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きゅんきゅんハニー  作者: 松宮星
交錯する英雄の轍
70/236

強く、なりたい

「次元穴なんですがね……ここにありました」

 八十四代目勇者サイオンジ先輩が、地図を指差す。

 異世界の地図だ。書かれている文字も記号も、英雄世界のもの。

 だけど、読める。勇者一行には、パーティー特典として神様から自動翻訳機能がプレゼントされているから。

 先輩が指差した所には、公立高校の名前が記されていた。

「この高校の校舎の四階、とある教室の窓際に、次元穴があったんです」


「アタシたちを襲ったヤツですか?」

「はい」

「でも、アタシ、外に居たんですよ? 建物の中には入ってません」

「そうですね。アジトは、ここです。高校より南西に約三km(キロ)ですね」

 先輩の二の指が、地図の上を動く。

「あなたが敵に連れられて歩いたのは、せいぜい数百メートルでしょう。けれども、敵に異空間に封じられた時には、高校の教室に居た。ようするに、」

 先輩は地図を手にとって、アジトそばの道路と高校を順に指してから二つが重なるように地図を折り曲げた。

「こういうことです」


「移動魔法で運ばれたって事ですか?」

「違います。空間が歪められ、この高校の次元穴とあなたが居た道路が結びつけられた形で異界化したんです」

 む?

 幼馴染が、ほにゃ〜とした顔で質問する。

「敵が、ジャンヌが居た所と次元穴があった場所を魔法で切り取って、同じ異空間に放り込んだってことですか?」

「う〜ん……まあ、それでいいです。だいたい合ってます」

 クロードの笑みに、サイオンジ先輩も笑顔で応える。

 むむむ。な、なんとなく、わかった……ような気がする。

「本当は、あなたを高校まで誘導したかったのだと思いますよ。だけど、あなたは 途中で不審に思って足を止めてしまった。仕方なく、周囲を異界化して二つの場所を繋げたのでしょう」


 次元穴というのは、他次元――異世界やらその世界の別の場所やら過去やら未来やら――へと繋がる穴。

 世界に綻びがあって、よそのものが流れてきたり、よそにこっちのものが漏れてしまうわけだ。

 本来は『あってはならない』、世界の欠陥……なんだけど、あっちこっちの世界に次元穴はあるらしい。しかも、けっこうひんぱんにトラブルを起こしている。

『本を読んでたらいきなり吸い込まれて』とか『扉を開けたら跳んでた』てな転移(トリップ)は、次元穴が原因だってのが定説だし。


「ぼくは蝙蝠の案内で、この高校に行き着きました。動物たちが、あなたが消えた場所とこの高校が同じくらい嫌な場所だと気づき、獣使いさんにご注進したんです。動物の第六感があなたを救ったと言っても過言じゃない」

 サイオンジ先輩がメガネの黒縁をつまんで、クイッとかけ直す。

「ぼくが教室に入らなければ、マルタン様の降臨もなかった。現実側から次元穴を破壊する事ができず、あらゆることが手遅れとなったでしょう」

 夜の校舎に忍び込むのは、大変だったみたい。

 警備員や防犯システムは、同行していたフリフリ先輩やルネさんが大活躍して黙らせたらしい……何をやったのかちょっぴり不安だけど、話を促す為に他のことを尋ねた。


「お師匠様の偽者は、なんでアタシを次元穴と閉じ込めたんでしょう?」


「……あなたの事故死を望んだのではないかと」

 先輩が、のほほんと笑う。

 いや、もしかしたら、笑ってないのかも。真面目な話をしてるし。

 だけど、目尻が下がってて、口元がゆるんでるせいか、笑っているようにしか見えない。

「あの敵、ものすごく強いくせに、自分では手を下さなかったでしょ?」

「……はい」と、アタシ。

「ですね」と、クロード。

 あいつのせいで恐慌(テラー)になったけど、直接何かをされたわけじゃない。相手の桁外れの存在感に、下等な存在であるアタシたちが勝手に気圧されただけだし。

「きっと、直接攻撃ができない理由があるんですよ。だから、この世界の次元穴を利用した」

 メガネの奥の目は、あくまでにこやかだ……


「次元穴は、普段は閉じています。その状態であれば、周囲に騒霊現象を起こす程度。物が宙を飛んだり、怪奇な音が響いたり、閃光が広がったり、宙が発火するぐらい。ほぼ無害です」

