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九尾の孫 【絆の章】 (2)  作者: 猫屋大吉
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力量

前ページの続きです

「最近、見慣れぬやからが、多いな」漆黒の体躯を持つ者が言った。

「この半年の間に相当な数の化け物が北に上がって来ております」赤茶色の体躯を持つ者が返す。

「おやかた様、ほれ、あそこにも見慣れぬ奴らが、おります。」茶色の体躯を持つ者が言う。

「私が、参る」赤茶が走った。

「あ、待てっ来牙!」漆黒が止めたが間に合わなかった。


迷ケまよがたい駐車場に入って十和利山方向に向かう5人の者がいた。他の観光客からも浮いていた。

スーツを来た男、パーカーにGパン Gパンには、鎖のアクセサリー、タイトスーツの女性、野球帽を被った少年、お腹まで白いひげを伸ばした老人。

彼らは、天狐 白雲のめいを受けた4匹の狐と一匹の白澤(はくたく)。十和利山に向かう登山道を使わず、七森の方へ入って行く。


十三湖とさみなとに寄った来たのには、訳があった。

白澤達は、十三湖南部の高山稲荷神社に寄って凍次郎の居場所を聞く事が目的であったが それだけでは無い、いずれこの地に赴き、本陣を構える為の地形を知って置きたかった。

高山稲荷神社の本殿の向こう側、そうあの朱色の鳥居が、美しく乱立する明るい場所、あれこそが、妖狐のエネルギーの源に成り得ると考えたからである。京都の伏見稲荷神社と神通が通っているこの場所。神の力を授かった人間と妖の連合軍、妖の中で肝を握るのは、敵と同族の妖狐達、戦いの最中に妖気が枯渇する様な事は、全滅にもなり兼ねないと思いここ高山稲荷を尋ねた。

玉賽破の息が掛っていないかを確認し、この地を本陣とする許しを得る為に立ち寄った しかし、そこでの答えは、凍次郎に任せると言う回答しか得る事は、出来なかった。

凍次郎は、属性【水】凍砕と言う技を用いて絶対零度と言われる冷気を生み出し、叩いて壊す。こちらの連れている妖狐の属性は、【火】スーツを着たあの男は、白禅、炎の槍を使う。パーカーのこっちの男は、白隙 炎を弾丸の様に飛ばす。スーツのこの女性、白愁牙 炎の盾と陣を張る、帽子の小僧は、化ける事の出来るただの狐。 もしも、こじれたら・・・ 陸で自由に動ける【水】の属性を持つ者は、そう多くはない。拗れる訳には、ゆかぬ。この白澤、最初は、面白いと言う理由だけでこの戦い乗ってしもうたが、あの男、中司優介に惚れてしもうた。何千年も生きて来たが、あの様な男、中々いなかった、いや、出逢わなんだ。と考え事をしながら最後尾を歩いていた。

「白澤様、青狐、後ろへ、隠れろ」と白禅が言い、

「何者、いきなりとは、卑怯な」と言う。

「勝手に俺達の縄張りに入って来るんじゃねー」と来牙が言った。

「ぶっ飛ばしてやる」と白隙が 前に出ると掌に拳大の炎を作った。

来牙に放つ。

わずかに来牙の速度に追いつかない。

「速い」白隙が呟く。

来牙の速度が更に上がった。瞬間移動を繰り返している様な動きだ。

右へ、左へ、右と思えば左 

「どうする」白隙が考える

「良く見ろ、奴の周りを」白禅が後ろから声を掛ける。

来牙の動きに合わせて所々、景色が揺らいでいる。回りの草や地面に氷が付着している。

「蜃気楼、そう言う事か、冷気と地熱を使った幻術か」白隙が気づく、

白隙が炎の玉を放とうとした時、

「ばっかやろー」と言うどなり声と共に来牙が3m程吹っ飛んだ。

いや、飛んだのでは無かった、追いついた凍次郎が高速で動く来牙を殴ったのだった。

「待て と言ったろうが、この馬鹿っ、砕くぞッ」凍次郎が怒鳴った そして、にっと笑いその口の奥にある獰猛な牙を見せながら

「てめえのちんけな技なんか一瞬でそこのスーツの兄ちゃんが見抜いてたぜ、槍で縫われちまうぜ、そしてそっちの兄ちゃん、いけねえな、そんな事したらこの辺り焼畑になっちまう」

「なっ何で解った、何者だ」白隙が言った。

「その方が、凍次郎だ」白澤が言った。

白澤を見て、凍次郎が慌てて跪ずく。

「こら、てめえらも早く跪くんだよ、何ボーっとしてやがる」

「は、はい」北渡が跪き、来牙は、口の周りの血を拭いながら跪ずいた。

「御無沙汰しております。白澤様」凍次郎が言う

「久しいのぉ、立ってくれ、話も出来ぬわ ほっほっほっ」白澤が言った。

凍次郎、北渡、来牙の3人が、立ち上がった。

「白澤様も人が悪い、連絡して頂ければ伺いました物を。して天日様は、御一緒では?」

「ん、野暮用でな、儂らと違う事をしておるわい」

「この来牙と申す者の御無礼を御許しください」と頭を下げる。

ぬしが止めに入って呉れて良かったわい、儂は、てっきり戦闘になるかと心配して居ったが、ぬし、流石に義を持った天狐だのぅ、それに 強うなったのぉー、以前とは別格じゃ」

