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今度の派遣先は異世界です  作者: 近江 上総
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魔王の疑問

バルタザールと二人、無言で魔術書を読むことしばし。

「まおうさま、ごはん……でき、ま、した。」

夕飯の準備が整ったらしく、クレマンがやってきた。

「うん、ありがとう。今行くから、先に食堂に行っててー。」

「わかっ……た、りました。」

短く答えて、クレマンは去っていく。

「さ、じゃあ俺はこれからご飯だから、バルも今日は帰りな?」

「んー、わかったー。」

新しい呪文を覚えられたらか、割と機嫌良くバルタザールは頷く。

「じゃあまた明日ねー、魔王さまー!」

……そういえば、バルタザールって食事とかどうしてるんだろう?

巣で寝てるって話は前に聞いたけど……。



「精が出ますね、魔王様。」

食堂に現れた俺に、アルドが声を掛けてきた。

「ん? 別にいつも通りじゃない?」

「それが、精が出ると言うのですよ。歴代の魔王様方は、そこまで努力……というか、小さなことには拘られませんでしたよ?」

「そうなんだ。まぁ、これが俺の性格だからねー。」

「……あまり無理をなさると、身体に障りますので、ご自愛くださいね?」

「心配してくれてありがとう。歴代の魔王達は、アルドがそうやって細かいことを気にしてくれるから、小さいことには拘らなかったのかもね。---いただきます。」

話しながら席に座って、手を合わせる。

アルドとクレマンも、俺に倣う。

……魔術書が初級だったこと、言うタイミングなくしちゃったな。

ま、別に言わなくてもいいか。


夕飯後、部屋に戻ろうとした俺に、アルドがふと疑問に思った、くらいの感じで聞いてきた。

「ときに魔王様。魔王様は魔物達を倒してレベルを上げておられるようですが、人間は狩られないのですか?」

なるほど。アルドは魔族っていう、人間とは別の生き物だから、レベル上げのためには人間を狩るのが普通の感覚なのかもしれない。

「あ、魔物って狩っちゃ駄目だった?」

「いえ、そういうわけではないのですが……。」

「……えっと、その……人間のほうが、経験値が高かったり……するの?」

正直、自分と同じヒトの形してるものを狩るって、結構キツいものがあるんだよなぁ。

魔物だったらまだ、虫みたいな形態とかだから狩るのにあんまり抵抗はないんだけど。

「えぇ、まあ……。も、申し訳ございません。出過ぎた発言でございました。お忘れください。」

俺の浮かない表情に気づいたのか、アルドは自分の発言を撤回する。

「あぁ、うん……。じゃあ、おやすみ。」

「お休みなさいませ。」

なんとなく気まずい空気のまま、会話を切り上げて、俺は眠りについた。


翌日。

今日もバルタザールとレベル上げに行く……んだけど。

「はぁ……。」

昨日のアルドの言葉が引っかかる。

やっぱり、魔王って人間狩りとかするイメージだもんなぁ。

魔王とか魔物にとっては、人間のほうが「おいしい」ようになってるのかなぁ。

「魔王さまー? どうしたのー?」

「……んー、いくら経験値いいとしても、レベル上げのために人間を倒すのはやっぱり嫌だなぁと思ってさ。」

「人間ー? 狩りたいのー? なんでー?」

「え? なんでって……その方が、経験値が良いんじゃ……?」

「そんなことないよー。お城にいるガチャガチャ音のする服着てる人間は、いっぱい経験値くれるけど、その辺に居るのをたおしても、あんまし意味ない。」

「そ、そうなの?」

「同じ数たおすなら、魔物のほうがいーよ?」

ガチャガチャ音のする服着てる……って、鎧を着た騎士とかかな?

それって、結構レベル高いから経験値がもらえるってこと……?

にしても、わざわざ城まで乗り込む意味はないよな。

その辺の野生の魔物のほうが経験値もらえるわけだし。

じゃあ、昨日のアルドのあの発言は、一体何だったんだろう……?



「じゃーねー、魔王さまー! またあしたー!」

昨日と同じく、剣で戦った後に筋トレをして、バルタザールと別れた。

「さてと。あと、やるべきことは……。」

罠……とか、仕掛けておくべきかな? 「城に仕掛ける罠大全」みたいな本とか探してみようかな。

とか考えていると、アルドが前から歩いてきた。

「魔王様。先日言っておられた、レベルが勇者の倍ある魔物達への通達の結果なのですが……。」

「お、何人か来てくれた?」

「ええ、ざっと30名ほど。」

顔色も変えずに言うアルド。

「さ、30人!? 凄いじゃない!」

まあ、全員使うわけにはいかないだろうけど。

「全員を配置致しますか?」

「いやいやいや、流石にそれは。生態系とか力関係とか、色々考えて選ばなきゃ駄目でしょ?」

「ええ。先程のは冗談です。」

そうですか。真面目な顔して冗談言うのね、アルド。

「三日後に、魔王様にご面会頂こうと思うのですが、その前にこちらである程度、候補を絞り込んだほうがよろしいですか?」

「んー、そうだねー。じゃあお願いしようかな。」

そんなわけで、初めての配下オーディションは、つつがなく進んでるみたいです。

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