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九尾の孫 【絆の章】 (2)  作者: 猫屋大吉
5/22

五行

仲間が増えていきます

その物は、縫道石山ぬいどういしやまの頂上に居た。

報告に有った様に3匹の野狐やこが回りに居る。

野狐は、其々違う方角を見て居り 時々、鼻先を上に上げたりしている。

「玉賽破様」、一匹の野狐が言う。

「何やらこの海を越えた辺りに動きがあります」

「ふん、放っておけ。どうせ要らね小物が、騒ぎ出したんだろう。国津神も手を出さん儂に小物が騒いだところで痛くも痒くもないわ」玉賽破様と言われた9本の尾を持つ金色の狐が言った。

「其れよりも どの位集まって来おった」

「およそ50は、下りますまい」と白い毛を持つ野狐が言った。

この3匹の野狐は、悪狐あこと呼ばれる妖狐達である。

この3匹が、中心となって各地から妖達を集めていた。


その頃、国道339号線を南下し、五所川原市を東へ浪岡インターから東北自動車道を青森東インターへ走りみちのく有料道路を経由して十和田湖、八甲田山をぐるりと回り込む様に七戸バイパスから国道454号線を西に向かう 白のダッジナイトロがあった。

白雲の命を受けた4匹の妖狐と白澤である。

「白澤様、戸来山の南の迷ケまよいがたいで良いんですよね。誰と御逢いになるんでしょうか?」

「凍次郎、天狐じゃ、主ら聞いておらんのか? 迷ケ平居り、十和利のピラミッドを守って居るわ」

「あの冷気妖術で有名な、凍次郎様!」

3匹は、ガタガタと震えだした。一番小さい青狐が、どうしたの?そんなに怖いの?と聞くと

3匹、口を揃えて「当たり前じゃ、一瞬で凍らされて砕かれる。怖いに決まっておろうが」

「坊」白澤は、青狐を見て言った。

「こやつ等は、白雲の手の者じゃ、白雲は、火焔を得意とする、一方、凍次郎は、凍気。灼熱と冷気、五行で言う 火と水じゃ。だから儂を連れて来おった ほっほっほッ」白澤が笑う。

「あ~、なるほど。中途半端に火を使えるから怖いってことだな、白澤様」青狐が言った。

「せ、青狐、お前、、」と一匹が、言う。「殺す」3匹が、口を揃えて言う。

「白澤様、おいらこっちの方が怖いよ」と半分 泣きながら言った。

「そろそろじゃ、十和利のピラミッドが見えて来た。」

ダッジナイトロは、迷ケ平駐車場に入って行った。


白雲は、佐渡へ団三郎狸を訪ねて来た。

団三郎狸は、越後の国(現在の新潟とされている)から佐渡へ渡った狸で変化を得意とし、現在は、相川町に二つ岩大明神として祀られている大狸であった。

今は、その何代目かに当たる権現狸と言う物に代替りしている。

属性が、金である権現狸の術は、体を丸くし、相手にぶつかる力技でその体は、非常に堅固で攻撃は、確実である。

白雲は、権現狸と古く朱色の剥げた鳥居や朽ちた無垢の木で組まれた鳥居がいくつも並ぶ二つ岩大明神の裏手で手土産にした中司家の神酒が入った瓢箪を間に置き力を貸す様に説得している。

「で、儂は、玉賽破の9本の尻尾全てに体当たりを食らわせれば良いんじゃな」

「左様になります」

「しかし、名高いぬし程の物怪もののけが、肩入れするとは、中司の二男、優介と言っておったの、それ程の男か」

「私等、まだまだ、空狐 天日様や、白澤はくたく様が ぞっこんで。そこへ来て少彦名命すくなひこなのみこと様もそうですが、武甕槌神たけみかづちのかみ様までが 武具を用意された人物に御座います」

「なんとのう」権現狸は、ため息をつきながら、

「国津神と妖の連合軍で総大将が、人とな。誠、恐ろしきは、人じゃのう」と嬉しそうに笑う。

「相解り申した。わざわざ出向いて貰うたは、土産まで貰うて断る事など出来わせぬ」

「有り難き幸せに御座います」と白雲は、礼を言い 立ち去ろうとすると

「鳥居を潜って 後ろを決して振り向かぬ事ぞ、さらばだ」と権現狸は、更に奥に消えた。

(振り向くな か、あの噂は、誠か)独り言を言い白雲は、立ち去った。




団三郎狸だんざぶろうだぬき

淡路島の芝右衛門狸、香川県の屋島の禿狸と並び、日本三名狸に数えられている。人を化かしたり、悪さをしていたが、その一方で困った人に金を置いて行く等 人情味あふれる佐渡狸の総大将であったと言われている。



二つ岩大明神:

相川市街を見渡せる橋のたもとから続く道を上って行くと鳥居が立ち並ぶ場所に着く。鳥居の数は、最初は、一つだったが 建てた者が成功した為、あやかろうと次々に建てられていった。今は、いわくが付き帰りに鳥居を振り向くと何かを連れ帰る事になると言われる、心霊スポットと成っている。




狐が一匹、中司本家の門を抜け、玄関口の土間に座っている。

青狐である。彼は妖では無く普通の狐だから結界をモノともせずに入って来れる。

御手伝いの斉藤と刈谷が、玄関口を清掃している時に狐が入って来た。

斉藤が 内線電話を掛けて優介を呼んでいる時に 狐に異変が起きた。

刈谷の見ている前で、

突然、その場で倒れたのだ。

幸い、電話中であった為、優介は、異変を知り優子と共に駆け付けた。

優子が直ぐに倒れている狐を優しく持ち上げ、両手で抱くと

狐は、「ぎゃー」と一声鳴いて優子の顔を見た。

優子が、「ごめんね また遣っちゃった」と言いながら 狐を見ると狐は、自分がどうなっていたかわからず キョトンとした目で優子を見る。

「かわいい~」狐を離さずそのまま抱きしめた。

「優子、放してやれ」と優介が言うと けち~と言いながら静かに床に降ろした。

降ろされた狐は、優介の顔を見た。

「来たタイミングが、悪かったな すまんな」優介が言うと

狐は、封書を優介に渡した。

「お前、青狐だろ。しゃべれるはずだよな」優介が言うと

「わかります? 聞かれなかったら おいら、そのまま帰ろうと思ってたんですけど」

「母ちゃんは、元気してるか?」優介が、言いながら 

そばで見て居た斉藤さんと刈谷さんに 鶏肉を少しと笹の葉を数枚 下さいと言った。

「一寸、待ってろ」と狐に言いながら狐の頭を撫でると 横から優子が、

「ずるーい、私も撫でる」と言い 小さな声で かわいいなーと言い 頭を撫でている。

暫くして お手伝いの刈谷さんが鶏肉を持って走ってきた。

優介がその袋の中に手を入れ一つを狐に食べさせると笹の葉に肉を包んで器用に繋いで行く。

「それ、何してるの」

「まぁ、見てな」

「へぇー、それで狐君の首に巻いてあげるんですね、器用貧乏だね ゆ・う・す。け」

優子がおちょくって笑う、斉藤さんと刈谷さんもわらう、

狐も笑顔を見て嬉しくなって笑い、

「かあちゃん、元気だよ。有難う 優介にいちゃん、優子姉ちゃん、それに其処の2人の人、斉藤さんと刈谷さんだよね。じゃねー」

と言い走って行った。

斉藤さんがびっくりして狐がしゃべってましたよね、今と言うと

「あー、あいつは、3年程前に病気で母子が倒れてたんで医者に連れて行っていた青狐ですよ」

と言うと

「あっ、あの時の子ぎつね君、気がつきませんでした」刈谷さんが口に手をあてて笑った。

優介は、受け取った封書をパラリと片手で振り両手で広げ、読み始めた。

「なんてかいてあるの?」優子が聞くと

「白雲からだ。火、水、金は、揃いました。後は土と木です」

「これが五行?と言う事?」優子が問う。

「万物は、5つの元素からなる と言う思想に基づいていて、上をもくとし時計回りにきんすいと循環する自然哲学の思想なんだ。この時計回りの並びを相性と言い、この円の中に五芒星を書き込むとその辺に対しての関係は、相克と言われる物になる。木は土に勝ち土は、水、水は、火、火は、金、金は、木となり循環する。これが五行。この関係を利用しようと言うのが、今回の九尾対策になっている」と優介が、説明する。

「じゃ、それがこの世の真理、みたいなー?」優子が考え始める。

「たしかに五行の発想は、良いと思う。でも俺は、真理とは、思わない。世の真理は、人が決して触れては成らない所にあると思う。優子が、真理と言った事については、この五行が、陰陽道にもあるし、神話の中でも諮詢しじゅんしてる、インドには、ヴァーストゥ・シャーストラ、中国には風水もその考えから来ている。結果として多くに取り上げられているからそう思ってしまう。多数決って言うのは、集団生活の大事な要素なんだけど、結局、人が勝手に決めた傲慢ごうまんな保守的考えから来ている物と俺は思っている。ただ、世に広まってしまっているから五行が、潜在的に頭のどこか存在してしまう。で、優子は、手っ取り早く真理等と考えてしまった」と思うよ。

「理論的なんだ、ふーん、あったま良いー、でも金儲け下手で結局、貧乏。理論的でしょ、えっへん」

人が真面目に言って結局、落ちはここか と諦め、二人で大笑いした。


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