「止めて下さいよ、昔話は」凍次郎は、照れながら頭を掻く

「まぁ、昔話をしに来たのでは無い。おぉ、そうじゃ、まずは、紹介しておこう、このスーツの男、名を白禅」

「御初に御目に掛ります 白禅と申します」

「こちらが、白隙、あの別嬪さんは、白愁牙、この坊が青狐じゃ、みな白雲処の者達じゃ」

「ほう、やはり火焔の白雲殿の」凍次郎は、ニヤリと笑い、「一度、手合せした事があったな、あの火焔は、凄まじい、一瞬で灰も残らねぇ、奴は、元気か」

「はい、只今、佐渡に行っております」

白禅が答える

「なに? あの権現狸のとこか、何故」

「其れこそが、我らがぬしを訪ねた理由、単刀直入に申す、これより始まる戦いの仲間になってくださらぬか」白澤が言った。

「一寸待ってくれ、直入過ぎてさっぱりだ、・・・・ん、もしかして北に集まるあの妖共に関係があるの・で・は?」

凍次郎が答えながら、質問する。

「あれらを集めておる者こそが、敵」白澤が言い切った。

「そっちの大将は、誰になります?」

「人間、名を中司優介と申します」今度は白禅が答える。

「人間、なんと・・・中司?・・・あの中司家か、にしても白澤様が人の下に着く等、考えられぬ」

「儂だけでは無い、空狐の天日、天狐の白雲、葛城の土蜘蛛一族、天狗 五鬼継一族、同じく五鬼助一族、大蛇一族の沼御前」

「錚々(そうそう)たるメンバーだな、名前を聞いただけで震えが来る」

「まだ、少彦名命様すくなひこなのみこと武甕槌神様たけみかづちのかみ、武甕槌神様は、自分の武具を優介に貸し与えておる」

「何と、国津神のトップランカーでは ないではないか。と言う事は、国津神が総出と言う事だな。それ程の男が、何で今まで無名・・・中司の家の名に隠れてしまっていたのか、たしか俺の記憶では・・・当主は雄一郎だったよな」

「はい、その弟に御座います」白禅が答える

「現、当主は、中司家歴代5位には入る化け物と聞いているが、その弟もなのか?」

「いや、違う。我らの霊力を少々、上回る程度でしょうな、ほっほっほっ」

「ますます、わからん。優介と言う男、やはり力で先に言った妖共を味方につけたのか?」

「いや、彼らが進んで言うて来おった。優介殿は、神戸で危険だから辞める様に言うておったのぉ」

「・・・・・うーん、器か、そう見るべきだろう。力の当主、器の弟か・・・ますます中司家が恐ろしくなる・・が、・・・うーん・・・。相手は、誰かは、知らぬが引き受けよう。それ程の男、むざむざ死なすに惜しい。好きに使ってくれ」

「流石ですな、その胆力、北方の牙、義のやいばいや、凍砕の凍次郎と言われるだけがあるわ、ほっほっほっ」

「話が決まったところで、今日は、泊まって行けますかな、白澤殿、それに各々方」

「ありがたい、そうさせて貰うたら嬉しいのぉ、どうも車は、好かんわい」

「場所はどこでも構わんでしょ。おい、来牙、そこの白隙の兄さんと車を高山稲荷に持ってけ」

「な、なんで俺が」来牙が言う

「俺は、構わんぜ」白隙が言う

「喧嘩両成敗、文句あるか」凍次郎が、ニッと笑う 口の端に牙が見える。

「じゃ、行こうか、氷の兄さん」と言って駐車場へ歩いて行く。

「すまんな、白隙」白禅が声を掛ける。

白隙が歩きながら後ろを振り向かずに手を挙げた。

「して何故、凍次郎、主は、十和利なんじゃ」白澤が聞く。

「最近、北に上がる妖共が多く、途中で悪さをしよるんじゃ、あの山は、特別でな、ピラミッドって人間が言ってるが、妖には、あれが妙に目立つから北に上がる目印になるのよ、あの山と恐山、いや、地蔵山を真っ直ぐ繋いで南に行くとと水戸、鹿島に行く 鹿島から富山の神通川方向に行くと尖山、これも儂らには、目立つ これが儂ら妖が北へ向かう道になる。そう言えばこの尖山もピラミッドとか言っておったな、これを外れて南へ下がると中司本家がある。丁度、真ん中で中司家に見張られておる、東と西の妖が衝突せん様にちゅう事になるな、わっはっはっはっは」凍次郎が、言った。

白澤は、中司本家が太古よりこの地に居る理由が解り、よう出来ておるわ と感心した。

「では、ここから我らの本拠地、高山稲荷に飛ぶ、おい、坊、俺に掴まれ」と凍次郎に青狐が掴まると、凍次郎が、飛んだ、上では無く、地面の下へ飛んだ。

青狐は、必死に凍次郎を掴んだ、叫ぶにも声にならない。

気が付いてふと周りを見ると朱色の鳥居がずらりと並んだ日本庭園の橋の上。

青狐は、手を離そうにも力いっぱい掴んでいたから痺れて指が動かなかった。

次々と橋の上に現れる仲間を見て安心し、気を失ってしまった。



高山稲荷神社:

京都の伏見稲荷と同じ祭神で宇迦之御魂神うかのみたまのかみである。

青森県五所川原市の北北西に位置し、十三湖の南南西、七里長浜に面した丘にある。長い階段を上ると本殿があり、狐様と石を祀っている。ぐるりと山を回り込むと池と龍神宮、その左手に龍の様に紆余曲折しながら丘の上まで続く朱色の夥しい数の鳥居が並んでいる。丘の上には、また夥しい数の石工された稲荷が並んでいる。

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