 それ、充分、嫌な現象だと思いますよ、先輩……。

「しかし、困ったことに、強い思念や特殊な生体エネルギーを持つ人間が接近すると穴は活性化して開いてしまう。次元穴があったのは高校の教室でしたしねえ。人の出入りが多い。既に数多くの被害が出ているかも。高校設立以降の歴史を調べた方が良さそうですねえ。行方不明者だらけそうで怖いですが」

 まあそれはともかく、と先輩がのんびりとした口調で言う。


「敵は、次元穴を利用してあなたを殺害しようとした。勇者は、準神族。特殊な存在です。あなたが近づけば、次元穴は間違いなく活性化します。あなたが穴に落ちるのでもいい、穴から流れ出たものに襲われるのでもいい。次元穴に接近した為に勇者は死す……そういう筋書きだったのではないかと」



《次元穴を利用した理由はもう一点あるでしょう》

 リヒトさんが、眼鏡のブリッジを人さし指でスッと押し上げる。

《敵が次元穴では、精霊ではとどめが刺せません。精霊界の精霊には、次元の壁に関わる能力が無いからです。生まれたエリアに縛られ、異世界はおろか精霊界の他のエリアにも自力では行けなかった事からおわかりでしょうが……異次元の壁を破壊することも修正することも精霊には不可能なのです》


「的確な作戦です。頼みの綱の精霊が無力化しちゃったら、戦いようがありませんものね、ジャンヌさんは」

 にこやかな先輩勇者の言葉が、ズキン! と胸につきささる。

「……おっしゃる通りです」


「精霊以外の攻撃手段も持った方がいいですよ」

「……はい」


「あなたの敵は魔王だけではない。昨晩のアレは魔王以上にやっかいな気がします。託宣成就の旅の最中では戦闘訓練すらままならないでしょうが、状況に甘えていたら成長などありえません」

「……はい」

「千里の道も一歩から。踏み出さねば、前進はありません。勇者としての自覚をもって未来をみすえて努力してください」

「はい」


「今回生き延びられたのは、強運に次ぐ強運ゆえです。本当なら死んでたんですよ、あなた」

 う。

「あなたの義理のお兄さんや魔術師さん、獣使いさん、精霊たち。救出に関わった全ての人に感謝すべきですね」

「……ですね」

 視界の端で、幼馴染がプルプルと顔を横に振っている。お礼なんかいいよ! って。

 だけど、みんなが助けに来てくれなきゃ、アタシは死んでたわけで……。

 何もできないまま。


「ちょっと言い過ぎたみたいですね」

 サイオンジ先輩が困ったように頬を掻く。

「応援したくて、つい辛口になったようです。頑張ってほしいんですよ、あなたには。あなたが魔王戦を無事に乗り越え、幸福な未来を手に入れることが、ぼくらOB会の願いですから」

「サイオンジ先輩……」


《魔王戦まで常に警戒を怠らず、可能な限りの自衛手段をご準備ください。私の主人は、あなたを妹のように思っておられます。あなたの未来を我が事のように案じていましたよ》

「リヒトさん……」


 アタシは、ぐっと拳を握りしめた。

「頑張ります。ありがとうございます、サイオンジ先輩、リヒトさん」

 ついでにクロードにもお礼を言った。ちゃんと伝えてなかったし。後で兄さまにも言わなきゃ。ジュネさんにも、フリフリ先輩達にも。何してくれたんだかわかんないけど、ルネさんにも。


「還る前に、サクライ先輩にもお礼を言いたいんですが、」

 先輩も命の恩人だし。

「今、サクライ先輩は?」


この地(・・・)には居られません。あの後、急な出張(・・)が入りまして……我が主人正孝は急遽旅立ちました》

 あら、お仕事。

《伝言は私が承りましょう》


「出張……ねえ。リヒトさん。本気で彼女の成長を願うのなら、情報操作はやめましょうよ」

 のんびりした口調で言ったのは、サイオンジ先輩だった。

「リーダーの『出張』は、この世界での事じゃない。異世界転移だって、彼女に教えるべきです」


 へ?


