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九尾の孫 【絆の章】 (2)  作者: 猫屋大吉
10/22

陰計

優子が高山で襲われた。その訳を優介は、推理する 

「あいつ、虎とも狸とも違うかったな」

「鳴き声も風が強い日に出る音に似てヒューだっけヒョーゥだっけ、薄気味の悪い声で鳴きやがる」

「あんな奴、居たか?」

妖狐達が、話しあっている。

「尾っぽが蛇みたいに うねってた」優子が口をはさむ。

「全く、切った張ったの世界じゃねぇって、あちこちの動物を足した様な奴だった」

ん、継接ぎだらけの体、虎、狸、蛇・・・、虎は、北東、蛇は、南東・・・意味がないか、

!!!意味がない。・・・そうか、得体が知れない。それか、

「わかった。あいつが ぬえだ」

なに?って顔で優子、和正、洋介、順子、妖狐達が優介を見る。

「あっ、んーとね・・・鵺の鳴く夜は、・・なんだっけ」優子が言う。

「あれは、トラツグミの仕業じゃないかって言われてる」 と言い、

「平家物語では、得体が知れない物って言うので出て来る。確か、黒い霧状か、雲だったかを纏っていたはずだ。やつには、火は、効かない。白禅達が苦戦しても何も可笑しくはない。そんな奴を相手に1時間以上も戦って時間を稼いで呉れた事に感謝する」優介が再度、頭を下げる。

「止してくださいよ。・・・鵺、奴がそうだったのか」白禅が言う。

「鵺は、人の弱さに付け込んで【恨み】を糧として何度でも蘇る。蘇る周期は、数百年」優介が言う。

「人ってのは、色んな物を作るからねぇ」白愁牙が髪を掻き揚げながら言うと、

「今度、中司の屋敷の傍で教えて下さいよ~」と優子が白愁牙に言うと

「えっ、何をだい、姫」

立ち上がって 拳を前に伸ばして エイ、ヤッとやりながら

「これ、・・・だって白愁牙さんが戦ってるのカッコ良かったんだもん」

「白愁牙、教えてやれよー」白隙が笑いながら言う。

白禅も 教えてやれと横で言っている。

この調子で又、話が逸れて行く。

優介は、ポケットからタバコを取り出し、火を点けると深く吸い込んで吐き出す。

妖狐の白雲が率いるこいつらが警護に当たっていると知っていて【鵺】を当てて来たと言う事はないか、もし、そうなら優子の力が覚醒しているのを玉賽破は、すでに知っている可能性も否定出来なくなる。それに最初に戦ったと言う奴は、何処にも居なかった。情報を探る役だったのかも知れない。

玉賽破がこちらの手の内を知っている こちらは、奴がどうやって妖気を集めているのかすら解らない、辛うじて場所だけしか解ってはいない。情報戦だけでこちらが負けている。これでは、実際、戦闘になれば不利この上無い。酷い負け戦になってしまう。

ぶるりと身震いして優介が、

「白禅さん、白雲様に連絡が取れるか?」

「優介様、すぐですか、何か解ったんですか?」白禅が聞く。

「大至急、会いたいと伝えて欲しい」

「解りました。伝えます。場所と時間は、この青狐に連絡係りに成って貰います」



「優介さん、いらっしゃいますか」狐が一匹、中司家の玄関に座っている。

高山での戦いの翌々日の昼前の事である。

御手伝いの刈谷さんが、あらあら、青狐さん いらっしゃい と言いながら出迎える。

「こっちへ上がりなさいな」と玄関脇の応接へ狐を上げると

「今、呼んで来ますからね。何か御飲み物 用意しましょうか?」と尋ねる。

「うーん、乳が良い」と尻尾をパタパタしながら返事をする。

「少し、待ってて下さいね。呼んできますね」と応接を後にする。

2~3分程して 応接が、開き 優介が、ノートと牛乳を手にして入って来た。

「字、読書き出来るか?」

「うん、ひらがなだけど良い?」

「上等だ」

「ここに書いてくれ、くれぐれも独り言は、無しだぞ」

「・・・」狐は、頷いた。

ノートに書き始める青狐、

(ないないとのことで ばしょを していさせていただきます)

