◆四つの夜◆
「あれ? ジャンヌ、どーしたの?」
扉の前で、主人が狼狽する。
突然部屋にやって来たを女勇者は、いつになく覇気が無い。意気消沈した姿が、主人をいっそう動揺させる。
「お、お茶飲む? おいしいチョコもあるよ。ジャンヌが好きなクッキーも」
「……いらない」
うつむいたままの勇者を、主人はあたふたと部屋に招きいれた。
ユーヴェは子猫の姿のまま、ソファーのクッションの上に寝そべっていた。
用なき時、我らは猫の姿をとる。猫のごとく気ままに側をうろつく我らを、主人が好むゆえ。
だが、今、姿を見せているのは無粋というもの。
未熟な光精霊に、《人間の目に映らぬ姿となれ》と命じた。
我が命に、ユーヴェが素直に従う。
紫外線制御だけに長けた光精霊は、開いた窓より注ぐ月明かりと同化した。
月明かりは、太陽光が月に反射して生まれる。微量ではあるが、奴の好む紫外線も含まれている。
《トネール様。見ててもいいんですか?》
ユーヴェの質問に、《構わぬ》と答えた。主人の命なき限り、耳目は塞がず主人と共にある。それが、しもべ精霊だ。
主人と女勇者は、ソファーに向かい合って座った。
「エスエフ界には行かないんだって?」
元気のない声で尋ねられたためか、主人の緊張が高まる。「ふぇ」と奇声をあげ、しどろもどろに説明をする。
「うん、そう。ボク、魔力切れになっちゃってさ、いっしょに行っても役に立たないし。こっちで休めって、賢者様が……その方がいいとボクも思うんだ」
「そう」
「残ってる間に、魔王戦で使う攻撃魔法でも研究しよーかなーと」
「……このまえのアレでいいんじゃない?」
低い声で勇者が言う。
「幻想世界のリッチを召喚した奴。周囲の魔族を一網打尽だったものね。アレなら100万以上のダメージは確実よ」
「あ〜、うん。そうだよねぇ」
主人が慌てて、左手の上に右手を被せる。
「あの時のクロード、凄く格好良かったわ。いつの間にか、超一流の魔術師になってたのね」
「そんなこと、ない、ない。ボクは、絆石を通してお力をお借りしただけだもん。すごいのは、ボクじゃなくってダーモットさんだよ」
えへへと、主人が笑う。
「だけど、魔王戦までまだ日があるでしょ? もっとすごい魔法が無いか調べてみる。ジョゼも修行の旅に行くし、ボクもジャンヌのためにもっと強くなりたいんだ」
隠した左手。
一昨日まで、そこには幻想世界のリッチと我が主人を繋ぐガーネットの指輪があった。
けれども、今は無い。女勇者を救う為に、主人は絆石を酷使しすぎた。敵の威圧的な気を浴び、もろくなっていた石はあえなく砕けた。
絆石を無くしたのだ、主人は二度とリッチを召喚できぬ。
その事情を賢者には伝えたものの、気弱となっている今の女勇者に話す気は無いようだ。
「ごめんね……ジャンヌがたいへんな時に、そばにいてあげられなくて」
女勇者がかぶりを振る。
「異世界に行くのは、仲間探しの為……セザールおじーちゃんの呪いを祓う為……その為のメンバーで行くべき。わかってるわ……わかってるけど、ただ、ちょっと……」
「ちょっと?」
女勇者はもう一度、更に大きくかぶりを振った。
「……ちょっとだけ、びっくりした。あんたも兄さまも、二人とも留守番だなんて……想像してもいなかったから」
そして、顔をあげ、ニッと笑う。
「しっかりね、クロード」
「ありがとう。ジャンヌも、ね……。異世界でジャンヌが一人ぼっちにならないように、いっしょに行くみんな、気をつけてくれるって。ルネさんも、その為にすごい発明品を準備してくれるみたいだよ。このまえみたいにジャンヌがさらわれても、すぐにわかる機械だって」
「え〜! それ、ちょっと不安」
さきほどまで泣きそうだった女勇者が、けらけらと笑う。
「てか、どーせなら、さらわれる前に気づく機械の方がいいなあ」
「……ほんとに気をつけてね、ジャンヌ」
主人の鼻の頭が、みるみる赤くなってゆく。
「がんばるジャンヌを助けられるよう……ボク、こっちでがんばる。強くなる。いっしょに戦いたい……ジャンヌを守りたいもの」
えっぐえっぐと泣き始めた主人を、しょうがないわねえと笑って女勇者が慰める。
涙もろい気弱な男と、保護者ぶる年下の女。
これが、この二人の常態だ。
幼い子供であった時も、魔術師と勇者となった今も、その関係は変わらない。
ユーヴェが、じっとしておれなくなっている。泣きじゃくる主人の膝の上にのって子猫の姿で慰めたいなどと……愚かな思考まで伝わってくる。
馬鹿め。獣の姿をとりすぎて、光精霊は思考まで獣化しているようだ。
我らは愛玩動物ではなく、しもべであろうに。
* * * * * *
親愛なるアネモーネへ。
15歳のお誕生日おめでとう!
