第13話 実戦訓練
俺、コヨーテ・レヴァリアは
数日前に5歳になった。
この世界では珍しい黒髪蒼眼の少年は今、
変態の師と共に街にいる。
少年の腰には一振りの木剣、
もちろん、少年、
5歳児サイズだ、
これからこの少年、
俺だが、
待ちに待った実戦訓練が始まるところだ、
「おーい、先生!あれはなんだ?」
変態師匠、キャサリーナ・カマーに聞いた、
俺が城から出たのはこの日が初めてだからだ。
一応、俺はこの国の王子なわけだからな・・・
いままで行かせてもらえなかった
街に来れたわけだからな、
物凄くテンションが高い!
俺が街に行く件について
城でいろいろあったわけだが、
特にいろいろ言ってきたのは
シャル姉とアーシェである、
父親・レオと母親・シャーリー、
エフィ姉は心配ないと言っていたが、
シャル姉とアーシェは物凄く心配らしく
説得をするのが大変だった。
宮廷魔法使いが護衛でついていくことで
なんとか正規に街にこれたわけだ
「あれはね、魔物、クックの肉を串焼きにしたものよ」
俺がキャサリーナに聞いたのは街にある屋台の一つである。
魔物とはこの世界に住む、
魔力を体内に宿した生き物だ、
人に害をなし、冒険者は魔物を狩るのも仕事である。
魔族も魔物が進化したものと言われている・・・
「クック?」
「ええ、鳥類の魔物よ、魔物ランクはFと弱いわ、食べて行く?」
魔物ランクは、
魔物の強さを冒険者ギルドが決めたものである。
Gから始まりF、E、D、C、B、Aと強くなっていき
Sが最高ランクと呼ばれている。
「食べる!!」
キャサリーナは屋台に行き、
クックの串焼きを2本買ってきた、
「はい、コヨーテちゃん」
「ありがとう、先生」
串焼きを1本貰って、
「いただきます!」
食べた、
うん、うまい!
これでFランクか、
もっとうまい魔物もいるのかな?
俺とキャサリーナは
串焼きを食べながら、
街を歩く、
視線を集めるがそれは無視だ。
集める理由?
それは隣にいる変態だ、
まあ、しょうがない、
今回の目的は、
冒険者ギルドにある、
とうとう俺も冒険者ギルドに登録をしに行くところである、
キャサリーナが判断したからだ
5歳になり、実力もある程度ついてきたからだ
その為、剣術の練習用の木剣も腰に差している。
「もう少しで着くわよ」
少し歩くと、
大きな煉瓦造りの建物が見えた。
これこそ冒険者ギルド!というような建物で
その建物の周りには武器を持った冒険者らしき人たちがいる、
「あれが冒険者ギルドか」
「ええ、あれが冒険者ギルド・レヴァリア支部よ」
「さあ、いきましょう」
キャサリーナが冒険者ギルドの扉を開け、入っていく、
入った瞬間、
冒険者ギルド内の視線を集める、
ざわざわ、
「あ、あれは」
「あの筋肉は!」
「ひいぃぃぃぃぃぃ!!」
「ば、化け物!」
「気持ち悪!」
「うわ、現れたぞ!」
「Aランク冒険者の『変態』!?」
「『変態』だ!!」
おいおい、どれだけ有名なんだ
変態として・・・
てか、嫌われまくりだろ、
「あーら、みんな、ひ・さ・し・ぶ・り・ね♪」
パチリ、
ウインクをしたら、
「「「ひいぃぃぃぃぃぃ!!」」」
悲鳴があがった。
「どうやったら、こんだけ嫌われるんだ?」
「嫌われてなんかないわよ、さあ、冒険者登録しにいくわよ」
ギルド内には数多くの冒険者が団欒している、
食堂、
依頼を受けるためのカウンター、
そのカウンターにキャサリーナと向かった、
うん、
人がキャサリーナを避けていく・・・
「マ・リ・エちゃん、久しぶりね」
キャサリーナが受付の人に話しかけた、
「ええ、久しぶりですね、キャサリーナさん」