(いいよ) 優介が書く

(ばしょは いだがわのあかいけじんめいぐう)

(いつ)

(ひが にかいしずんだのち)

(あさってか)

(あさって わかんない)

(いい つづけてくれ)

(いまぐらいのときに)

(わかった)

(はくたくさま てんひさま はくうんさま とうじろう ほかもくる)

(とうじろう だれ)

(とうさいのとうじろう ゆうめいなてんこだよ はくうんさまは かえんのはくうんてよばれてる)

したり顔だ。

(ほかには)

(ごんげんだぬき しがん たろうまる ざおうまる いんけい ぎじょう)

時々、上をみながら思い出して書いていく。

(ふえたな)

(みんな いちぞくのおさ)

(それぞれ ひとりか)

(たぶんちがう つきそいをつれてる)

(わかった ありがとう)

「牛乳、でも飲んでくれ、鶏肉いるか? 母ちゃんにお土産、持って帰ってやれ」

「いつもありがとう、俺達の事大事にして呉れて」

「なぁに、良いって。お互い様だろ。困った時には、助けるさ。一寸、待ってろ」

「刈谷さん、青狐にいつもの奴、お願いします」

「あ、はーい。繋げておきますね」刈谷さんが答える。

しばらくして刈谷さんがやって来て狐の首に鶏肉を笹で包んで繋がった物を首に掛けると

「お母さん 元気にしてる? 困ったら遠慮せず言ってね」優しく声を掛ける。

狐が玄関を出て門まで優介と刈谷さんが、見送った。

優介は、踵を返して屋敷の中に入り、訓練棟へ行く。

訓練棟に着いた優介は、優子を呼び、

「声に出して読むなよ」と言い、先ほどのノートに書いて行く。

優子は、静かに頷き、優介の書く文字を読む。

(誰かに聞かれるとまずい。明後日、高山に行くふりをして富山に行く)

優子は、頷き、

「明後日、高山の牛ステーキ食べに連れてってくれるんだ。やったね。修行頑張っちゃうからね。デートだ、でぇぃとだ」と言いながらピアノの傍へ行った。

優介は、(こいつ歌、上手いけど 演技は、下手だな)と思った。



赤池神明宮:

富山市久郷にある、日枝神社に有り、武内宿弥たけうちすくなが建立し、竹内文書を代々守り続けたとされている。現在は、赤池神明宮と言う神社は存在しない。日枝神社の裏手に回ると赤池白龍満堂があり、その立ち位置から日枝神社が拝殿、赤池白龍満堂が本殿にあたる。富山県富山市山王町にある日枝神社(山王様)の末社と言う扱いになっているのかも知れない。赤池白龍満堂は、神宝を祀って来たとされている。明治初期に治水工事により赤池は、井田川に埋没している。



朝7:00に中司本家を出発した優介と優子の乗ったGT500は、飛騨清見ICから東北北陸自動車道を北上し、小矢部砺波JCTで北陸自動車道へ入り北上、庄川を越え富山西ICを降りた。

その後、41号線を右折、古沢の交差点を右折し、62号線へ侵入する。

西本郷の交差点を直進し、小さな川を2つ越えて1つ目の道を左折すると井田川沿いの土手を走る道ぶつかった。車を比較的道幅の広い所に止めると土手沿いに8台の車がすでに止まっていた。

優介は、優子に

「もう、みんな来てるぞ。急ごう」と言い、手を引いて裏へ回って行く。

狭い隙間を通り、コンクリートブロックに囲まれたところに赤池白龍満堂(赤池神明宮)があった。

そこは、優介の結界が、消滅する場所で特別な存在になっている。

優子は、初めて優介が他の妖と握手をしている貴重な現場に居合せたのだ。

白雲が、礼をする。集まった者すべても礼をしてその場に腰を下ろした。

「取敢えず、もうすでに御逢いしている方も居られるでしょうが、全員に全員を御紹介させて頂きます。

左から空狐の天日様、(おおーと声が上がる)白澤様 (又、声が上がる)続きまして 凍次郎様、太郎丸様、蔵王丸様、胤景いんけい様、魏嬢ぎじょう様、権現狸様、斯眼しがん様 そして私、白雲と申します。こちらに居られるのが、中司優介殿と相馬優子様で御座います。」