15歳を祝うのは、これで八回目だったかな。
だが、おめでたいことなんだ。何度言っても良いだろ?
15歳おめでとう、アネモーネ。
おまえは私の最高傑作だ。大きくなってくれて嬉しい! お父さんは幸せだ!
お料理の腕もあがったね。ミートパイはとてもとてもとても美味しかったよ!
それから、このまえは、すまなかった。
娘との面会日に出かけてしまうなんて、ありえない。ほんとうに悪いお父さんだった。面目ない。
おまえが許してくれるのなら、百万回でも一千万回でもお父さんは頭を下げる。『迷子くん』にはオート土下座機能が搭載されている。おまえが飽きるまで、お父さんは土下座を続けるよ。
だが、アネモーネ。
すまないが、今は行けない。
知っての通り、私はおまえのおじいさまのお宅への出入りを禁止されている。
接近禁止命令も勧告されている。お母さんの半径5m以内に近づけば、牢屋にひっぱられかねない。
今、お父さんは捕まるわけにはいかないんだ。
このまえの手紙でも書いたね。
お父さんは、魔王退治の為の発明をしている。
具体的なことは明かせないが、勇者ジャンヌ様の片腕となって、崇高なお仕事をしているのだ。
魔王戦では、お父さんの発明品が大活躍するだろう。
そうとなれば、ルネ工房は『もと勇者の仲間』というブランドをゲット。
世の注目さえ浴びれば、あとは成功へまっしぐらだ。
お父さんの発明品はどれも最高なのだ、工房は間違いなく大繁盛するだろう。
その時こそ、おまえ達を……
いやいやいや。その前に謝罪だな。
魔王を倒したら、謝りに会いに行くぞ。アネモーネ。
必ず行く。ぜったいだ。約束する。
あともう少しだけ待っていておくれ。
とりあえず、お誕生日のプレゼントその八を贈っておく。
超優秀なお父さんは、賢者様に乞われ、異世界に調査研究に赴いてきた。
その時、手に入れた異世界の発明品を贈る。
『えんやこらや君』に持たせたので、どうか受け取ってほしい。
発明品には罪が無い。お父さんのことを怒っていても、発明品だけは大事に使ってくれ。お父さんからのお願いだ。
どれもキュートな発明品だ。おまえも気に入ると思う。
お父さんが特に気に入ったのはコレだ!
『おろしスプーン』!
皿状のところが、おろしがねになっている優れもの!
おろしてそのまま混ぜられる合理性!
洗い物が一つ減るお得感!
底が平らなので、手を離しても倒れない安定感!
どれも素晴らしい!
キッチンに直接立つ者でなければ思いもつかぬ発想! 女性視点の発明品だ!
