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九尾の孫 【絆の章】 (2)  作者: 猫屋大吉
3/22

理由

敵の場所が明らかに

そして、理由も

青森県むつ市の西部、平舘海峡に面した位置に奇勝・奇岩で有名な仏ケ浦がある。

約2kmに及ぶその稀有な景観は、歌にも詠まれている。

その仏ケ浦から少し西へ陸内へ入った所に大石沢を挟んで縫道石山と言うこれも巨大な石山として有名で東北百名山にも数えられている。

最近、この地域が騒がしい小動物達が逃げて来ると むつ市から国道 338号線を西に向かった松ケ崎の石上神社近くに住む狐から連絡があったと白雲が報告して来た。



仏ケほとけがうら

文人であり、登山家・紀行家の大町桂月が、「神のわざ 鬼の手つくり仏宇陀 人の世ならぬ処なりけり」の和歌を詠み奇観を賞した事で有名である。平舘海峡に面した峻険な海岸沿いに2キロメートル以上に亘り、奇異な形態の断崖・巨岩が連なる凝灰岩が波や風に浸食された海蝕崖地形で、奇勝によって浄土のイメージを重ねて「如来の首」「五百羅漢」「極楽浜」などの名がつけられた岩もあり、90メートルを超える断崖もある。現在、天然記念物に指定され下北半島国定公園の一部、仏ヶ浦海中公園等に指定され保護されている。



縫道石山ぬいどういしやま

オオウラヒダイワタケ(天然記念物に指定・保護されている)といわれる氷河時代からの生き残り、生きた化石と言われるコケが群生している 標高350mの岩山である。



石上神社いしがみじんじゃ

国道 338号線沿いの海に面した所に小さな鳥居が立ち、その奥に成長する石と言われる石、石神様を祀る神社で祠には、巨大な石が、縄を掛けられ祀られている。



下北半島の西端に位置する仏ケ浦から天ケ森に掛け妖が集結して来てると言う。

途中の縫道石山の山頂、平になった所で 9本の尾を持つ金色の狐とそれを囲む様に数匹の悪狐あこを見たと言う報告もある。


今、優介と優子は、岐阜の本家に居る。

神器を自宅に置いていると家電製品が壊れたり、部屋の照明が点滅したりとその症状は、日に日に酷くなって来たからだ。

「俺の力を神器が、ゆっくりと吸収していってるから」と優介は、説明していた。


優子は、本家の露天風呂に一人、浸かりながら思い出していた。

この冬、色々な事を知った。

大洗や諏訪で神の声を聞き、その技を見た。妖狐達や、土蜘蛛等の妖が、実際に居たと言う事実。

でも そんな世界でずっと、神代の時代から見て来た中司一族、その一人と出会い、愛しく思い 恋をした。その気持ちを受け止めてくれた優介に感謝している。何も出来ない自分をかばい、優しく接してくれる。これから優介が、挑もうとしている不安は、自分に伝わって来ている、何より凄いのは、その気持ちを臆面もなくさらけ出している勇気が、凄いと思う。それは、多分、仲間や、友と成っている妖達にも伝わっている。だからこそ皆が優介に命がけで尽くそうとしているんだと思う。

ゆっくりと湯の中で両手を交差しながら伸びをした。

私が好きになった人は、私達の知らない世界でこんなにも過酷な試練を生き抜いて来た人だったと今更ながら思う。「私、何が出来るだろう。何が役に立てるんだろう」と言いながら湯船を出て脱衣場に向かった。


優介と中司家当主である兄の雄一郎は、雄一郎の部屋で白雲からの報告と合わせて作戦内容を相談をしていた。

雄一郎が笑いながら

「場所は、間違いなく其処そこに居るだろう。国津神の連中が、われらの役だなと揃いも揃って言っているからだ、国津神の連中は、間違い無く居場所を知っているはずだ。その作戦は、まるっきり南総里見八犬伝だな、玉梓たまずさが玉賽破か。八犬伝は、玉藻御前を題材にされた物だから間違ってはいないとは思うが、何かが足りない」