(声が上がる)

優介殿、どうぞ、

「集まり頂き、誠にありがとうございます」頭を下げる。優子も頭を下げる。

優介は、この集まった妖達に自分の懸念を打ち明ける。

「中司本家において誠に残念ながら宿敵、玉賽破に肩入れしてる者が居る可能性があります」

一同に顔を見合わせながら驚く。優子も初めて聞く衝撃の一言である。優介は、なおも続ける。

「何者なのかまだ、判明しませんが、先日、この優子が飛騨高山にて【鵺】なる物に襲撃を受けました。この【鵺】、炎の技では、倒せませんが、私が到着するまでの1時間程、白雲様の手の者達が、持ち堪えて頂きました。私の結界術によりその【鵺】は、滅する事が出来ました。が、私が優子から離れていた事、白雲様の手の者達が炎を使う者達と知って、【鵺】を当てて来た可能性があると考えた時、中司本家内部に連絡係、もしくは、指揮する者が居る可能性を察しました」

「大事の前じゃからのぉー」白澤が口を挟む。

「と言う理由から 私達は、中司家を暫し、離れようと思ったのですが、離れてしまうと逆に察知される事にもなり兼ねません。そこで、私への連絡係を青狐君専属として頂き、各々の一族で文字が理解出来る者を各々の連絡係として言葉では無く、文字、ひらがなが良いのですが、その文字のみで連絡したいと考えます」

どよめきが、あった。

しばらくして、白雲が、

「太郎丸様、蔵王丸様、胤景様、魏嬢様の一族には、すでに私共の連絡係が各部隊に2名づつ伺わせております。凍次郎様、如何でしょう、貴殿の非戦闘員を私共同様、各2名、権現狸様、斯眼様に伺わせては、私達、妖狐は、【葉書き】が、使用できます。これを使えば瞬時に文字、絵等を送る事が出来ます。これを青狐君へ送り、優介殿への連絡手段とすると言うのは?」

「構わんよ、そうするか。相互間の連絡網がこれで出来上がるのぉ」凍次郎が言う。

「ありがたい。儂らはその様な物を持っておらんからな」権現狸が言う。

「でも怖いな、あの凍砕の凍次郎の部下だぜ」斯眼が少し震えながら言う。

「安心しな、仲間である内は、襲わせねぇよ」凍次郎が言う。

「斯眼様って怖がりなんですか?」優子が聞く。

「いえ、姫様、念には念をっていいやすか」と姿勢を但し、真面目な顔で答える。

優子が笑いながら、

「みなさん、良い方達ですわ。でも【姫】って誰に聞いたんですの?」

「白雲様の部下の白隙さんが言ってました。これからは、姫って呼べって」権現狸と斯眼が口を揃えて言う。

優介が 優子の顔を見て笑う。

優子は、笑っていたが、目が笑っていなかった。

優子は、あいつか~、次、会ったら蹴り飛ばすと心に誓った。


「今後、玉賽破の近辺に此方も密偵を出すべきではないかと儂は考えた。誰か適任に心当たりないかのぉ」

白澤が言うと場がざわめきだした。

河童は無理だ。やれ伊座狸はどうだ。いや其れより と拉致があかない。

斯眼が「旧鼠だ。適任だ。あいつ良い奴だし、何より消えるのが上手い。何処にでも入れるし。おれぁ、あいつを推薦するぜ」

「ふむ、旧鼠か、成る程」白澤が頷いて、どうやって探す。

「俺ん家に居る」斯眼があっさり言った。

「えっ、貴方 猫でしょ。それがどうして鼠と一緒にいるの?」優子が質問すると、

「姫様、旧鼠は そう言う奴なんだ。鼠だけど俺達 猫族は、一目置いてる。優しくて良い奴だぜ。白澤様が良いなら頼んで見るけど、どうだい?」

「あやつ以上が 思い浮かばぬのぉ、頼めるか?」

「任せとけって」斯眼が7本の尻尾を振った。

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