アネモーネ、おまえはいつも私の発明品に感想をくれたね。
おまえの少女らしい素直な感性は、私には気づかぬことを教えてくれた。励みになっていた。早くおまえから、またアドバイスをもらえるようになりたいよ。
他にも、ウォールステッカーという壁に貼るシールと、プラスチックという素材で出来た軽くてカラフルなアクセサリーを数点贈る。
どれも、異世界の百均ショップという店で購入したものだ。
文具、雑貨、キッチン・バス用品、園芸品、工具、食料品までもが豊富な品揃えで陳列されている店だった。
専門店に行かずとも、たいていの物を購入できるシステムは実に斬新だ。
いやはや、異世界はまったくもって面白い。
明日から、お父さんは違う異世界へ行く。
戻って来たら、お誕生日のプレゼントその九を贈るよ。
楽しみに待っていておくれ。
聡明で美しく心優しいアネモーネ。
お父さんは、発明品のことを考えていない時は、いつもおまえのことばかり考えているよ。
時々でいい。勇者様の戦いが無事に終わることを、祈っておくれ。
世のため、人のため、そしてルネ工房のために、ね。
それでは、また。
いずれ大発明家となるおまえの父より
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「えんやこらや君、アネモーネの家に届けてくれ。受け取りを拒否されたら、速やかに撤退し、いつも通り聖教会のルカ神父様にお預けするんだ。こっちが、ルカ様へのお手紙だ。頼んだぞ」
「ラジャー」
面会日をすっぽかした父親を、アネモーネは未だに許してくれない。
返品された『えんやこらや君』を足しげく通わせ、手紙とプレゼントを贈り続けているものの、全て突っ返されている。
ルカ神父はお優しいお方だ。折を見て、アネモーネに胸の内を尋ね、私との仲をとりもってくださるだろうが……
とうとう、私は……
妻だけではなく、アネモーネにまで……
愛想をつかされ……
………
「いやいやいやいや! 弱気は禁物!」
落ち込んでいる暇はない!
発明アイデア書にとりかからねば!
セザール様の呪いの進行は、右肩から頸部、右腹部まで。
外皮だけではなく、該当箇所の内部、つまり、骨・筋肉・神経・血管・心臓・肺・臓器まで呪われているのだ。
その事実が判明した以上、義手だけを発明したところで無意味だ。
首から下の呪われた箇所を切除し、生命活動に支障をきたさぬよう代替品を準備せねば。
と、なれば……
「やはり、アレか……」
レビン殿とシュバルツ殿。
想像科学分野にお詳しい英雄世界の精霊から、資料は山のようにいただいた。
映像資料も、夜も寝ないで昼寝をして、たくさん拝見した。
創るべきものの、おおよそのイメージは完成している。
あと必要なのは、それを構築する技術だけなのだ。
* * * * * *
《ほんとにいいの?》
後ろ手を組み、白い幽霊が小首をかしげる。
《ぼく、行ってもいいの?》
全身が真っ白だが、仕草は子供そのものだ。
答えを待つ、おおきな白い眼がおれを見つめる。
何と言おうか……
明日から、じいちゃんに付き添っておまえも異世界に行く。女伯爵アンヌ様とのお別れは寂しいだろう、今宵は別れを惜しんで来い。
幸い、おまえの痛み止めの技が効いて、じいちゃんは眠っている。痛みを緩和する香も焚く。たぶん、おまえが付き添わなくても大丈夫だ。
今日は、好きなように過ごしてくれ。
言うべき言葉はたくさんあったが……
「……いい」
たいしたことは、口にできなかった。
「……明日から頼む」
白い幽霊が愛らしく笑う。
《ありがとう、おにーちゃん。ぼく、アンヌの所にいるから、何かあったら呼んでね》
オレンジ色のぬいぐるみゴーレムと手をつなぎ、白い幽霊は嬉しそうに部屋を出て行った。
「にしても、驚いたわねえ」
おれといっしょに幽霊を見送ったジュネが、声を潜めて尋ねてくる。
「あの子、幽霊でしょ。魂だけの存在が異世界に行って、大丈夫なの? 昇天しちゃわない?」
「……大丈夫だ」
貴族の学者が言っていた。女勇者の伴侶となる事で、あの子供の魂はこの地上に留まった。両者は深く結びついている。女勇者に同道するのであれば、異世界に移動してもその魂が散じることはない、と。
「……彼女と……いっしょだから」
「ふーん。そうなの」
それ以上の説明は求められなかった。
いつも、こうだ。勝手に察してくれる。
ジュネとの会話は楽でいい。だが、そのせいで、おれの口数がよけい減っている……ような気がする。
結局……
ジュネと一杯やることになった。
今はそれどころじゃない。じいちゃんが寝てる横で、飲めるか。
だいたい、明日の朝、おまえは北に向けて旅立つんだろうが。長旅だ。しっかり寝ておけ。バテるぞ。
言いたいことはいっぱいあったが、
「ま、ま、ま。ちょっとだけ。おじいさまを起こさないよう、静かぁにするから」
英雄世界のリンゴ酒を押し付けられてしまった。
「……冷たい」
円柱型の金属の塊。酒が入っているという器は、やけに冷えていた。
「キンキンに冷えてるでしょ? あっちでは、冷蔵庫って機械で何でも冷やすのが流行ってるのよ」
「……冷やす?」
酒を?
