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九尾の孫 【絆の章】 (2)  作者: 猫屋大吉
9/22

覚醒

優子の力、ついにその力が実用される時が来た。

優子は 修行棟に居た。

傍らに優介がいる。

順子さんが 鍵盤を叩いて音を継ぐんで行く。

あれから、進歩しない。

苛立ちだけが募って行く。

優介に言うが 地味だが訓練しかないと言われた。

進歩の無い苦しみを 誰も解ってはくれない。

心の闇だけが 増殖して行く・・・・



「私も気分転換しよっかなー」優子が言う。

「風呂か?」優介が言う。

「買物した〜い。食べ歩きしたい。優介、連れてって〜、あっ高山でお肉食べようよ」

「今度の日曜な、此処に居るみんなで行こうな」

「ダメ〜、今から行く〜、イライラが溜まっちゃうよ〜」

「俺は、今から分家の人達とミーティングがあるから、絶対、無理だ」

「やだ、やだ、やだ」

「あらあら、優子ちゃんどうしたの」

順子さんが聞くと

「順さんと行こう! 順さん 買物と食歩きしに行こう!」

「気分転換したいらしくって」

優介が説明すると

「私なら空いてるわよ」

「さっすが〜、順さん」優子が抱き着く。

「じゃ、行こ、行こ。優介なんて頼んでも連れてって上げないもんね〜、」

「順子さん すいません。御願いします」

優介が 頭を下げる。




優介と分家、数名のミーティングが 終盤に差し掛かった時、中司家に一本の電話が入った。

順子さんからだった。「優子ちゃんが 居ないの」悲痛な声で電話を掛けて来た。

電話口に出た 斎藤さんは、側に居た 服部洋介に伝える。

洋介は 優介に伝える為、廊下を走った。

優介と洋介が電話口に走って来た。

福井和正も二人を追いかけて来る。

斎藤さんが、優介に代わる。

「今、何処に」

「高山です。駅の側です。探したんですが どこにも、ごめんなさい、ごめんなさい。もう一回探して来ます」

電話の向こうで、涙声になっている。

「すぐに行きます。駐車場とかも見に行って下さい」

電話を斎藤さんに渡し、優介が家を飛び出し車に向かって走って行く。

洋介も後を追う。

異変に気付き和正も後を追い掛ける。

優介が GT500に火を入れた。

2人が崩れ込む様に乗り込んで来た。

V6 スーパーチャージャーが唸りを上げた。

暖気をしている暇等無い。

後輪を滑らせながら加速して行く。

正門を抜けて森へ突き刺さる様に加速して行く。

GT500は、滑る雪道を推進トルクで前に出て行く。

国道の舗装路に入った。

後輪が路面を掴む。

排気音が吠える。

更に加速をして山道を駆ける。

光の筋だけが追いかけて行く。


連絡があってから1時間程が 過ぎようとしていた。

高いスキッド音を伴い高山の駅前に滑り込んで来た。

洋介の携帯が鳴る。

「妻からだ。何処に居る」

「優子ちゃんを守ろうとする人達と何か化物が戦ってるの、・・城跡に直ぐ来て!」

「優介、城跡だ。急げ」陽介が叫ぶ

再び、スキッド音と共にGT500は、橋を越え直進すると右手のスロープを登って行く。

クラクションを鳴らし歩行者に警告する。

車止めの手前で停車した。

中から3人が転げる様に出て坂を上って行く。

この上だと優介が叫ぶ。

3人の視界に炎が玉になって飛んでいるのが見えた。

炎の壁も見える。

上では、妖狐達が何者かと戦って居た。

青狐が走って来た。

「洋介さん、3のタイミングで突っ込んで来てください」

「正面に獣がいます」

青狐が叫ぶ。

「1、2、今です」

大きな声で叫ぶ。

妖狐3人が 優子を庇いながら後方へ3m程、飛んだ。

優介は、呼吸を整え 結界を前方に集中した。

青い霧が化物を包んだ。

「アギャ、ギャ、ギャ」と声がした。

化物は、身体中から火花を散らしながら優介の結界に捉えられた。

相手との距離は4m程だった。

優介が近づく。

3m、2m

化物は身体のあちこちから青い炎を噴き出した。

噴き出した部分が、黒い粉になって行く。

やがて黒い粉になった化物は砂山の様になり、

風に舞って消えた。

地面には、黒い影だけが残った。


青狐が 妖狐達と優子の居る場所へ走ると 順子さんが優子の手を持って走って来た。

優介と洋介 二人も走った。

優介は優子を、洋介は、順子を其々抱き止めた。

和正が 妖狐達に挨拶した。

妖狐達の服は所々、裂けて居た。少し、ふらふらしている。

「ありがとうございます」優子が礼をする。

優介も12、3m 離れたところから礼をした。

妖狐達は その場で座りこんで肩で息をしている。

妖狐達の著しく低下した妖力を感じた優介は、

「優子、お前の力で治してやれ、今なら出来る」と言った。

「うん、やってみる。福井さん、洋介さん、順子さん、青狐君少し離れていて」優子が言い

「ちゃんと出来るかわかんないけど・・・優介少し貰うね」と言った。

オーバーザレインボーの曲を夜空に赤ペラで響かせる。

優介は、その場に座りながら タバコに火を点け、

「良い 歌だ〜」と独り言を言った。

順子は、うっとりとして聞いている。

青狐は、耳をぴくぴくさせている。

