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九尾の孫 【絆の章】 (2)  作者: 猫屋大吉
17/22

北上

九州は決着した。あとは、

帰路に着いた優介と優子。

土蜘蛛の胤景いんけいを説得し、みんなでフェリーで帰る事になった。

説得したのは、優子、だから説得と言う言葉は、間違いかも知れない。

来た時と同じく宮崎港から帰る事にした一行は、まず切符を手に入れる為に乗船場へ向かった。

優介と優子は、来た時と同じ特等室、妖狐の4名は、1室、後は、各2名づつで全員、1等A室

10人集は、1等B室を選んだ。

ここでも一悶着があったが優子が、強引に決めさせた。

一旦、フェリー乗り場フェリーの出航時刻は、夕方6:45 それまで3時間もあった。

切符を買っている間に優子が携帯で検索して近くのステーキハウスを予約するとその人数でしたら貸切になりますと言われ嬉しそうに妖達に自慢していたが、支払いの事でまた一悶着起きて結局、其処は胤景に押し切られた様でしぶしぶ優子、魏嬢ぎじょう両名は、承諾した。

ステーキハウスに入ると胤景が、全員に宮崎牛サーロイン300gとセットを注文し、足らなかったら同じ物でもフィレでも構わないと大判振る舞いをしていた。

2人を除く総勢18人全員が、優介を兄貴と呼び、優子を姫と呼んでいるので店のマスターが、何者なのか解らず緊張した面持ちで接待していた。

「マスター、車海老も焼いてね」優子が言うとマスターが店内を走って来て「はい、畏まりました」と姿勢を正している。着席位置が優介が一番奥となり、その横に優子、席を4つ空けて妖狐連中、魏嬢、土蜘蛛と並んでいる。マスターは、椅子を空けている意味が解らなかった。

「この横を空けておられる意味がわからないのですが」端に座っている白雲に聞くと

「我等が横に座るなど以ての外、恐れ多い」とその隣に座っている凍次郎が言う。

「あの御2方は、どういった方なんですか」

「我等のあるじ殿達じゃ」今度は、胤景の向こう側に座っている鐸閃たくせんが答える。

「若しかして組関係の方じゃないですよね」恐る恐るマスターが小声で白雲に聞く

「全然、違いますよ」と答える。

「でしょうね、あちらの女性の方なんですが雑誌で見た覚えがあるのですが」マスターが聞くと

「おい、魏嬢、マスターがお前さんを見た事があるってよ」凍次郎が言う。

「あら、嬉しい」と何時に無く色気むんむんで答える。

「あの、貴女もなんでしょうね」恐る恐る聞く

「そうよ、特に姫、だーい好き」魏嬢が言うとその横から

「あら、姐さん、私もでーす」白愁牙がこれも色気むんむんで言った。

聞けば聞く程、何者か 図り兼ねたのかそれっきり会話をして来る事は無かった。

その会話を聞きながら優介は、やっぱりファミレスにしとけば良かったと後悔する。

「みんな、呑んでるか~」優子が言うと妖達は、ジョッキを上に掲げ、

「はい、頂いております。姫」と立ち上がって答える者、座ったまま答える者とこんな調子であった。

優子が手ぶらで魏嬢と白愁牙の席へこっそり行き後ろから二人を抱きしめ「私も二人共、大大大好き~」と言っている。こうなるともう手が付けられなくなると判断した優介は、

「そろそろ出るか」と言い立ち上がる。

胤景がすかさずマスターを呼び、勘定を済ませ、玄関に近い者から順に店を出て行く。

店の駐車場に並んでいる車を見て挨拶に出たマスターは、更に驚いた。

他の店員も出て来て全員が驚き、その中をシェルビーGT500、ダッジナイトロ、シボレーコルベット、ハマーH2、ウニモグU5000の順で出て行く。

店内に戻ったマスターや店員達は、何者だったかを推理するが誰にも見当がつかない。


相変わらずフェリーの中でも飲んだり食ったりで優介は、呆れて物も言えなかった。

凍次郎は、変わらず「姫、お代わり持ってまいります」とか言いながらせっせと点数稼ぎをしている。

優介は、こいつ以外と小心者なのかと吹き出しそうになる。

これからの話になった時、凍次郎が このまま北上しましょうと言うので一行は、凍次郎の本拠地である高山稲荷神社へ向かう事になった。



高山稲荷神社で全員が集合し、十三港から一気に津軽半島を超え、平舘海峡を越え攻め入る計画を立てた。十三港の半島の反対側に蟹田港が在り、そこからむつ市脇野沢へ就航しているフェリーがある。蟹田発14:00に乗船すれば15:00には脇野沢に到着する。脇野沢からは、338号線で仏ケ浦に直接行けるが、玉賽破が地蔵山から妖気を吸収しているのでこれをまず抑える目的から338号線を東へ走り、むつ市庁舎のあるむつ市内へ行き46号線を北上し、湯野川温泉へ向かう作戦とした。

