しもべ戦隊参上ッ!
「ご無事の帰還、何よりです。みなさん、精霊界での成果はいかがでしたか?」
出迎えた学者がそう言った。
ので、帰還早々だったけど、アタシは自慢の精霊達を見せてあげる事にした。
《アカグマー》
《モモクマ〜》
《シロクマー》
《クロクマー》
《キーグマー》
《ミドグマー》
《ムラグマー》
《ニジクマー》
《八体そろって》
クマさん達が声をそろえて、叫ぶ。
《しもべ戦隊クマクマ8!》
どど〜ん! と演出効果の八色の炎! バンザイする八体のクマさん!
魔法絹布の前で、ヒーロー・ショーをするぬいぐま達。
か、か、か、か、かぁわぁいぃ〜〜〜〜!
胸がキュンキュンキュンキュン鳴った!
鳴り響いてしまった!
何度見ても、いいものはいい!
ときめいちゃう!
みんな、かわいい!
それにしても、ルーチェさんの虹色クマさん、カラフルだなあ……
体の色がレインボー……大胆なデザインだけど、これはこれでアリでしょ!
兄さまとクロードが惜しみない拍手を送り、ドロ様もフフッと笑いながら手を叩いてくれる。
お師匠様は、精霊界との行き来に使った『勇者の書 39――カガミ マサタカ』を物質転送で片づけていた。しもべ戦隊には、特に感想はなさそう。でも、いいの! お師匠様が無表情なのは、いつものことだし!
使徒様は、ケッ!て感じにそっぽを向いている。だけど、いいもん! あんたにはわかってもらえなくても、気にしない!
《か、かわいい……》
ほら、ニコラには好評!
ゴーレムのピアさんと手をつなぎながら、白い幽霊は頬をゆるませている。
「あらあらあら。クマちゃんたち、愛らしくて格好いいですわね」
侯爵家令嬢シャルロットさんも、しもべ戦隊を優雅に称えてくれる。
その足元には、預かりものが。使徒様のゴーレム『ゲボク』だ。床よりほんのちょっとだけ浮いているそれは、伏せをする忠犬のようにも見える。
よし! みんなのハートをわしづかみ! 一部を除いて!
どう、テオ、アタシの精霊達は?
振り返ってみた。
アカデミックドレス、正方形の角帽、銀縁の眼鏡。
学者様は、両腕を組んで、ジーッとアタシのしもべを見つめている。
感情を排した、観察者の眼で。
チッ。
ノリの悪い奴。
……もうひと押し?
アタシは、クマさんたちの背後にいる奴に合図を送った。
肩より下の辺りで水色の長髪を結んだ、水色のローブの男。人間を模したその姿は、この精霊が自主的にとっている姿だ。
ぬいぐまになるのを拒否ったこいつにも、ヴァン達はちゃんと役を振っている。
《やらなくてはいけませんか……?》
心の中に、嫌そうな声が響く。アタシだけに話しかけているんだ。
やるのよ、当然でしょ! アタシの精霊の素晴らしさを、テオにもわかってもらうのよ!
アタシの心を読んだラルムが、フーッと溜息を洩らし、顔をひきつらせながら右腕を水平にあげ、人さし指を弱々しく伸ばす。
《い、行け……しもべ戦隊クマクマ8よ……》
こら、ラルム!
あんた、長官役なのよ! もっとビシッと決めなさい!
大根!
《とう!》
八匹のクマさんがジャンプ!
空中で八色の光となって、部屋中に散り散りとなる。
《うわー!》
ニコラが目をキラキラと輝かせる。
光と化していた精霊達は、会場(オランジュ邸のアタシ用の部屋)にいい感じにばらけて、着地。
ぬいぐま変化をし、思い思いの決めポーズをとる。
でもって、
《しもべ戦隊クマクマ8!》
息もぴったりに声をそろえる。
素晴らしい!
完璧だわ!
格好いいわ、クマクマ8!
