暴露
とりあえず、城に帰るまで刺客に気を付けよう。
「魔王さまー、なんか恐かったよー?」
「そう? ごめんね。」
「いーよー。あのお茶、おいしかったねー!」
「そうだね……。」
正直、どんな味か覚えてない。そもそも俺、飲んだっけ? って感じだ。
さて、これからどうするか……。
考えながら、バルタザールに早めに走ってもらい、城へと戻る。
あ、ちなみに、道中は静かなものだった。
流石に、すぐに仕掛けては来ないか。
「ただいまー。」
バルタザールと別れて城に帰ると、俺の要請に応じた魔物達が十数匹集まっているとのことだった。
……前回より少ないな。
アルドが数日前から留守にしているらしく、オーディションの件は俺に一任すると言っていたそうだ。
俺の動きが違うからか、結構色々違ってくるんだなぁと思いながら、リストを眺める。
と、リストにラミーヌの名前がないことに気付いた。
うーん……時期が早すぎたかな?
オラスにゴーチェ、エルワンは居るよね…………ん? イニャスも居ない。
アルドが戻るまで時間があるみたいだし、あと数日、締め切るのは待ってみよう。
その間に、此処に来ている魔物達を見ておこうかな。ヤバい奴とかには、早めにお引き取り願いたいし。
そんなわけで、俺はアルドの帰りを待ちつつ、予備選考を開始した。
まあ、結果としては、前回のアルドの荒い第一次選抜は正しかったと思わされる感じだった。
個別に話をしてみると、人間領に攻め入ろうと進言してくる奴やら、作った武器を買ってくれという魔物の商人やら、便利に使っていいから、一族全員を雇ってくれと言い出す奴やら……。
それぞれがやりたいことを好き勝手に主張している感じで、これをちゃんと調整しようとすると非常に大変だ。
しかも、自己申告にもかかわらず、碌にレベルを上げてない奴の多いこと……。
話によると、普段暮らすにあたっては、別にレベルアップって、そこまで必要ではないらしい。
だから、レベルの高い奴は珍しいのだと、オラスが教えてくれた。
呪文に耐えられたら合格、とでもしないと、使える魔物って集められなかったんだね。
よし。今回は、俺が直々にその役目を担うとしよう。
目にうつる全員を幸せに出来たら、そりゃあ最高なんだろうし、望む皆が仲良く出来るようにしたいとは思うけど、残念ながら俺はここまでの数の希望を叶えられるほど有能じゃない。
そして、数日が経った。
リストには更に複数の魔物とラミーヌの名前が刻まれたが、結局イニャスは現れなかった。
何故かは分からないが、事をのんびり構えすぎるのもどうかと思うので、第一次選抜を開始する。
「さて皆さん、今日お集まりいただいたのは他でもない。皆さんに、俺の部下になる資格があるかどうかを見せて頂きたいと考えたからです。」
候補者達がざわめく。
なんかこういうのって、ちょっと楽しいな。気分は悪役。
映画とかで、あったよね。「今日は皆さんに、ちょっとコロしあいをしてもらいます」とかって台詞。
今回の選抜では、別に殺す訳じゃないけどさ。
「では----頑張ってください。」
そう一言言い添えて、俺は風の上級呪文を唱える。
途端に会場を巨大な竜巻が荒れ狂い、レベルの低い魔物達を蹂躙していった。
呪文って、唱えれば発動はするけど、威力はレベルに依存するところがあるから、今の俺の力じゃあ、前回よりは人数が残って当然。
てことで、オラス達+数匹の魔物が残った。
というところで、アルドが苦々しい表情で戻ってきた。
「魔王様。人間どもの間で、魔王様を排除しようという動きが、にわかに活発になっております。」
「あー……やっぱり動いたのか、クァンタン。」
俺の言葉に、アルドの表情が露骨に変わる。
「……あ奴を、ご存じなのですね。」
「うん。実はさ……アルドとクァンタンが繋がってるのも、知ってるんだよね。」
元々あまり良くないアルドの顔色が、蒼白と言っていい程に悪くなる。
「何故……?」
「んー……まぁ、知ったのは偶然なんだけど。」
「……怒られないのですね、魔王様。」
秘密だったことを知られて開き直ったのか、こちらを真っ直ぐ見ながら言うアルド。
「あ、いや、最初は腹立ったけどさ。理由を聞いてみないといけないなって思ったんだ。」
「理由……ですか。」
「わざわざ魔王を召喚して、勇者に倒させる茶番をやってる理由。……話してくれたりする?」
なるべく軽い感じで聞いてみる。
「理由によっては、俺達は協力出来ると思うんだ。」
「協力……?」
「そう。まあ、アルドがクァンタンに心酔しているってんなら、無理だけどさ。」
しばらく悩む素振りを見せた後、アルドは重々しく口を開いた。
「……あ奴が魔族である、というのは、ご存じですか?」




