表示調整
閉じる
挿絵表示切替ボタン
▼配色
▼行間
▼文字サイズ
▼メニューバー
×閉じる

ブックマークに追加しました

設定
0/400
設定を保存しました
エラーが発生しました
※文字以内
ブックマークを解除しました。

エラーが発生しました。

エラーの原因がわからない場合はヘルプセンターをご確認ください。

ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
今度の派遣先は異世界です  作者: 近江 上総
15/76

魔王と洞窟

結局、何事もなく朝を迎え、俺とバルタザールは目当ての洞窟に向かった。

昼過ぎ頃に洞窟の入り口に辿り着く。

「涼しい風が吹いてるね……。」

「きっと、中には水がながれてるよー!」

今日は外の気温が高いから、泳ぐのも気持ち良さそうだ。

水中を縄張りにしている魔物が居なかったら、泳ごうかな。

「よし……じゃあ、行こうか。」

「はーい!」

洞窟の入り口で松明に火をつけ、俺を先頭に進入する。

「足下滑るから、気を付けてね。」

「バルはだいじょぶー! 魔王さまこそ、暗いとみえづらいんだから、気をつけてねー。」

バルタザールは暗視という能力があって、明るくても暗くてもあまり視界には関係ないらしい。

だから、松明をつけたのは俺だけの為だ。

……正直、羨ましい。

片手に松明を持っていると、いざというときに剣に持ち替えるのが遅れそうだし……。

「うん。」

と、頷いたところで、頭上に気配を感じる。

ふと松明を掲げると、黒い塊が蠢いていた。

「ぅわっ!?」

思わず声をあげると、それに反応したのか、頭上の塊が羽ばたく。

元の世界で言う、コウモリに似てる---けど、でかい! 頭が拳二つ分くらいあるぞ!?

コウモリみたいなそいつらは、大きく翼を広げて、侵入者である俺達に向かってくる。

「魔王さま、走るからつかまって!」

バルタザールが後ろから俺を持ち上げて自分の背に乗せ、叫んだ。

弾みで松明を落としたが、バルタザールは構わず、脱兎のごとく洞窟の奥に向かって走る。

「魔王さまー、ナマンはしげきしちゃダメなんだよー。」

「そ、そうなんだ……。」

刺激する気じゃなかったんだけど、まぁ大声あげちゃったからな。

「しばらくすれば落ちつくから、帰るときはだいじょぶだとおもうー。」

「ご、ごめんね。」

「だいじょぶだよー。ナマンが並んで休んでるところ、初めて見るとびっくりするよねー。」

笑って言うバルタザール。

ナマンは、基本的に刺激しなければ襲ってこない魔物らしい。

ただ、襲い掛かるときは集団で来るので、厄介なのだという。

「ナマンは、入り口のとこをねどこにしてるのがほとんどだから、もういないよー。」

しばらく奥に行ったところで、バルタザールは走る速度を緩める。

「松明、落としちゃったね……。」

「もっかいつけるー? このままバルがいちばん奥まで走ってもいーけど?」

「……よし、じゃあ帰りは頑張ろうかな。」

バルタザールの好意に思いっきり甘えてみる。

「じゃあ、いこー!!」

機嫌良く走るバルタザール。

暗い中をひた走って、だいぶ経った頃、目の前が明るくなってきた。

……一番奥に光が届いてる?

天井が抜けたとか?

そうじゃないとしたら……呪文の灯りとかかな?

「あー、あっち明るいねー。」

「あそこに行こうか。……気を付けてね。」

バルタザールに注意を促す。

いかにも来てくださいといわんばかりだし、罠がある可能性が大きいからね。

「はーい。」

あまり注意してるようには見えない様子で、バルタザールは明るい場所に入った。

そこは、今までの暗さが嘘のように、見える石壁全部が明るい。

「おぉ……これ、石が光ってるのか?」

「キレイだねー。」

バルタザールから降りて石壁に触る。

……別に熱くはないな。

光っている石壁の下に、欠けたのか落ちている石があり、光っているそれを持ち上げてみると、光らなくなった。

不思議だ……。

「あ、魔王さまー! 木箱があるよー!!」

光っている部屋を見渡していたバルタザールが、木箱を見つけて騒いでいる。

「開けていいー?」

「罠があるかもしれないか……。」

俺の言葉をよそに、バルタザールは箱を投げて壊す。

……投げて壊した!?

「何を----……!」

「あー、中にアクセサリー入ってるー。きれいー!」

……どうやら、木箱は壊すので合っていたらしい。

バルタザールがネックレスのようなものを手に持って、眺めている。

そのネックレスには、大きめの赤い石がついた装飾がされていて、確かに綺麗だ。

「……だ、大丈夫?」

一応聞いてみたけど、バルタザールの様子を見るに、罠はなさそうだな。

「バル……それ、欲しい?」

「え? これ? いらなーい。」

あっさり言うバルタザール。要るならあげようと思ったけど……。

「い、要らないの?」

「だってのろわれてるからー!」

だから木箱みたいな簡単な箱の中にあったのか……?

「触ってて大丈夫なの?」

「そうびしなければ、のろわれないー。」

そういうものらしい。

「これ、もってかえる?」

「……ま、洞窟行ったのに何も戦果なしってのもなんだしね。」

「じゃああげるー。」

「ありがとう。」

ということで、俺達は呪いのネックレスを携えて、帰り道を行くのだった。

評価をするにはログインしてください。
ブックマークに追加
ブックマーク機能を使うにはログインしてください。
― 新着の感想 ―
このエピソードに感想はまだ書かれていません。
感想一覧
+注意+

特に記載なき場合、掲載されている作品はすべてフィクションであり実在の人物・団体等とは一切関係ありません。
特に記載なき場合、掲載されている作品の著作権は作者にあります(一部作品除く)。
作者以外の方による作品の引用を超える無断転載は禁止しており、行った場合、著作権法の違反となります。

この作品はリンクフリーです。ご自由にリンク(紹介)してください。
この作品はスマートフォン対応です。スマートフォンかパソコンかを自動で判別し、適切なページを表示します。

↑ページトップへ