手紙 【これまでのQnQnハニー】
親愛なるアネモーネへ。
15歳のお誕生日おめでとう!
ほんとにほんとにほんと〜に、おまえは私の最高傑作だ。
大きくなってくれて、お父さんは嬉しいよ!
お誕生日のプレゼントその九を贈るよ。
まずは、歌うお人形! レパートリーは二十曲! 少ないなあ? そんなことはないよ! 録音機能がある! 全二百曲まで覚えられる優れもの! 実は、お人形がたたずむステージがソーラーパネル! 太陽光さえあれば何時間でも歌い続けるんだよ!
もう一つは、薔薇の花籠! 人工素材で出来た薔薇だから、色も思いのまま! 籠にあるボタンで、今日はピンク、明日は青、金や銀など本物ではありえぬ色に花びらを染められる! 部分染めもできるぞ! 耐久性も抜群だ! 何十年もおまえの目を楽しませてくれるだろう!
このキュートな発明品たちは、実は異世界製なんだよ!
異世界文字が読めないおまえのために、手書きの取り扱い説明書をつけておいた。日常生活のちょっとした彩りに、ぜひぜひおまえの部屋に飾って欲しい。
このまえの手紙で話した通り、お父さんはまた異世界に行って来たんだ。
それは、もう……素晴らしい世界だったよ。
ありとあらゆるものが機械化されたメカ世界!
街の全てがメカ! 空気も水も灯りもメカが生み出し、どんな病気もメカが治し、メカによって人間は不老不死となっていた! うっかり死んでしまっても、メカがつくるクローン体で生き返ることもできる!
右を見ても左を見ても、ロボット、ロボット、ロボット!
超巨大蟹やら、人工有機生命体やら、超能力者も居た!
そうそう、あっちで、勇者様の為に、カスタム・ロボ執事アダム君をつくったのだった。
基本性格は、『お嬢さまとS級執事の甘い×××』の執事がモデル。
あの本を薦めてくれたおまえは、ある意味、アダム君の生みの親だ。ありがとう、アネモーネ!
アダム君は、執事としても戦闘員としてもなかなかに優秀だ。惜しむらくはドSっぷりよりもヤンデレ性が前に出たことだが、まあ、不確定要素で性格に幅ができるのは、人工生命の醍醐味ということで!
異世界の超優秀な科学者とも知り合え、向こうではたいへん充実した日々を送れた。
ちょっとしたトラブルで、戦闘もあったりしたが……まあ、終わり良ければ全て良しということで!
お父さんは勇者様の片腕として、異世界の知識と技術を勉強してきた。
まだまだまだ学びたいことは山のようにあった。
が、しかし! あちらで勉強していたいという気持ちをグッと堪えて帰って来たよ!
魔王が目覚めるのは、五十七日後。
おまえとお母さんのいる世界を守らなきゃいけないからね!
お父さんは頑張るよ!
詳しいことは書けないが、仲間のために大切な発明をしていかなくてはいけないんだ。
だから、申し訳ないが、あともう少し待ってくれ。
面会日をすっぽかしたことは、きちんと謝りに行く。
魔王を倒した後に、必ず!
お誕生日のプレゼントその十、その十一、その十二。おまえの許しが得られるまで、プレゼントを贈りたい気持ちはいっぱいだが……
おまえとお母さんの未来こそが、お父さんからの最大の贈り物。
魔王戦まで、発明に専念することにする
勇者様の旅のお供も、しばらくご辞退する。
なぁに大丈夫。私以外の仲間たちも、超優秀な方々ばかりだからね!
これが最後の手紙になるかもしれない。
だから、あらためて、もう一度言っておくよ。
アネモーネ。おまえは私の最高傑作だ。誰よりも、おまえを愛している。その次は、お母さんだ。おまえたちが、私の一番と二番だ。
お父さんは超忙しくなる。が、もしも……もしも、何かあったら、遠慮しないで、自宅かオランジュ邸に連絡を入れてくれ。
不眠不休でバテバテだろうとも、おまえのピンチとあらば、お父さんは必ず駆けつける。
中の人が眠ってても、『迷子くん』には、オート・ラン機能がある。大丈夫だよ。
聡明で美しく心優しいアネモーネ。
次におまえに逢える日を楽しみにしている。
勇者様の戦いが無事に終わることを、祈っておくれ。
それでは、また。
いずれ大発明家となるおまえの父より