学者様へと目を向けると……
手帳を開いて、メモをとっていた。
ヒーロー・ショー見てよ……
「勇者様の精霊は……炎が二体で、それ以外の、水、風、土、雷、闇、光は一体づつ……」
……やけに冷めてるわね、あんた。
ぶぅ。
「炎も一体よ。ピンクのクマさんは、兄さまの精霊のピナさんよ」
「ああ、そうなのですか……炎も一」
テオが首を傾げる。
「……質問します、あちらの……」
しばし何と言おうか考えてから、テオは言葉を続けた。
「趣味があまりよろしくない配色のクマは、何精霊なのでしょう? お教え下さい」
学者様が指さしているのは、虹色クマさんで……
《今、聞き捨てられないことをおっしゃいましたね、そこの方》
虹色クマさんがズン! とテオに詰め寄っていく。
《このヴィヴィッドな七色の配色! 繊細でありながら、それでいて大胆な、色のマジック! この七色は、虹色です! 私が光精霊である事は、一目見ればわかるでしょう!》
「……失敬。わかりませんでした」
でもって、テオが火に油を注ぐ。
「光精霊はあちらの方、一体だけかと思いました。勇者様の光精霊は二体なのですね」
テオが指さしているのは、ピロおじーちゃんで……
《ピロ様は氷精霊です!》
ルーチェさんが空中に浮かびあがり、テオの襟をガシッ! と握る。
《白クマだから、光精霊だと思いこみましたね?》
「あ、ええ、まあ」
《愚かな! 光=神聖=白という図式、安直すぎです! 古すぎます! 白光には虹色が含まれているのです! 赤、橙、黄、緑、青、藍、紫。その七色が揃ってこその光! 私は虹色を愛し、虹色ファッションを貫いているのです!》
「はあ、そうなのですか」
テオはあきれ顔だ。
そんでもって、言ってはならない一言を……
「……勇者様のしもべになるだけあって、普通ではないというか……特殊な思考の方なのですね」
《落ちつくのじゃ、光精霊よ。殺人はマズイのじゃクマー。勝手に殺っては、光界に強制送還、その後、消滅処分になるぞクマー》
白クマさんが、虹クマさんを羽交い絞めにして止める。
《どうしても殺りたいのであれば、主人の許可をとるべきである》
ちょっと、ちょっと。煽らないでよ、紫クマさん。
《つーか、そいつ、オジョウチャンの伴侶の一人だろ? 殺したら、託宣がかなわなくなって、オジョウチャンが破滅だぜ》
緑クマさんの言う通りよ!
「落ち着いて、ルーチェさん。あいつは、ファッション・センスが悪いのよ。お洒落に興味がないんだわ。毎日毎日、飽きもせず学者のアカデミックドレスだもん。服装にまったく頓着しない、野暮ったい男なのよ」
「勇者様。誤解です。私がこの格好で通しているのは、貴族としてではなく、学者として生きたいという意志表示であって、」
黙れ、今はあんたの相手をしている暇はない。
「ダサい男に、最先端のファッションが通じなくてもいいじゃない。アタシは大好きよ、ルーチェさんの七色ファッション! 格好いいし、かわいいもの!」
ルーチェさんがつぶらな瞳で、ジーッとアタシを見つめ……
それから、アタシの胸に飛び込んでくる。
《勇者ジャンヌ……あなたの心の中は、私のファッションへの理解と称賛に満ちています……あなたのしもべになって良かった》
もふもふの虹クマさんを、ぎゅっと抱きしめた。
アタシも、ルーチェさんがしもべになってくれて嬉しいわ!
「勇者様の精霊は、炎、水、風、土、氷、雷、光、闇が一体づつ……光精霊は、特殊な趣味……」
メモをとっている男を、ルーチェさんと共に睨みつけた。
アタシの精霊たちは、みんな、素晴らしいのに!
最高なのに!
この馬鹿にわからせる方法はないものかしら!
《ありますよ》
アタシの心を読んで、ラルムがあっさりと言う。
《所有精霊への評価を向上させれば、良いのでしょう?》
え?