宿敵玉賽破の居る縫道石山と恐れ山の地蔵山の丁度中間位置に陣を引く事が可能になる。

縫道石山と湯野川温泉の間には、有象無象の妖達の集団が集まる天ケ森が存在する事になる。



「いよいよだね」優子が言う。

「怖い? 怖いよね、俺もどきどきしてる」優介が答える。

優介は、優子に「これまでの短い様で長い時間、一緒に居た妖達を信頼している。もちろん優子を一番、信頼している。でも何が起こるか解らない。敵も何の策も無い筈が無い。一番怖いのは、仲間との信頼が揺らぐ事が一番怖い」と言った。

優介には、懸念している事実が一つあった。

優介は考える。(中司内部に居る敵の動きが全く見えない事だ。九州の敵の応援部隊は、須佐之男神が向かってくれる。ここは、完全に壊滅するだろう。しかし、一体、誰が、中司内部の誰なんだ。可能性のある人間が思い浮かばない。もしかして、まさかな)と考えた時、ぞっとした。

車の中はエアコンディショナーで快適で有るにも関わらず寒気が襲った。

優介は「休憩するか、次のサービスエリアが良いな」と言うと

「多賀SAだね」優子が答え、白雲に電話をして伝えた。

「中司本家に寄らなくちゃいけない。停止結界【五行束縛符】が必要だ」

「大丈夫、それ、内部に居る敵に感ずかれ無いかな」優子が言い、暫く考えて、

「ねぇ、順子さんに持って来て貰うってのはどう?高山で遊ぼうって誘ってさ」

「そこまで信用できるか?」

「順子さんなら出来ると思う。だって私が行方不明になった時、涙流しながら必死に探して呉れたんだもの」と優子が力説し、「うん、大丈夫だよ」と頷きながら言う。

「そうだな、優子の能力開発も手伝ってくれたしな」優介が納得した。

「じゃ、順子さんに電話して洋介さんに御願いして貰おう。で、お兄さん、洋介さん、順子さんだけが知ってる状況になるよね」優子が言い、今日は、高山泊まりだねと呟くと携帯でメールを打ち、返信を見て、良し、と呟き、ホテルを予約した。その後、白雲に行動を伝えると

「良し、良し、これで大丈夫」と言った。



白隙、来牙は、修行を終えた。

何度も妖力を失う寸前まで行き、その度に権現狸が担ぎ、斯眼と一緒に長松寺の脇を流れる川を越え愛宕神社前を通って続石の所へ運び、薬草を与え看病した。

2人の顔付も変わった。

「中々、しっかりした顔付になったじゃねか」斯眼が言うと

「御苦労を掛けました」と白隙、来牙が感謝する。

「一応、扱える様にはなったが、まだまだ先は長いの」槃蔵が言った

「師匠、ありがとう御座いました」と又、白隙、来牙が感謝する。

「何か、人が変わったと言うか狐が変わったと言うべきか」斯眼が言うと

「言うな、斯眼。成長したんじゃよ」権現狸が言う。

槃蔵が「其れはそうと、全員、高山稲荷神社へ集合せよと先程、葉書きが届いたぞ」

と伝え、儂も行こうと全員に言う。

一行は、高山稲荷神へと向かった。



胤景は、携帯で一族に戦闘態勢を整え、京都大久保より、へ向かえ、ヘリは、第6高射群第22高射隊脇の広場に急行せよ。と伝え、三沢基地へも連絡を入れる。兼ねて打ち合わせ通り待機せよ、と伝え、大湊海上自衛隊へ巡洋艦の出撃待機命令を出す。

鐸閃たくせんも一族に戦闘態勢を整え、航空自衛隊奈良基地より、大湊航空基地へ向かえ、ヘリは、第6高射群第22高射隊脇の広場に急行。と伝えた。

軍隊の様な規律を持っていたウニモグU5000は、まさに自衛隊の車両であった。

ウニモグU5000内部でも 緊急無線により 土蜘蛛一族、至急の出動要請。

高山稲荷神社へ向かえと連絡を入れ、特殊特別突撃部隊、全員これより攻撃待機に入ると言い、迷彩服を着用した。



白禅は、白雲の顔を見て携帯を取り出し、「これより高山稲荷神社へA班を向かわせ、B、C班は、湯の川ホテルで戦闘待機せよ」と言い通話を切る。

北渡も計画通り、本拠地に半数集合し、青森市内へ半数潜伏待機せよと連絡を入れた。

魏嬢ぎじょうは、1/3を高山稲荷神社へ向かわせ、2/3を湯の川ホテルに向かわせ、「あ、そうそう、連絡係の狐ちゃん達、元気にしてる?いつも言ってるけど預かった子達だから大切扱いなさいよ。怪我なんかさせるんじゃないよ。それとあの子達も湯の川ホテルに向かわせね」と言うと通話を切った。



天日は、「白澤殿、儂らは、中司の動きを見張らぬか。儂らが動くと察知され兼ねんからのぉ」と言い、

「青狐も、母の事がある」とそのまま待機する事とした。

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