発動
相馬優子の力とは、
中司雄一郎(中司家当主)は、中司優介、相馬優子と服部夫妻を前に座っている。
ここは、雄一郎の部屋である。
風呂を後にした雄一郎と優介は、相馬優子と服部夫妻を部屋へ招き入れた。
服部順子に感じた事を聞いた。
「優子さんが歌を歌った時の事ですよね、私の感覚では、この屋敷の波動が、一点に集まりそれが子供達に分配され彼女、優子さんに集まり彼女の生体エネルギーが、一気に3倍ぐらいまで跳ね上がった様なそんな感じでした」と答える。
「私は、1階に居た時と時が同じかはわかりませんが、突然、部屋に居た3人は、一気に力が無くなり跪いていました」と服部洋介が、言った。
「優介、解るか? 優子さんの力がどんな物か?」雄一郎が言った。
「とんでもない力だな」優介が言う。
「私?私の力が、みんなのエネルギーを吸取る力なの?」と優子は、戸惑いながら言う。
雄一郎は、優子に向き直り、
「それが、玉賽破が、君の父上を利用してまで手に入れたかった力、恐らく力の可能性のある家庭全てに何らかの形で差し出す様にしむけていると考えるのが、妥当でしょう。周りの力を集めて自分や自分以外の誰かにエネルギーを与える事の出来る力。それが優子さん、貴女の力だ。訓練しだいで貴女は、貴女の望む相手に力、エネルギーを相手に与える事が出来る。ただ、力は、善悪どちらにも使える。貴女には、これからその責任が付いて回る。力の存在と大きさに責任を持って行動しなさい。」
「私、解りません、力があるって言われても 自覚が無いんです。人のエネルギーを吸取るなんて オカルトの魔女じゃないですか、私、魔女なんですか」うつむき背を丸めて頭を左右に振っている。
「自覚しないで発動し、その正体がこれと言われたらそうなるよね」と言いながら順子が優子の背中を撫でている。
「私は、少し他に用があるから席をはずす。彼女が落ち着くまでこの部屋を自由に使えば良い」と言い残して雄一郎が部屋を後にした。
「俺は、・・・慰める言葉を知らない・・・」優介がぼそりと言った。
洋介が立ち上がり拳を強く握り締めながら
「優介君、君が彼女を守らないと行けない。優子さん、優介は君を守って来た、それは君も良く知っている事だ。力が発現したからと言って君自身は、変わらない、そこに責任が、追加されただけの事だ。その為に君はすべき事がある、それは鍛練しか存在しない。魔女だと言って落ち込むのは、構わない、だが、訓練しだいでその力は、優介を助ける力となる。きみは、私達夫婦にこう言ったよね、優介と一緒に戦いたいと。望みが叶ったと考えなさい」と言った。
「あなたっ」慌てて順子が洋介の言葉を遮ろうとした。
優子は、それを片手を突出し、制止させると
「良い、良いの 私は・・・そう、叶ったと考えれば 私、本当に優介を・・・助けたい」泣きながら叫んだ。
「優子っ」優介は、優子の両肩を持ち名前を叫び、持ち換えて優子を抱き締めた。
服部夫妻は、それを見ながら互いに顔を合わせにっこりとほほ笑み、この娘は絶対に闇に落とさせないと誓いあった。
廊下を曲がった先の応接室で一人、ソファに胡坐をかき 両手の掌を上に向けて目を瞑っていた 雄一郎は、「これで全ての駒が揃った」と呟いた。
次の日から修行棟の地下2階で優介が同席の元、優子の特訓が始まった。
地下2階と言っても本家は元々が川近くに建っているので窓があり、日は、十分に入ってくるので真っ暗には成らない。今朝早くからピアノが持ち込まれ準備が昼過ぎまで掛った為、午後3時から開始された。
優子は、準備の手伝いに積極的に参加していたが、一段落すると部屋の角で丸く蹲り 細かく震えながら訓練開始まで待っていた。
優子は、優介も初めて能力に目覚めた時ってこんなに怖かったんだろうか、じゃ、優介以上の能力を持つお兄さんは、どんなに孤独だったんだろう、私は、みんなに守られている、今度は私がみんなを助けると心が決まったのは、訓練開始の20分程前の事だった。
服部夫妻も来てくれた。妻の順子さんが、教官となってくれる。
彼女は、結婚するまでは、富山で幼稚園の先生をしていたらしい。ピアノも得意だそうだ。
彼女は、優子に能力の発動の鍵は、歌と解っているので発動を貴女自身が認識する事から始めるわよ と言い、昨日の特殊呼吸法を30分程、行ってからピアノの伴奏を入れて好きな歌を歌わせた。
色々な歌を歌った、優介の好きな歌 オーバーザレインボーを歌い出した時、いきなり発動した。
順子が、ピアノを止めた。
発動した優子が、歌を止めたが、発動した力は、暴走し始めた。
優介が、優子の元へ走る。
