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ボツペンっ!③

題名

しあわせな天使(未完)


────────────────────


 あるところに半人前の天使が居ました。


 半人前の天使は、早く一人前になるために毎日勉強を重ねていました。


 そんなある日、天使は神様に呼び出され、神様の待つ神殿へと向かうことになりました。



「神様、今日は一体私にどのようなご用件でしょうか?」


「用と言うのは他でもない。今日はこれからお前に正式な天使になるためのテストを受けてきてもらいたいのだ」


 神様の言葉に天使は一瞬言葉を失いましたが、その意味を理解した天使は、その場で飛び上がりたいほど嬉しい気持ちでいっぱいになりました。


「ほ、本当ですか!? そ、それでそのテストと言うのは……」


「なに、テストと言っても難しいことではない。お前にはこれから下界へ降りてもらい、そこで不幸な者たちに幸せを与えてもらいたいのだ」

 神様は真っ白なあごひげを指先でつまむように撫でながら、天使に向かって優しくそう言いました。


「不幸な者に幸せを……ですか」

 天使は少し不思議そうに首を傾げ、神様の言葉を繰り返しました。


「そうだ。もしお前がこのテストを成し遂げることが出来たなら、お前を一人前の天使として認めよう」

 そう言って神様は、顔中を皺だらけにしながらにっこりと微笑みました。


「わかりました! そのテスト必ず合格してみせます」

 天使はそう意気込むと、神様に向かって深々とお辞儀をして、早速下界へと飛び立ちました。



 下界へ降りて天使が最初に目にしたものは、丘の上にぽつんと佇む小さな木造の家でした。


 天使はひゅるりと窓から風のように家の中へと入り込むと、そこはどうやら子供部屋のようでクレヨンやビー玉などが所々床に散らばっており、人の気配はありませんでした。


 しかし、天使が辺りを見回しているとどこからか声が聞こえてきました。


「そこに居るのは、だれ?」


 声のする方へ天使が目をやると、つぎはぎだらけのシーツが敷いてあるベッド上に可愛らしい少女の形をしたぬいぐるみが置いてあるのが目に留まりました。


「僕は半人前の天使、不幸な人に幸せを与えるためにやってきたんだ。君が……僕を呼んだのかい?」

 天使がそう尋ねるとベッドの上の人形はそうよ、とまた声を上げました。


「突然驚かせてしまって、ごめんよ。この世界に降りてきてちょうどこの家が目に入ったものだから」

 少し照れくさそうに天使は頭の後ろを掻きました。すると、人形は少しだけ寂しそうにこう言いました。


「いいのよ、私今は目が見えないから」


 その言葉に天使は顔を上げ、人形の顔をよく見てみると人形の両目には大きさも色も違う洋服のボタンが粗末に縫い合わされていました。


「私の前の持ち主はちょっと乱暴な子でね、人形をあまり大事に扱わなかったのよ。それである日、ちょっとした拍子に目が取れてしまった私を簡単に道端に捨ててしまったの……。でも、そんな私を拾ってくれたのが今の持ち主なのよ」


 人形はどこか懐かしいような、悲しいような調子で話しました。


 天使はその話を聞いて、自分の魔法で人形の目を治してあげられるのではないかと思いつきました。そしてそれは神様からのテストに合格することにも繋がるのではないかとも思ったのです。


「ねぇ、僕の魔法で君の目を元通りにしてあげることも出来るんだけど……やってみないかい?」

 天使がそう言うと人形はえっと小さく声を上げ、それから少しの間、人形は考え込むように黙っていました。


「……嬉しいお話だけど、止めておくわ。私の持ち主、まだ小さな女の子なのにこのボタンもお洋服も一周懸命作って付けてくれたのよ。だから、内緒で勝手に目を新しくしたらあの子に悪いじゃない?」

