奇襲
とはいえ、ヨルゴへの対策が今すぐ出来るわけでもなく、ひとまずは集まってくれた魔物達にオーディション結果を伝えることにした。
オラス、エルワン、ゴーチェ、ラミーヌは前回からの続投。
そして残った魔物達は、オラス達に均等に任せることにした。
不満なら、自分の上に立っている魔物を倒せば入れ替われるという条件を提示したら、驚くほどあっさり頷いてくれたので助かった。
砦の守りも、それぞれに前回と同様に任せ、ラミーヌには城の警備強化……と思ったんだけど、今回はジャメル達の数が極端に少ない気がしたので、警備係集めからお願いした。
種族はこだわらないけど、ラミーヌが扱いやすい奴が良いだろうと言い添えて。
「さて、それじゃあ俺もレベル上げに行ってくるよ。」
アルドの話では、魔王を倒そうという気運が高まってるらしいから、俺のレベルを上げておくことは大事なはずだ。
「ねえ、アルド。手っ取り早くレベル上げられるようなところって、どこかある?」
「……少々遠くてもよろしいので?」
「うん、平気。」
「でしたら----。」
アルドの話を総合すると、どうやら前回ラミーヌにあげたネックレスを手に入れた洞窟が、一番効率が良いようだった。
あそこかぁ……。入り口のコウモリみたいな奴……ナマンとか言ってたかな? あいつらが大量にぶら下がってる光景は、ちょっとトラウマなので見たくないけど……。
うん、バルタザールに駆け抜けてもらおう。
「クレマンー、お願いがあるんだけど……。」
「なに? ……なん……ですか?」
「俺、これからちょっと遠出するから、保存食みたいなのがあったら欲しいんだよ。」
「すこししかない。」
「そっかー……。じゃあ、それもらってくね?」
「わかった。」
「わかりました、ですよ。クレマン。」
「わか……りました。」
そんな感じで、俺はあるだけの保存食を持って、バルタザールと共に洞窟へと向かった。
「魔王さまー、洞窟はとおいのー?」
「うん……まあ、近くはないかな。」
「じゃあ、しばらくは魔王さまとバルのふたりだけだねー!」
嬉しそうに、バルタザールは言う。
「今回は、ちょっと頑張って、なるべく早くレベルを上げなきゃいけないんだ。協力お願い出来る?」
「はーい!」
洞窟に着くまでの間にも、少し寄り道をしながら魔物を狩っていく。
途中の森に、モーリス(前回オラスに教わった、経験値がおいしい魔物だ)が群生している場所があり、そこで少し長めにレベル上げをした。
バルタザールが追い立てて、俺が呪文で仕留めるというスタイルが良かったらしく、俺のレベルは35まで上がった。
よし、これで洞窟に行って、40台後半くらいまで一気にレベルを上げちゃおう。
「ここが、そのどうくつー?」
「そう。この奥まで行くのが目的ね。」
魔王城を出て一週間程が過ぎ、ようやく俺達は目的の場所に辿り着いていた。
「よーし、がーんばーるぞー!」
バルタザールが間伸びした感じで声をあげる。
「頑張ろうね。」
さて、洞窟籠りの結果だけど、目標どおりレベルは46まで上がった。
今回はひとまずこれで帰ろう……と思って洞窟を出たところに、馬に乗ったラミーヌがやってきた。
酷く慌てた様子だ。
「魔王様、大変です! オラスさんの守る砦が、勇者に落とされたそうです……っ!!」
「えっ!?」
いくらなんでも、攻めてくるのが早すぎる……!
「一個師団と共に砦に現れ、息つく隙もなく総攻撃をかけられたそうです。現在アルド様が先頭に立って、双子砦の戦力強化と城の侵入者排除装置の整備をしておられます……。」
アルドは城に居る……ということは、勇者を率いているのは恐らくヨルゴ----いや、教主の顔だろうからクァンタンか。
俺が直接対峙したことで、早急に魔王を潰す必要性が出てきたってところかな?
それにしても、まさかこんなに早く動くなんて……。
「報告ありがとう! 俺、バルと先に戻るから、ラミーヌは無理せずに後から馬で戻って! バル、城まで大急ぎでお願い!」
「はーい! 振り落とされないでねー!」
緊急性を感じたのか、バルタザールはかつてない速度で城まで駆けてくれた。
お陰で、本来かかるはずのものよりも、かなり短い時間で城に戻ることができた。
城では、ラミーヌが増やしてくれたらしいジャメル達が、アルドの指示の下、大掛かりな罠を整備しているところだった。