マリエという名前の
受付の人はかなり美人で黒に青がかかった色の髪、
藍色ってやつだ、
黒に近いってだけで親近感がわく、
「今日はどのような用で」
マリエさんは接客笑顔で聞いてきた。
「今日は、わ・た・しの弟子のギルド登録してもらおうとね」
「弟子ですか・・・」
「ええ、この子よ」
キャサリーナは俺を指さして
マリエに紹介した。
「・・・・この子、どこからさらってきたんですか!?」
誘拐犯扱いされてやがる。
「ちがーーーうわよ、本当に私の弟子よ」
「こんな小さい子が!?何歳なんですか?」
「5歳よ」
「・・・・・本当にさらってきたわけじゃあないんですね」
「・・・ええ、少しは信用しなさいよ・・・」
「で、この子の冒険者登録でよかったんですか」
「ええ」
「でも、本当に大丈夫なんですか、5歳で登録は早すぎると思いますが・・・」
「大丈夫よ、この子、コヨーテちゃんは自慢の弟子だからね」
「でも・・・・」
「そこまで、信用がないとは・・・・なら、この子の実力を教えればいいのかしら」
「それは・・・」
「決まりね、聞いてたかしらコヨーテちゃん」
「ああ、聞いていた、なにで実力を示せばいいんだ」
「そーねぇ、うーん」
と、キャサリーナは周りを見渡して、
「そうね!冒険者たちと戦ってもらいましょうか、」
「5歳の子を戦わせるのですか!?」
「大丈夫よ」
キャサリーナは周りの冒険者に言った。
「私から依頼を出すわ、依頼のCランク程度の報酬で、内容はこの私の弟子との模擬戦よ」
キャサリーナは俺を指さし
「この子よ」
「「「おお!!」」」
Aランク冒険者キャサリーナの言葉に多くの冒険者が反応した。
「この餓鬼との模擬戦で報酬がCランク分もらえるのか!?」
「こんな楽な依頼受けるしかないわねえ」
「俺が受けるぜ」
「いや、俺が」
「私が」
冒険者たちが騒ぎ始めた。
「そうねぇ、どの子がいいかしらねぇ」
周りを見渡した、
キャサリーナの視線を食らい、
人が少し減った気がした・・・
「あの子がいいかしらねえ」
キラリ
とキャサリーナの目が光った気がした。
気持ち悪っ!
キャサリーナは一人の冒険者を指さした。
「あ、あの人ですか!?」
マリエさんが驚いている。
俺は指さした人を見た、
そこには剣を腰に差した茶色の髪を短く切っている青年がいた。
「なに、マリエ、あの子有名なの?」
「最近話題のルーキーの一人よ、実力は確かで、わずか数か月でランクDまで上がった人よ」
「へえ、コヨーテちゃん、あの子があなたの相手よ」
キャサリーナはそういい、青年のほうに近づいた、
「ねえ、あなたが私の依頼を受けてみない」
「俺が!?」
青年は驚いた顔をした。
「そう、あなた話題のルーキーの一人らしいし、私の弟子の強さを知るいい機会だし」
青年の顔に近づき
「どう?受けてみない?」
キャサリーナの依頼に対し、
青年は
「わかりました」
依頼を受けたが条件を付けてきた。
「でも、俺が弟子さんに勝った場合に報酬をもらうってことなら」
「ええ、いいわよ~」
冒険者になるための対戦相手が決まった。
「弟子に勝った場合って」
「あれじゃあ、勝って当然だろ・・・」
「そうよね」
「いいなあ」
「ルーキーだからって」
外野がうるさいが俺は青年冒険者との模擬戦が決まった。
冒険者になるための実力をしめす模擬戦だ、
「さあ、始めましょう、マリエ、ギルド内にある訓練所を借りるわよ」
「え、ええ、いいですけど・・・・・本当にやるんですか・・・」
「当たり前よ」
「はあ、わかりました、ついでにギルドマスターも呼んできます」
ギルド内にある訓練所で模擬戦をやるため