まあ、そうだけど……
《実行します》
……どうぞ。
でも……
できるのかしら、ラルムに?
最近、いじめられっ子な印象が強いんだけど……
水の精霊が、テオの前まで歩み寄る。
何ごとかと、メガネをかけ直す学者。
水色の髪に水色のローブ。ラルムは、自分の胸にそっと手をあてた。
《この姿は、三十九代目カガミ マサタカ様の移し身です。髪、目、服の色以外は、忠実に再現しています。あなた方の時間にして約千百年前……水界を訪れたあの方と、私は出逢っています》
「!」
目を見開く学者。
テオの前で、ラルムが変化する。
髪と目とローブの色を、闇のように黒く染めたのだ。
《これで、完璧です。身長や体重はもちろん、髪のツヤも、肌のハリも、服の皺にいたるまで、完璧にカガミ マサタカ様です》
「カガミ、マサタカ様……三十九代目様……」
テオが頬を染め、うっとりとラルムを見つめる。
「なるほど……凛々しく、知的で、お美しく……たしかに、三十九代目様にふさわしい容貌……」
そーか。
その手があったっけ。
勇者おたくだもんね、テオ。
「嘘じゃないわよ。アタシの水精霊は、三十九代目のそっくりさんよ」
《カガミ マサタカなら、わしも会ったことがあるぞクマー》
白クマおじーちゃんが、ホホホと笑う。
《人とは思えぬほどの輝かしい存在での、あれが氷界に現れた途端、全ての精霊たちが骨抜きになってのう、カガミ マサタカを争って氷界は揺れに揺れ、》
「おお……是非、詳しく教えていただけませんか」
メモをもつ手もおろそかに、テオがめいっぱい瞳を輝かせている。
勝った!
アタシの精霊の素晴らしさを、この馬鹿にわからせたわ!
……わからせた、と思う。
「あらあらあら。いけませんわ、テオ兄さま」
シャルロットさんがコロコロ笑いながら、またいとこの左手をそっととる。
「ご興味がおありなのはわかりますわ。でも、先になさる事がおありでしょう?」
テオがハッとする。
「失礼。そうでした。八大精霊のことを含め、伺いたいことは山ほどあります。ですが、まずはご休憩なさいますよね? 食事の準備をさせましょうか?」
「まあまあまあ。ほ〜んと、テオ兄さまったら」
シャルロットさんが口元に手をあてて、コロコロ笑う。
「レディがいらっしゃるのよ。まずは、湯あみでは? 身だしなみを整える時間すらさしあげませんの?」
「あ」
テオは微かに頬を染め、眼鏡のフレームを押し上げた。
「失礼。ご希望を伺います。湯あみ、食事、睡眠。いずれになさいますか?」
「コーンポタージュ!」
叫んでから口を押さえた。
つい、心の叫びが……
「ポタージュ飲みたいわ……だけど、その前にお風呂がいいかな」
頭が、ちょっとかゆいし。
「俺は風呂は後でいい」
ジョゼ兄さまがおなかに手をあてる。
「肉が食いたい」
「ボクもー」と、クロード。
「俺も食事を先で。まともな食事に飢えてるんで」と、フフッと笑いながらドロ様。
「ククク。俺も腹にガツンとくるものを・・」
と、マルタンは言いかけたんだけど、
「使徒様。お留守中に、聖教会からお手紙が届いておりますわ」
シャルロットさんに手紙を載せた銀の盆を差し出されて、後の言葉を忘れる。
封筒を受け取ったマルタンは開封し、手紙を開き……
チィッ! と、大きく舌打ちをしたのだった。
「まったくもって、完璧に、どうしようもない、無能どもめ!」
手紙をくしゃっと握りつぶし、マルタンがテオへと叫ぶ。
「メガネ。風呂だ。大至急、風呂を用意しろ。俺は聖教会へ行かずばならん」
「何ごとです?」
「悪い知らせなの?」
テオとアタシが、ほぼ同時に尋ねる。