《西園寺さん》

 とがめるような鋭い声をかけられても、サイオンジ先輩のマイペースは変わらない。ほんわか笑顔でアタシに笑いかけている。

「リーダーは、いわゆる転移(トリップ)体質なんですよ。勇者世界を含め、今までに十二の世界に跳ばされてるそうで。マルタン様は精神だけの異世界転移ですが、リーダーの場合、丸ごとあっちこっちに跳ばされてます。あの人、人間離れした高性能(ハイスペック)なので、正義の味方として召喚されちゃうみたいで」

《口を慎んでください、西園寺さん》

「おっかない顔してないで、あなたもリーダーとの出会いでも教えてあげたらどうです? リーダーがあなた達精霊を手に入れたのは、櫻井正孝に改名した後だ。三回目の転移ででしたよね? その時、」


《黙りなさい》

 リヒトさんから、ゆらっと何かが立ち上ったような……。

 光精霊は氷のように冷えきった表情で、サイオンジ先輩を見据えている。

《越権です。あなたといえど、正孝の意志に反する言動は許しません》


「許さないって……物騒だなあ、リヒトさん。何をする気です?」

 ニコニコとサイオンジ先輩は笑っている。でも……

「ぼくに敵対行動をとると危ないですよ。あなたを祓える存在が、ぼくに降りてきてしまう。あなたは、リーダーの一番の精霊だ。手荒な真似はしたくありません」

 笑顔のはずなのに、凄味があるというか……。


「第一、ぼくが語った程度の真実なら、現役勇者に伝えても問題はありません。神罰は下りませんよ。あなたもリーダーも、神経質すぎます」

《しかし、》

「むしろ、彼女がこの事実をわきまえていない方が問題です。魔王戦当日、リーダーが異世界に行ってたらどうするんです? 別世界に居たら、世界ごとの召喚ではリーダーを呼び出せない。百人伴侶の一人が欠けても託宣は叶わなくなる。彼女、負けちゃいますよ」


 あ……


 サイオンジ先輩、リヒトさん、それからお師匠様へとアタシは視線を彷徨わせた。


 お師匠様は、いつもと同じ無表情だ。

「その事に関して、サクライ マサタカ殿ご本人から相談を受けた。あの方だけ召喚方法を変更する」

 そう言って、お師匠様は胸元から小袋を取り出した。

「サクライ マサタカ殿の髪の毛と爪が入っている。それと、七代目であったあの方の勇者の書。それらを用い、あの方個人を召喚できる魔法陣を魔法絹布に刻むつもりだった」


「なるほど。対策は考えておられましたか……。ですが、賢者様、その事をジャンヌさんにまだ伝えていらっしゃいませんね?」

「うむ」

「魔王戦当日までに、専用の魔法陣を準備し、それを用いてリーダーを召喚することはお教えになるでしょう。けれども、何故そうするのか、はっきり伝えないつもりだったのでは? リーダーがよその世界の神様たちから愛されすぎていて、別世界に転移している可能性があるとまでは、教えないつもりだったのでしょう?」

 お師匠様が微かに眉をしかめる。

「そうだ。ジャンヌには秘して欲しいと、サクライ マサタカ殿が望まれたゆえ」


「人としては、それが正しいでしょうね。でも、勇者の指導者としては間違ってますよ、賢者様」

 サイオンジ先輩はのんびりとした口調で、言葉を続ける。

「常にあなたがお膳立てした道を歩ませていては、彼女は自立できません。昨晩、彼女が連れ出されたのも、あなたを盲目的に信頼していたゆえだと思いませんか? 情報は共有し、彼女が知っていて当然の事は全て教え、自分の頭で思考し行動を決める習慣をつけさせるべきです。自ら運命を切り開かなければ、彼女の成長は見込めない」