ギルドの奥に進む、
〈マリエ〉
コンコン
ギルド内にある豪華な扉をたたいた、
「どうぞ」
扉の部屋から渋めの声がした
「マリエです、入ります」
私は扉を開き中に入った。
「おお、マリエかどうしたんだ」
私の前には一人の男がいる
冒険者ギルド内では珍しい
正装、タキシード姿だ
銀色の短髪、
歳は50代ぐらいの中年男性だ
この人こそ
冒険者ギルド・レヴァリア支部の
ギルドマスター
ガイウス・オルフェスだ
ギルドマスターとは
冒険者ギルドの代表であり、
その役職に就くには、
冒険者としてのかなりの経歴がいる、
まあ、そんなことを説明いているわけじゃない
「大変です!ギルドマスター、キャサリーナさんが来てます!?」
「なに!あの『変態』は今度何をしたんだ」
「今回は弟子を登録に来たらしいのですが・・・・・」
「弟子?あいつに弟子!?」
「ええ、いろいろあって模擬戦になりまして・・・」
「・・・どうなったらそうなるんだ・・・」
「まあ、その模擬戦をギルドマスターに見てほしくて呼びに来ました」
「はあ、わかった、すぐに行こう、」
マリエとガイウスは部屋をでて訓練所に向かった。
〈コヨーテ・レヴァリア〉
訓練所は城にあるのと同等の広さであった。
「で、キャサリーナさん、俺はこの子と模擬戦をすればいいのか」
「ええ、」
「本当にいいのか、」
「大丈夫よ、この子は私の弟子だもの、ねえコヨーテよ」
「ああ」
「そうか、ではコヨーテ、俺はハルトだ」
剣を腰に差した青年はハルトと名乗った。
「ハル~トちゃんねぇ、可愛い名前ねえ」
「ハルトか、よろしく頼む」
お互いに挨拶をした。
「じゃあ、挨拶も終わったことだし・・・始めましょうか」
「剣は木剣のほうがいいよな?」
ハルトの問いに対し俺は
「真剣で構わない」
「けがをしても知らないぞ」
と、俺とハルトはお互いに距離をとった。
「コヨーテとDランク冒険者ハルトの模擬戦を始める、双方構え!」
ハルトは腰の剣を抜き、構えた
それに対し俺はこぶしを構えた。
「どういうつもりだ」
「こういうつもりだ」
「はじめ!!」
キャサリーナの声と共に模擬戦が始まった。
まずは、
「風よ、集まり、我が足に風の加護を」
エンチャント魔法によるスピードアップだ
「【ウインドエンチャント】さらに【戦いの歌】の重ね掛けだ」
俺の体を魔法によって強化する
「行くぞ、ハルト!!」
「こい!!」
無詠唱の
「【グランドボール】×5」
土でできた球がハルトを襲う、
「こ、これは魔法かい」
ハルトは剣で【グランドボール】でできた土球を切り裂く
だがこれでいい、
この魔法はいわば弾幕、目隠しだ
「やるじゃないか、本当に5歳かい」
切り裂いている瞬間に俺は
エンチャントと強化した足で
ハルトの懐に入る、
そして右手をハルトの耳に近づけ、
「火よ、鳴り響け」
指を鳴らす
パチン
「【クラッカー】」
バン!!
大きな音が鳴り響いた。
火属性下級魔法
【クラッカー】だ、
効果はただ爆音を鳴らすだけだが、
耳の近くですれば、
効果は絶大だ。
「こ、この魔法は!?」
ハルトは爆音で怯んだ
そこに俺は
「雷よ、痺れさせよ」
左手の掌底と共に呪文を叩き込む!
「【スタンショック】」
バチチ
「ぐっは!?」
雷を纏った掌底を食らったハルトは地に落ちた
うん、気絶している、
油断しているからそうなるわけだな・・・
「勝者!コヨーテちゃん」
キャサリーナの声と共に俺の模擬戦は終わった、
「こ、この強さはなんだ!キャサリーナ!!」
銀髪の中年男性が叫んでいる。
また厄介事か・・・
まあ、俺のせいだよなあ・・・