 人形はそう言ってふふっと笑うと、続けてこう言いました。


「確かに目は見えなくなってしまったけれど、私、今が一番幸せよ」


 その言葉に天使は少しだけ残念な気持ちになりましたが、満面の笑みで人形に微笑みかけました。


「そうですか。それなら良いんです、これからもお元気で」


 そう言って天使は人形に向かってお辞儀をすると、背中の小さな羽を羽ばたかせ、ゆっくりと浮かび上がりました。


「それじゃあ、また」


「ええ、あなたとお話出来て楽しかったわ。お元気で」


 二人は最後にそう言葉を交わすと、天使は再び窓をすり抜けて外へと飛び立って行きました。



 それからしばらく飛んでいると、今度は庭の椅子にゆったりと腰掛ける老人が目に留まりました。


 天使はゆっくりと老人の前に降り立って行き、声をかけました。


「こんにちは、おじいさん」


 しかし、おじいさんは椅子に座ってぼんやりと遠くの景色を眺めたまま少しも動く気配はありませんでした。すると、天使の足元で誰かが言いました。


「ダメダメ、じいさんは目も耳も遠いんだ。喋るならもっと大きな声にしなきゃ」


 その声を聞いて天使が足元を見ると、そこには羽に包帯を巻いたツバメがいました。


「君はこのおじいさんの知り合いなの?」


 天使が不思議そうに聞くと、ツバメは少し考えたような素振りを見せました。


「このじいさんは、昔俺が羽を怪我して飛べなくなっちまった時に介抱してくれたのさ。まぁ、命の恩人ってやつだね」


「そうなんだ。それで君は今も空を飛べないのかい……?」


 天使は羽に巻かれた包帯を見ながら、おずおずとそう尋ねると、ツバメは少しだけ寂しそうな顔をしました。


「まぁな。これでも大分良くはなったが、空を自由に飛べる程じゃない。きっと一生、この傷は治らないだろうな」


 そう言ってツバメは自分の羽をぎこちなく動かして、へへっと笑いました。しかし、その言葉にピンときた天使はすぐさまツバメにこう言いました。


「ねぇ、もしかしたら僕の魔法で君の羽を治してあげることが出来るかもしれないよ」


 天使の言葉にツバメは驚いたように天使の顔を見上げしばらく動かないでいましたが、やがてその表情を曇らせて、おじいさんの方をちらりと見ました。


「そうか……。そいつぁ、嬉しい申し出だけど遠慮しておくよ。今さら羽が治ったところで、俺ももういい年だ。遠くまで旅をする体力も気力も残っちゃいないのさ」


 ツバメはそう言うと天使の方へ向き直り、再び口を開きました。


「それに、俺が居なくなったらこのじいさんは本当にひとりぼっちになっちまうからな」


「そうですか……」

天使は残念そうに眉をひそめると、ツバメは天使に向かって優しく声をかけました。


「あんたの気持ちは本当に嬉しいけどよ……まぁ、なんだかんだ言って俺は今の生活に満足してるってことさ。あんたに聞かれて初めてそう思ったよ」


「……おや、そこにお友達でも居るのかい?」


 ふいにおじいさんがツバメの方へ視線を向けると、柔らかい声でそう言いました。ツバメは最後に天使に向かってニコッと笑うと、傷ついた羽を一生懸命羽ばたかせ、おじいさんの膝の上にピョコンと飛び乗りました。


「またいつでも遊びに来いよ、待ってるからな」


 天使はツバメの言葉にこくりと頷き、おじいさんが優しくツバメの頭を撫でているのを見届けながら、また新たな出会いを求めて飛び立って行きました。




 次に天使がやってきたのは、街を見下ろせる高台にある大きくて豪華なお屋敷でした。


 天使は物珍しそうに辺りをキョロキョロと伺いながら、窓をすり抜けて中へと入って行きました。


「一体どういうことなんだッ!!」


 突然、部屋中に響き渡る怒鳴り声に飛び上がりそうになりながらも、天使は、そろそろと声のする方へ向かって行きました。


 ドアを抜けて隣の部屋に行くと、そこには髭を生やし、派手な色のスーツを着た、でっぷりと太った中年の男が居ました。男は受話器を握り締めながら、電話口に向かって大きな声で怒鳴りちらしています。