 にこやかに微笑みながら、先輩は辛辣な言葉を言い放つ。


「魔王と戦うのは、あなたではない。勇者なのですよ」


「………」


 お師匠様はしばらくサイオンジ先輩を見つめ、それからゆっくりと目を伏せた。

「その通りだ。ご助言いたいみいる……。私は、ジャンヌが妙齢に達している事をつい忘れてしまう。幼き子供と思いこみ、出すぎた真似をしていた……賢者として、ジャンヌへの接し方を改めよう」

「それがいいと思います」


「待って」

 アタシは慌てて立ち上がった。お師匠様が悪かった、みたいな話の流れになってるけど! 違うし!

「お師匠様だけのせいじゃない! アタシが無節操にキュンキュンしちゃうから、お師匠様はものすご〜く心配してくれて、それでちょっと過保護になっただけで! アタシがしっかりしてないのがいけなかったんです!」


「ジャンヌ……」

 すみれ色の綺麗な瞳が、アタシを見つめている……

 アタシは、お師匠様へと頭を下げた。

「ずっとご心配をおかけして、すみませんでした。自分では何も考えず、お師匠様におんぶに抱っこで、甘えてました。アタシはバカだけど、バカなりに考えて勇者として真剣に頑張ります。いろいろ教えてください」


「……わかった」

 顔を上げた。お師匠様はいつも通りの無表情。だけど、口元が微かにほころんでいる。微笑んでいるかのように思え、胸がキュンとした。

「おまえが独立心を持つのは良いことだ。おまえの成長を促せるよう、私も努力しよう」


 そのままアタシとお師匠様は、しばらく見つめ合った。


『ジャンヌ。かっけぇぇ』とか感動してる奴がいたけど、とりあえず無視。


 アタシは魔法を使えないし、剣の腕もさほどじゃない。

 八体の精霊がしもべになってくれたけど、強いのはアタシじゃなくって精霊たち……昨晩、アタシはまったく戦力にならなかった。

 勇者のくせに、守られてるだけなんて間違ってる……みんなを守ってこそ勇者なのに。

 強くなりたい。

 自ら考え、覚悟をもって、何事にも立ち向かってゆきたい。


 遅まきながら、そう思った。


 アタシは勇者なんだ……


 アタシはお師匠様を見つめた。

「もう還ります?」

 もとの世界に還ったら、お師匠様の偽者のことを、マルタンに質問したい。学者のテオも、何か知ってるかも。ドロ様に占ってもらうって手もあるわよね。対抗策を練らなきゃ。

 戦闘力アップの方法も考えよう。付け焼刃でどうにかなるとも思えないけど、やるだけやってみる。

 それに、何もかもお師匠様に丸投げするのは、やめるんだもん。いろいろ勉強するのよ。魔王戦のおおまなかな流れや仲間の召喚・帰還のやり方なんかは、今の内から学んでおけそうだ。しっかり覚えよう。

 やることはいっぱいだ。

 あ〜 でも、還る前に、お夕食は食べたいかな。フリフリ先輩たちが準備してくれてるみたいだし。


 お師匠様が静かにかぶりを振る。

「いや、まだ還らぬ。仲間探しが終わっていない」などと言って。


《主人正孝より、あなたに精霊を紹介するよう命じられています》と、リヒトさん。

 そういえば、そうだった。先輩の精霊を伴侶にできないか、面接するんだったけ。

《しかし、五十六体の精霊のうち、四十八体は正孝と共に異世界へ旅立ってしまいました。この世界に残留した精霊の中から、魔王戦当日職務に就く予定の無い二体、シュトルムとノヴァをご紹介します》


 ノヴァ……


 ホット・ミルクを持って来てくれた、胸がバーンだった赤い髪の女の子……よね。

 まあ、あの姿は変化だ。男の人の姿にもなれるはず。


 でも……


「あの……基本的なことなんですけど、」

 アタシは首を傾げた。

「リヒトさんやノヴァさんたちって、どうして英雄世界に残ってるんです?」

 精霊支配者と契約を結んだ精霊は、オプション扱いになる。主人が異世界へ移動すれば、くっついていくのが普通。

 のはずだわ。そう習ったもん。

……もしかして、リヒトさんたちは精霊界出身じゃない? だから、ルールが違う? 主人と異なる世界に存在できる?


