか……。
「勇者とは、仲良い?」
「うんー!」
「オリヴィちゃん……えと、お供の子とは?」
「けんかはしないよー?」
「バルが来ると嫌がったりしない? お供の子。」
「あのねー、ひさしぶりに会ったときは、いやそうだったー。」
……んん?
「それって、いつの話?」
「なんにちか、まえー。」
つまり、俺が教会に侵入をしてる間とかに、会ってたってことか。
「さっき会ったときはお供の子、嫌そうだった?」
「べつにー?」
「そっか。」
オリヴィちゃん……心の整理、つけたのかな?
どう整理をつけたのかによっては、別の作戦も考えないと。
しばらく走ると、見覚えのある人影が2つあった。
「勇者ー!」
「おー、バル! また来たのか……ん?」
バルタザールの声に振り向いたこうすけが、俺に気づく。
「よう、こうすけ。」
「おう。お前とは久しぶりだな!」
「……お久しぶりです。」
こうすけに続いて、オリヴィちゃんが小さく挨拶をする。
「うん、久しぶり。」
うーん……敵意はないけど、よそよそしさは感じるかな。
「ねー、勇者! まーさまがねー、いっしょにあそぼうってー。」
「お、まじで? まーさまは寂しがり屋だなぁ! いいぜー!」
くっ……! 微妙に気まずい雰囲気を解消しようとしてくれてるのが分かるだけに、否定もしにくい……!
「……策士め。」
「何か言ったかー?」
「いや、別に。」
そんなこんなで、四人(?)でレベル上げを始めた。
「お前、今レベルいくつ? オレもうすぐ32になるんだぜー? オリヴィはもうすぐ30だよな!」
「はい。」
「で、お前いくつよ?」
にやにやしながら聞いてくるこうすけに、ちょっといたずら心が芽生えて、敢えて何でもないかのように答える。
「レベル46だよ。」
「……は?」
「よん……っ!?」
こうすけだけじゃなく、オリヴィちゃんも驚いている。
「バルに大分頑張ってもらってさ。俺もまさかこの短時間にここまでレベルが上がるとは思ってなかった。」
俺の言葉に、バルタザールが胸を張った。
「えへへー。バル、すごいでしょー!」
「マジすげーな、バルは! バルのレベルはいくつなんだ?」
「いまー? えっとねー、65だよー。」
「65ぉっ!?」
「そんなに高いんですかっ!?」
「おぉー、そっか。」
「おま……驚かないのかよ!?」
「俺が知ってるバルの最高レベルは、73だからねー。」
「んー?」
俺達の会話に、バルタザールが首を傾げる。
そりゃそうだよね。
バルにはループのこと話してないからね。
「……バルに提案がある。」
こうすけが突然真面目な顔で言った。
「こいつにレベル離され過ぎてるのは癪だから、オレだけを連れてレベル上げに行ってくれ! 頼む!!」
「えー。」
「今日だけでいいから! な!!」
土下座しそうな勢いで頼むこうすけに、俺も加勢してみる。
「バル、今日だけ行ってあげたら? 皆で遊ぶのは明日でも出来るし。」
オリヴィちゃんが嫌だったら、ここで反論してくるかな、と思ったけど。
「……。」
特に反論はしないみたい。
「んー、じゃあわかったー。」
バルはそう言うと、こうすけに背に乗るよう促した。
「よっしゃ! じゃー、ちょっと行ってくるわー。オレ、1日でまーさまーに追いつける?」
「むりー。」
二人が仲良く出掛けると、俺とオリヴィちゃんがその場に取り残された。
「……オリヴィちゃんがこうすけに、レベル離され過ぎても困るだろうし、俺達は俺達でレベル上げに行こうか?」
「……はい。」
こくりと頷くオリヴィちゃんを連れて、俺は森の奥に入っていくのだった。