マルタンが亜麻色の髪を、派手に掻く。忌々しい! と叫ぶばかりに。
「巨悪が動いた。俺は祓っておけと言ったのだ。しかし、慈悲だ何だとほざき、真実から目をそむけたふぬけどもが、体裁ばかりを気にしたが為に・・」
宙をみすえる使徒様。その左手が動いている。掌を開いては閉じ、閉じては開きを繰り返す。
「邪悪を粛清することこそが、俺の存在理由・・・あれを祓えるのは、おそらく、きっと、もはや、神の使徒であるこの俺だけであろう」
「どんな敵だ?」
お師匠様の問い。
「魔王に関わる邪悪か?」
使徒様は、目を細めた。
「・・賢者殿の問いであっても、答えられん。アレに関しては、緘口令が敷かれている。だが、まあ・・無縁ではないとだけお伝えしておこう」
「そうか……」
お師匠様が、マルタンへと静かに頭を下げる。
「すまぬな、マルタン。勇者ジャンヌの為に、邪悪祓いを頼む」
マルタンが微笑む。こういう顔もできたのかと思うほど、嬉しそうな顔で。
「賢者殿の為にも、後顧の憂いなきよう、完璧に完全にパーフェクトに祓ってくれよう」
使徒様の目が、アタシへと向く。
「そういうわけだ。女。しばらく俺は邪悪退治の旅に出る。だが、俺が側にいないからといって、光の道を外れるなよ。きさまが邪悪と化した日には、神の使徒たるこの俺が粛清せねばならなくなる」
なんないわよ、邪悪には。ったく、もう。
「あんたこそ、気をつけて。怪我しないように、ね」
「フッ。いらん心配だ」
使徒様が鼻で笑う。
……かわいくない。
「使徒様。お部屋に、湯あみの準備を整えさせましたわ」と、シャルロットさん。
「でかした、クルクルパーマ」
変なあだ名をつけられたのに、シャルロットさんはにっこりと微笑んだままだ。大人だなあ……。
「軽食も運ばせますわ。聖教会の戒律にのっとったメニューで準備させますが、お食べになりたいものはございます?」
「気のきく女だ・・何でもいいが、果物をつけてくれ」
へー 果物好きなのか。知らなかった。
「来い、ゲボク」
使徒様に呼ばれ、白い雲そっくりなゴーレムがふよふよと動き出す。
「『ゲボク』さんには毎日魔力をさしあげましたわ。すぐにでもお乗りになれるかと存じます」
「何から何まで天晴だな、クルクルパーマ。どっかの勇者に、きさまの爪の垢を煎じて飲ませてやりたいぐらいだ」
む!
使徒様が、ひらりと白い雲に乗る。
使徒様のゴーレムは、飛行形態だ。乗れば、歩かないでも移動できる。
でも、『ゲボク』はドアノブを回せない。
扉の前でいったん降りて、ドアを開ける使徒様。……マヌケだわ。
背中のマントラ模様を見せつけながら、使徒様が軽く左手をあげる。
「きさまらに、神のご加護があらんことを。あばよ・・・」
いいから早く旅立ちなさいよ、あんた……
「お食事の方は隣室へ。賢者様のお部屋にご移動ください」
テオが咳払いをする。
「……勇者様は、どうぞこのままお部屋に。召使いに、入浴の準備をさせます。お疲れのようでしたら、今日はこのままお休みくださっても構いませんので」
あら。
「へーきよ。さっぱりしたら、みんなと合流するわ」
「了解です。しかし、明日にも異世界に赴き、仲間探しの旅を再開していただくのです。かよわい女性の身なのです。精霊界での話は、他の方からでも伺えますので、決してご無理はなさらぬよう願います」
むぅ……
恥ずかしいような、嬉しいような。
テオは、アタシを女の子扱いしてくれる。キツい事をバシバシ言うけど、根は紳士なのよね。
でも、次にどんな世界に行くか気になるし……
それに……
アタシは、テオからドロ様へと視線を動かした。