《その者は精霊界の精霊ですよ。見ればわかります》と、ポケットの内から声がする。光のルーチェさんだ。

《しもべとなった精霊は、主人と別世界には存在できません。契約の証が第三者に貸与されているのなら、話は別ですが。精霊は契約の証と共に、仮の主人の下に存在しますからね。しかし……》


《その光精霊……第三者と仮契約を結んでいるようには見えぬのである》と雷のレイ。

《とはいえ、主人の命に反し、勝手をしてるんなら大事(おおごと)だぜ。精霊界から強制送還がかかって存在を消去されるレベルの犯罪だ》と、風のヴァン。


《精霊界の理には違反していません。契約形態が特殊な為、条件付きで主人の側から離れられるだけです》

 リヒトさんの眼鏡の奥の鋭い目が、スッと細められる。

《正孝は転移(トリップ)体質です。短ければ数日ですみますが、年に数回、何の前兆もなく異世界へ跳ばされ、この世界から行方不明となっています。私達精霊が正孝の影武者となり生活を支えたからこそ、主人は学業を終え、実業家として生計をたてられるようになりました。放浪癖のある社会不適合者でも、『芸術家』であれば表社会に関わって暮らせるでしょうが、》

 クールな美形が憂い顔となる。

《残念なことに、正孝はそちら方面の才能が壊滅的にありません。学生時代、音楽も美術も四以上の成績をとった事がないのです……十段階評価で》

 そうなんですか……

《主人がこの世界で社会生活を営めるよう、我々八体は主人と別行動をとり、主人の不在を埋めているのです》

 勝手をやっているわけではないと、リヒトさんは強調する。


《その光精霊は、何ぞ違反すれすれのことをしてそうじゃ。だが、よいではないかクマー》

 ポケットから、ピロおじーちゃんののほほんとした声がする。

《そやつもその主人も戦闘力が高いクマー。魔王戦で良き働きをしてくれる存在を、我らの告発で追い込んでもつまらぬクマー》


《ま、確かに》とヴァン。

《犯罪を暴いたところで、主人に利はないのである。どころか、この者が存在消去となれば、百人伴侶に欠員ができる事になる。ここは、見て見ぬ振りをすべきである》とレイ。


《例外はありません。違反者は発見次第、処罰。精霊界の厳然たる規則です》

 ルーチェさんが、冷めた声で言う。

《しかし、まだ犯罪の証拠はつかめていません。不確かな情報で光界を騒がせたくはありませんので……今は、私も口を閉ざしましょう》


 ルーチェさん、なんか怖い……。


 ピロおじーちゃんが、こっそりと教えてくれる。

《ルーチェは導き手。光界全体の利益に奉仕する役職に就いておる。真面目な奴じゃて、勝手をやっておる同族が許せんのであろう……あ、いや、クマー》

 なるほど……


《それで? 勇者ジャンヌの為に、どんな姿の精霊を紹介する気です?》

 虹クマさんがポケットから顔を出し、リヒトさんに挑戦的な言葉を投げつける。

《勇者ジャンヌの記憶は読んだのでしょう? たいへん萌えやすい方だからと、軽視してはいないでしょうね? 外見だけでキュンキュンさせられると思ったら大間違いですよ。美学も物語性も無いうわべだけの変化では、彼女に感動は与えられません……あなた方のお手並みを拝見させていただきます》


《勇者OB会のみなさまからのご意見も容れまして、二体にはショー形式でジャンヌさんと対面してもらう事にしました》

 クールビューティなリヒトさんが、静かに微笑む。

《……食事の用意も整ったようです。階下のリビング・キッチンに移動しましょう。食事をしながら、ショーをご覧ください》




 ショーって何? って思ったけど……


 一階のリビング・キッチンで待っていたものは、まさしくショーだった。

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