服部洋介が、立っていたが、崩れ落ちる。
優介が、優子を抱きしめる。
ゆっくりと力が収まっていった。
優子は、唖然として優介の胸の中に居た。
「今の何? 今のが力? 私の中に光が集まって来た」優子が言う。
「貴方っ、貴方大丈夫」と順子が走って行く。
優介と優子が顔を向けその光景を見ると倒れた洋介を順子が起こしている所だった。
優介と優子も走り寄る。
優子が、「ごめんなさい、ごめんなさい」と涙を流し謝り、洋介の胸に置かれた手に手を合わせた すると合わせた手と手が白く光り洋介が、目覚めた。
「貴方、良かった 気が付いたのね」順子が言う。
「あー、びっくりした 大丈夫、大丈夫」洋介が言いながら手を振った。
「ごめんなさい」と優子が謝ると
洋介が、「覚悟してたから大丈夫だよ、これも訓練の一つだよ」と優しく言った。
「部屋を出て隣の会議室で休憩しよう。洋介さん、順子さん、優子 何を飲む?」
優介が言うと洋介は、エスプレッソのきつい奴と笑いながら言い、順子は、オレンジに炭酸を と言い、
優子は、「私、要らない」とうつむいている。
優介は、「だめだよ、ちゃんと休憩しないと」と少し怒ったような口ぶりで言うと
「コーラ」と うつむきながら小さな声で言った。
優介は、供え付けの屋敷の内線電話で内容を御手伝いさんに伝えると 洋介に肩を貸して優子の手をとり、隣の部屋へ移動する。会議室とは、名ばかりで調度品がちゃんと誂えられた旅館の和室の様な雰囲気の部屋だった。
4人は、その畳に座り込み、5分程して茶菓子と飲み物が到着すると其々に飲み物を一口飲み、優介が洋介にタバコを差し出し洋介が1本取り、優介も1本取りライターで火を点け互いに深く吸い込んで吐き出した。
「久しぶりのタバコだ、こりゃ、やっぱり止めれないな」と洋介が言うと
「別に無理して辞めなくて良いって言ってるでしょ」と笑いながら順子が答えた。
「優子ちゃん、気にしないでね」洋介が言うと
「・・・・はい」と小さな声で言う。
「いつもそのぐらい小さな声だと良いんだけど」と優介が言うと
「ばかーー」と大きな声で優介の頭をぽかぽか叩く。
「優子ちゃんは、そうでなくっちゃ。最初から上手く出来る奴なんて見た事がないよ」
洋介が大笑いをしながら言うと
「優介の時は、どんなだったんですか」優子が、聞くと
「小学校2年の時だっけ、優介」
「・・・言いたくないっす」
「じゃ、俺、言っちゃうね。あの時は、酷い目にあった。本家、分家の連中、全員動けなくしちまった」
「えっ」優子が驚く
「屋敷全体ですか?」
「そう、平気で動けたのは、当主だけでさ、優介のおやじ達も動けなかったよな。動ける様になったのは、15分ぐらいしてからでさ、全員、当主以外ね、その場で座りこんじゃって大騒ぎ。当時当主は、まだ子供だったのに状況を判断して優介の頭を思っきり殴っただけで解除しちゃて一件落着・・・。それでみんなでどうやって優介を止めたんだって聞いたら、一言、殴った。」
洋介は、思い出したかして一人で大笑いしている。順子も優子も笑っている。
「おにいさんの時は、どうだったんでしょうね」優子が訪ねた時、
福井和正が、部屋に入って来た。
「その分だと順調みたいだな、当主から聞いてたんで気に成って寄ったんだ。ん、優介、顔が暗いぞ」笑いながら言うと
「福井のおじさん、聞いてたでしょ」優介が言った。
「おう、聞こえるわな。廊下のむこうまで聞こえる」言いながら相変わらず豪快に笑う。
「お、そうそう、当主の時は、生まれてすぐに能力を使って一人で遊んでおった。優介みたいに人に迷惑は、掛けなかったなぁ」と又、豪快に笑いながら優介の肩をバンバンと叩いた。
「嬢ちゃん、初日の感想は」和正が言うと
「発動した感じは、わかりました。止め方が解らなくて」優子が言うと
「止め方なら優介に聞けばいい」優介以外の全員が、大笑いした。
「感じがわかっただけでも大進歩だ。その感じを覚えておけば良いだけだからね」洋介が言う。
「多分、その逆が、諏訪で起こったんだろうな」優介が言うと
「おい、なんだそれ」と和正が聞く。
優介は、諏訪の一件を教えると
「無意識で逆を発動か、もしくは、引っ張られて力が、開化し易くなったかだな。・・・多分、無意識での発動じゃないだろう。とすると武甕槌神様が、ついでに玉を込めたと考えるのが妥当と見るべきじゃないか」洋介が言うと、優介、順子、和正の三人が、うんうんと頷いていた。
「おっ、もう7時前か、嬢ちゃんの特訓、今日はもう良いんだろ、食事に行こうか。」福井のおじさんの一声で全員立上がり 食堂へと移動して行った。