ドロ様が、八大精霊を全てゲットできるかどうかの賭け。
その賭けの勝者と敗者がどう動くのかも気になる。
テオは、たぶん勝敗がわかっている。
ドロ様の両手の指輪を一瞥していたし。
契約の証の指輪だって、知識があるから気づいているはずだ。
ドロ様は余裕の笑みをもって、テオを見つめるだけ。
テオが言いだすのを待っている感じだ。
「勇者様?」
「あ、ううん。何でもない。お風呂から出た頃には、みんなも来てるかなあ、と。ちょうどいいわよね」
「セザール様、ルネさん、エドモンさん、ジュネさんは間もなくいらっしゃいますわ。先ほど、ジャンヌさん達のご帰宅をお知らせに使いを走らせましたの」
おっとりと、シャルロットさんが教えてくれる。
「アランさん達からは、まだ連絡がございませんの。ちょうどあちらに着いた頃ですし、今、まさに冒険中だと思いますわ」
アランとリュカは、百年以上前に大陸を席巻した大盗賊団の秘宝探しの旅に出ている。
魔法武器に魔法防具、魔法道具を主な獲物とした盗賊団だそうで……その秘宝ならば、魔王戦で役に立ちそうなモノがありそう。
お宝は絶海の孤島にある、魔術師が同行している、いざって時は移動魔法で逃げられる……アタシが知ってるのはそれぐらいだ。詳しいことは、お師匠様とドロ様とテオしか知らない。
いろいろと気になる事は、あるけど……
まずは、お風呂よ。
《クマさん達は、お師匠様についてって。アタシに代わって、精霊界での事をテオに話して欲しいの。ムカつくことはあっても、質問にはちゃんと答えてあげてよ》
《はーい》
クマさん達がかわいらしくお返事をして、縦一列に並んでちょこちょこと歩き出す。
お師匠様の背後へ。
一瞬、微かにだけど、お師匠様が眉をひそめる。
お師匠様が隣室に向かって歩き出すと、その後にぬいぐま達が続く。大きな頭を振り振り、短い足でヨチヨチ歩いたりなんかしてて……
あああああ!
かわいい〜〜〜〜〜!
兄さまとクロードが、ぽわ〜んとした目でぬいぐまの背を見つめる。
クマさんのすぐ後ろに、ピアさんと手をつないだニコラがついたもんだから、かわいさは更に倍増……
うっとりと手を振って見送った。
テオもシャルロットさんも、み〜んなアタシの部屋から出て行った。
けれども、何故か紫クマだけが残っている。
《吾輩は、本日の護衛である》
紫クマが、つぶらな瞳でアタシを見上げる。
《くじ引きで決まったのである》
くじ引きかよ。
「アタシ、これからお風呂に入るんだけど」
光界での、レイとのやりとりを思い出した。
アタシは全然タイプじゃない、アタシの裸なんて野生の猿から毛が抜けたようなものだ、とこいつは言ったのだ。
「どうやって護衛するの?」
《雷の結界となり、浴室の周囲を固める。視覚では中を見ぬ。ゆるりと湯につかられるがよい》
『見ない』と言葉にしてくれた。
「……ありがとう」
《主人が我々を男性と混同している事は、重々承知しているのである。だが、いついかなる時も、主人を一人にすべきではない。八体の意見は一致しているのである》
男性の姿の精霊にお風呂護衛をされるのは、かなり抵抗がある。
けど、ぬいぐまの護衛なら、我慢できなくもない。
『見ない』と約束してくれてるし……
まあ……嫌なのは、嫌なんだけど。
紫クマがフーッと溜息をつく。
《吾輩は、『男』としての興味をあなたには抱いておらぬ……そうお伝えしたはず。主人の入浴など、獣や小鳥の沐浴と変わらぬ。お色気の欠片もない。必要とあらば観察いたすが、あえて見たいなどと思うはずもなし》
一言も二言も多いわよ、クマさん!