俺もそう思っている、それがさっぱり解らない と優介が言う。

二人で頭を捻っている。

そこへ優子が、入って来た。

「優介、風呂出たよ~、はいっちゃいなよ~、悩んだ時の気分転換!」

ソファの前のテーブル横に立って優子が言った。

「兄さん、風呂行こうか」と腰を上げた。


優子は、御手伝さんや、修行中の分家の人に聞きながら屋敷をウロウロしながらようやく修行棟へ着いた。入口で服部洋介夫妻に逢い、ここに来た主旨を話す。

「優介さんと一緒に戦いたい、けど、何から始めたら良いんですか」

「優介さんか、全然、レベルが違うからな~、私らでも足手まといなんですよ」洋介が言う。

「優子さん、自分を守る術ぐらいなら何とかなるんじゃない」妻の順子さんが、言う。

「私、神器も持てないし、諏訪に行った時、立てなくなっちゃったんです」

「自分の生命エネルギーを引っ張られたのね、多分」

「それなら何とかなるかも知れない、こっちへ」

言われて優子は、後を付いて行った。夫妻は、階段を上って行く。

3階に着いた時、優子は、息を切らせていた。

夫妻は、涼しい顔をしている。

優子は、その違いに愕然とし、思い出した。

「優介は、諏訪の山奥で10m程、坂道を雪かきしてたけど息が切れて無かった」

「ここの修行が終われば貴女も3mぐらいだったら大丈夫になるわよ、この階段も苦も無く上がれる様になるし、何より体の中が、満たされてる感じになるわね」と順子さんは、言った。

「さぁ、此処よ」と言い扉を開くと

「あ、先生」と言いながら10才前後の子供達が、集まって来る。

子供達に「このお姉さんも今日から皆と一緒に修行しまーす」と順子さんが言った。

優子は、(え、ここ? 児童預かり所みたいじゃん?)とキョトンとしている。

「お姉ちゃんこっちだよ」と1人の女の子が、優子の手を持って奥へ引いていく。

「ここに座って」子供に言われるがまま座った。

順子さんが、

「優子さん、息を吐いて、吸ってー・・・違う違う、息を吸う時にお腹をぺちゃんこにして息を吐く時にお腹をぷっくらさせるの」言うと子供達みんなで、

「すーうぅーーーーぅ、はくぅーーーぅ」を繰り返しだした。

たったそれだけの動作でなにがあるんだろうと思っていると しだいに体が、ぽかぽかして来た。

しばらくすると額から汗が、浮いて来た。

「何か、暑いです」と言うと

それが、【気】と言うのが、溜まってきた証拠ですよ と微笑みながら言っている。

一時間程、言われた動作を続けていると

「優子さん、良いわよ。修行、終了」唐突に順子さんが言った。

優子は、「え、修行完了? これで神器も持てる様になったんですか?」

「うーん、まっ、多分ね。体が【気】の取込みを勝手にしてくれる様になってるはず、後は、場数」

微笑みながら順子さんが言って 今、貴女、立てないでしょ と言うので 立とうとするが、動かない。

「あ、あれれ・・・」それを見て順子さんは、笑いながら

「立てる様になったら言って」と 他の子供達と遊んでいる。

10分程して 優子が、よろよろと立ちだすと

「みなさーん、拍手」子供達が、手を叩いて喜んでくれている。

「さぁ、みんなで玄関にいくよー」と全員で玄関へ向かう。

優子は、壁や柱、階段の手すりを持ちながらゆっくりと付いて行く。

2階に着く頃には、普通に歩けるようになった。

「おねえさん、何か歌ってー」「歌ってー」と子供達が、寄って来てせがむので 最近のアニメの曲を口ずさむと「あ、俺知ってる」「わたしも」と言ったので 優子は、声量を上げ歌う。

子供達も一緒に歌う

皆で行進しながら歌っているとどんどん元気になって来た。

「優子さん、貴女、もしかして・・・、そ、そんな事ないわよね」と誤魔化して

「さぁ、みなさん、さようなら」と言い、子供達を玄関から手を振りながら送りだした。



雄一郎は、風呂に浸かりながら

「優介、お前の奥さん、凄い力を持っているな」唐突に言う。

「優子の事か、まだ 結婚してないっていってるのに」優介が隣で同じ様に浸かりながら言う。

「そうか、玉賽破、それが目的か・・・それであの親子を・・・。優介、お前の為だ、あの娘と結婚しろ、今すぐしろ」と勝手な事を言いだす。優介は、さっぱり解らなかった。雄一郎が、少し怒りながら

「あの、優子さんの歌だよ。一緒に居て気づかなかったのか」

「しょっちゅう聞いてるよ、優子のジャズ、最高に上手いんだぜ」

「そう、玉賽破は、その歌が、目当てで相馬家に取り入ったんだよ。多分、めぼしい家系に絞って何人かと契約した、印も糸もあの時に消滅して繋がりが無くなったから まだ、玉賽破は、優子さんの覚醒を知らない。この事実が、発覚する前に中司家に取り込んで諦めさせると同時に優子さんを完全な形で保護する。それが出来るのは、優介、お前だけだ」と言いながらさっさと脱衣場に消えて行く。

「力?優子に?そんな力があいつの歌に?」優介も慌てて湯船を出て後を追った。

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