「お土産に、クーラーボックスって保冷箱とお酒をもらったのよ。蓋を閉めて日陰に置いとけば、四日ぐらいはよく冷えたお酒がいただけるんですって」
「……だが……こんなに冷やしては」
風味が。
「へーき、へーき。これは冷たい方が美味しくなるお酒だから」
やけに上機嫌なジュネが、開けたげる♪ と缶の飲み口を開いてくれる。
「どう?」
「……うん」
たしかに、冷たさが心地いい。
酒というより、炭酸で割った果汁のようだが。
「……飲みやすい」
「でしょー?」
ジュネが、うふふと笑う。
「保冷箱には、チーズとゼリーも入ってるの。今夜の内に、生野菜や果実も入れておいたらどうかしら? このところ、おじいさま、あまりお召し上がりになってないでしょ? 口当たりのいい冷たい料理なら、食が進むかもしれないじゃない」
「……ジュネ」
箱を貰ってきたのは、じいちゃんの為でもあったのか……。
「……ありがとう」
幼馴染がかぶりを振り、やわらかく微笑む。
「大丈夫よ。おじいさまの呪いは、きっと解けるわ」
「……うん」
そうであってほしいと……思っている。
「お元気になられたら、おじいさまと祝杯ね」
「……うん」
「アレックスも誘っていい? ルネも。学者先生や賢者さまに、アップル・ブランデーの魅力をお教えするのもいいわねえ」
飲まんだろう、あの手の男は。
祝い事にかこつけて飲ませる気か。
ジュネは性格の悪さがにじみでた顔で笑っている。獲物を獲た猫とでも言おうか。
「いっそパーティ? ジャンヌちゃんたちには、ジュースで乾杯してもらえばいいものね」
「……ああ」
「北でフロストジャイアントでも手なづけようかしら。その保冷箱ね、中の保冷剤を凍らせれば何度でも使えるのよ。デザードやおつまみを冷やすのに、使えそう。ユウくんも、いい物くれたわー♪」
「……祝賀会なら……」
一呼吸置いてから、言葉を続けた。
「……おまえのじいさんも、呼ばねば」
トマじいさんは、じいちゃんの友人だ。
だから、おれの家はガキだったジュネを預かり……
ジュネが十才で獣使い屋の徒弟になるまで、いっしょに育てられたわけだが……
今となっては、思い出したくもない過去だ。
まあ……ジュネもあのころに比べれば、つきあいやすくなったが。
「じいさまか……。オランジュ邸まで来るかしらねえ、あの人」
フンと鼻を鳴らすジュネ。
「あの偏屈ジジイ、魔王戦ギリギリまで村に居座ってそーな気がするけど」
その顔からは、先ほどまでのにこやかな笑みは消えていた。
北の村には、学校が無い。通学の為にジュネはオレの家に預けられた……と、ずっと思っていた。
だが、理由はそれだけではない。
今ではわかっている。
酔いにまかせて、『あたしは鬼子だもの』とジュネが自嘲したのは一度や二度ではない。
どう見ても女にしか見えない今のこいつが、村に馴染めないのは……当然ではあるが。
しかし、祖父との不仲は、昔からだ。
女装を始める前から、故郷は居心地の悪い場所だったようだ。
「ああ、もう。やめ、やめ。今度はこれいきましょう」
ジュネが鞄から琥珀色の瓶を取り出す。こちらはあまり冷えてなさそうだ。
「こっちは、もうちょっとお酒らしいわよ。なかなか辛口。炭酸で割ると美味しいわよ」
「……ジュネ。もう、」
「これ飲んだら、寝るわよ」
幼馴染がやけに艶っぽく笑う。
「寝しなに、あのジジイの顔、思い出したくないのよ」