「お前が必ず儲かるというから、ワシはお前達に出資してやったのだぞ! それが今になって事業に失敗したとはどういうことなんだ!!」


 男は天使が部屋に入って来たことにも気がつかない様子で、しばらく電話に向かって叫び続けていましたが、やがて諦めたのか疲れてしまったのか受話器を叩きつけるように置くと、部屋の隅にぽつりと立つ天使を見つけました。


「……な、なんだお前は?」


「あの、私は半人前の天使です。不幸な方を幸せにするためにこの世界へとやって来ました」


 そう言って天使は少し引きつったような笑みを浮かべましたが、男は苦虫を噛み潰したような表情のまま、天使をじろじろと見ていました。


「そうか……確かに今、ワシはとんでもない損害を出して不幸になっておる。もしお前の言葉が本当ならワシを幸せにしてみせろ」


 男の言葉に天使はこくんと頷くと、目を閉じて何かを呟き始めました。そして天使がゆっくりと両手を前に差し出すと、その手のひらの上にはたくさんの金貨が乗っていました。


「おぉ! なんと素晴らしい。もっとだ、金貨をもっと出してくれ」


 男は目を大きく見開くと、天使の手の中にある金貨をひったくるように鷲掴みにしました。


「それが……私はまだ半人前の天使なので、これ以上の金貨は出せないのです」


 天使が肩を落としておずおずとそう言うと、男の顔はみるみる内に紅潮しました。


「なんだと!? たったこれっぽっちの金貨ではワシの失った財産には何の足しにもならんわ! 何が人を幸せにするだ、馬鹿にしおって! ええぃ、気分が悪い。お前の顔など二度と見たくない。とっとと出て行け!」


 そう怒鳴りつけると、男は天使を手で払いのけるように部屋から追い出しました。


 天使は慌てふためいたように外へ飛び出すと、そのままフワフワと浮かび天界へ戻ることにしました。






《了》


────────────────────



ボツ作品三作目。


この作品は、以前なろう内で行われた「冬の童話祭2015」という企画にエントリーしようと書き始めたものです。


こちらも途中で放り出してしまいましたが、一応ここから最後までのプロットは出来てはいました。「本当の幸せとはなんぞや〜」みたいな話ですね。


それでも最後まで書ききれなかった理由としては、オチがあまりしっくり来なかったというのもありますが、話が全体的にクサくなってしまったかなという個人的な羞恥心が一番の原因かもしれません。笑


初めて書く《童話》というジャンルにとらわれ過ぎて、少しガチガチになってしまった感が強い作品でした。


今まで自分の中で


「童話=教訓やメッセージ性のある話」


みたいなイメージが強かったので、なんとかそう言ったものを含ませようと書いていたのですが、書いてる途中で、今まで自分が読んできた童話の中には必ずしもそうじゃないものも沢山あったよなぁ〜と思い始めて、急にモチベーションが落ちてしまったことを覚えています(^^;;



でもまあ、やっぱり自分は好き勝手自由に書く方が書いてて楽しいな〜と改めて実感させてもらえたので、思い入れのある作品ですね。






──閑話休題。





これまで、ボツペンっ!①・②と投稿させてもらいましたが、皆様から本当に貴重なアイデアやアドバイスを頂くことが出来ました。


ここで改めてお礼申し上げますm(_ _)m


本当はここで次回予告と行きたい所だったのですが、ボツ作品の中からこれは手直しすればイケるんじゃないか?!という作品もいくつか発掘されましたので、手直しが終わり次第、今後は「タンペンっ!」の方もちょこちょこと更新していく予定です。


「ボツペンっ!」は、また良いボツ作品(?)が産まれる度に不定期でやっていこうかと思います。



そんな訳で、次回からはまたいつものくだらないダラダラした独り言を垂れ流していくかと思います。はい。笑



それでは、今日はこの辺で。

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