妖狐達は、何が起きるか解らなく、優子を見ている。

優子の体の周りがぼんやりと明るくなり、やがて歌がおわる。

優子は、ゆっくりと妖狐達の元へ行き、3人の手を取り 重ね合わせて自分の手でそれを挟む。

3人はビックリして優子の顔を見る。

妖気が回復して行く。

呼吸が整って来た。

傷が、治って行く。

衣服が元に戻って行く。

逆戻しするかの様にゆっくりと修復されて行く。

妖狐達は、お互いを見て、

「何て力 ありがとう」

「ありがとう もう大丈夫です」

「スゲェな ありがとう」

3人の妖狐から礼をされた優子は、照れながら

「上手くいったよ。優介」

「その戻した妖気は、此方の霊力を借りました」

と 座ってタバコを吸っている優介を指差す。

「そんな事が出来るんですか、凄いですね」妖狐の一人、白禅が言った。

「まだ、内緒において下さい」優介が言った。

理由を理解した妖狐達は、無言で頷いた。

「行こうか」優介が言う。

「何か、お腹すいた~。みんなで食べに行こうよ」優子が言う。

福井和正が笑う。

服部洋介が微笑みながら順子を見る。

服部順子は、涙を拭きながら笑う。

優介が 噴き出す。

白禅は、口を押えて笑う。

白隙が、声を上げて明るく笑う。

白愁牙が、俯きながら横を向き笑う。

青狐は、飛び跳ねながら笑っている。


国道沿いのファミレスの駐車場に着いた。

服部洋介が、妖狐達に何やら渡している。

封書である。表に【結】と書いてある。

「これは、時間を掛けて効力を3倍程度上げてあります。各一封づつあります。当主から預かっていたんですが、中々、御逢い出来ませんでしたのでこの場で御渡しします」洋介が言う。

「こんな大切な物、我々ごときが頂いても良いのですか」白禅が言う。

他の二人が頷く。

「現にこうやって優子さんを守って呉れたではありませんか」

「・・・ギリギリでした・・・御恥ずかしい」白禅が照れる。

「其れを持っていれば、優介に2m前後ぐらいは、近づけますよ」洋介が言った。

「さぁ、行きましょう、【姫】達が御待ちだ」笑いながら洋介が促すと、

「【姫】か、こりゃ良いや」白隙が笑う。

「ほんと、良く言ったもんだ。【姫】様だね~」くすくすと笑いながら白愁牙もファミレスへ入って行く。

テーブルは、通路を挟んで向かいに用意されていた。

優介は、窓際でタバコを吸いながら外を眺めて考え事をしていた。

優子は、通路に出て4人の前に立ち、

「おそーい、早く注文しなさい」、とほっぺたを膨らませながらメニューを差し出した。

腹が減って、気が立ってる様だ。

「畏まりました。【姫】様」白禅が言う。

他の3人と洋介が、笑う。

「何それ?」

「これからは、そう呼ぼうとさっき決まったんですよ」洋介が言うと

「なんで?」優子が言う。

「あの様な力、神々しくって今まで見たいに【嬢】ちゃんって呼べないからさ」白隙が言う。

「ふーん、神々しいんだ。この力」じっと手を見る。

「その力、ここって時だけにしとけよ」優介が言う。

「うん、わかった」

「それと、そいつらが今、【姫】って言ったってことは、後、全員の妖達からもそう呼ばれる事になるぜ」優介が言う。

「そうなんだ・・・なんでだろう・・・複雑」

「だから、お淑やかにね、【姫】」順子さんが言った。

「もぅー、順子さんまで」

食事が、運ばれて来てみんなで食べ始めた。

洋介と順子は、妖狐達と世間話をしながら、

福井のおじさんは、青狐と話をしながら、

優子は、優介に今あった事を話をしながら、

其々、思い思いに過ごしている。

「あのね、凄かったんだよ、戦い。私が下の雑貨屋で見てる時にいきなり手を掴まれて引っ張られたの。そしたら、いつからそこに居たのか解らないけど、白愁牙さんがその手を叩いて 引っ張った人を蹴っと飛ばしたんだ。カンフー映画みたいだった。かっこ良かったんだよー。それから蹴られた人が走って逃げるんだけど、白禅さんと白隙さんが、映画みたいに戦うの。回りの人は、何かのイベントかって思いながら時々、拍手したりして見てるんだけど、白愁牙さんが、私の手を引いて 駐車場に行く と言って引っ張るから一緒に走ったんだ。走ったけど、途中で追いつかれて白愁牙さんが私を庇いながら応戦してると 追いついた白禅さんと白隙さんが また そこで戦いだしたんだ。そしたらね、あの化物が現れて 白愁牙さんが、私に上に行ってと言うから夢中で走ったらあそこだったの。上での戦いは、信じられないVFXの世界みたいで、こーんな火の玉が鉄砲みたいにバンバンバンって出たり、両手に火を纏って打ち合ったり、私の前では、白愁牙さんが 火で壁を作ってくれてた。白禅さんの炎の槍、かっこいいんだよ、~・・・」

・・・長いので以下省略。

と自分の感想を織り交ぜ、ゼスチャーを入れながら状況を一生懸命に伝えている。

優介は、不思議でならなかった。

「なぜ、俺が居ないと知っていたのか、なぜ、優子がここに来る事を知っていたのか」

ある一つの回答しか導き出せなかった。

「まさか、中司家に内通者がいる? まさかな」

考えただけで背筋が、ぞっとした。

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