「………」
「もう少し、付き合って。ね?」
何といさめるべきか考えている間に、幼馴染が栓を開けてしまう。
時々、こうだ。おれの意見を聞かず、好き勝手をする。
どうしても我慢できない時は抗うが……それ以外は、まあいいかと流してしまうんで……おれの口数は増えないんだ。
* * * * * *
月影さやかな夜。
古城の主人は、嘆息まじりに、天鵞絨台の上のものを眺めていた。
魔力をこめて生み出した魔宝石は、ひび割れ砕けてしまった。
伝わってきた敵の波動に耐え切れず、石が自ら無に戻ることを望んだが為だ。
再生の魔法も効果がなかった。
石屑となってしまったガーネットでは、もはや絆石の役は果たさない。
石を通して読めた情報――クロードの心の動き、思い、置かれている状況は、もはや何も読めず、
石を通じて魔力を送る助力もできなくなった。
不死の魔法使いダーモットは、骨そのものの白い手で赤い欠片に触れた。
火花を思わせる塊から、ゆらりと人影が現れる。
砕かれる寸前に石が見ていた映像……石の最期の記憶だ。
白銀の髪、白銀のローブの男が机の上にたたずむ。
整った顔立ちの男。
女勇者ジャンヌの師を真似たその姿は、魔力でつくられたかりそめの器だ。
眼球すらない目で、ダーモットは器に宿る存在を探った。
それは、深遠なる闇としか言い表せぬものだった。
《深き闇……一条の光すら許さぬ、非情なるもの……あらゆるものをひれ伏させる王者の格……いや、これはむしろ……神格……》
その移し身から、魔力があふれている。
つきぬ泉のごとく広がる膨大な魔力。
その魔力には、一度触れた経験があった。
《……クロードの記憶を改竄したもの……クロードと女勇者ジャンヌを襲うた存在か……》
クロードは五才の秋に、何ものかから忘却の魔法をかけられている。
その前後の記憶より、少女ジャンヌが襲われたこと、幼いクロードが雷の魔法をもって果敢に戦ったことは容易に推測できた。が、その呪を払うことはかなわなかった。
クロードに魔法をかけた術師は、ダーモット以上の魔法使い、或いは存在自体が彼よりも高位のものなのだ。
《かようなものが相手では、ひとたまりもあるまい……》
幻を消し、大魔法使いダーモットは思索に耽った。
明るく素直で、子供のように無邪気だった魔術師クロード。
逆境にあろうとも決して闘志を失わなかった、女勇者ジャンヌ。
二人との邂逅は、久々の心地よい刺激であった。
生命力あふれる二人は、不死者となる以前の記憶を呼び覚ましてくれた。
しばし髑髏の頭を傾げてから、大魔法使いダーモットは角つきの杖を左手に持ち立ち上がった。
朽ちたローブをまとったその姿は、やがて闇に飲み込まれるように消え失せ……
古城の屋根から、一匹のガーゴイルが飛び立った。
竜王デ・ルドリウの山城を目指すそれは、主人の伝言を携えていた。
きゅんきゅんハニー 第4章 《完》
第5章『女王の世界(仮題)』は現在執筆中です。
8月には連載再開を! と頑張っております。遅くとも、8月下旬にはきっと!
発表のめどがたちましたら、活動報告でお知らせします。
これからも「きゅんきゅんハニー」をどうぞよろしくお願いいたします。
7月中に新連載をはじめます。
全年齢対象作品ではありませんが、閲覧可能な方はそちらも合わせてご覧いただけると嬉しいです。
詳細は、後日活動報告でお伝えします。




