◆新世代セザール/蘇る幽霊屋敷◆
「ごきげんよう、テオ兄さま、ニコラさま、ピアさん、ゲボクさん」
またいとこ殿の来訪で、部屋は華やいだ。
《シャルロットおねーちゃん》
白い幽霊がシャルロットに抱きつき、オレンジのぬいぐるみと白い雲が忠犬のように駆け寄ってゆく。
《あそぼ、あそぼ、おねーちゃん》
「ええ。私でよろしければ」
シャルロットが、おっとりと答え、手に持っていたきれいな色彩の絵本を見せた。
「今日は『ばくれつ だぜ』を持って参りましたの。五十一代目勇者バクレツ エイジ様のご活躍を描いておりますのよ」
《へー それも、おもしろそーだね》
白い幽霊は、『ふたりの ゆうしゃ』の絵本を小脇に抱えている。昨日、シャルロットが持って来た、二十八代目様と二十九代目様――兄弟勇者の絵本がいたく気に入ったようだ。
『ぼく、もう八才なんだよ。絵本は卒業したんだ』
昨日、『ふたりの ゆうしゃ』を読み聞かせしようとしたシャルロットに、幽霊はひどく反発した。
そう、最初は。
けれども、冒険につぐ冒険の波乱の展開、コミカルな登場人物達、笑いの中にもほろりとさせるストーリーに、少年は夢中となった。
賢者となり、弟を導く冷静沈着な兄。
力自慢の熱血漢、思慮深さに欠け、すぐに兄に丸めこまれてしまう弟。
兄弟を中心に物語は動き、やがて訪れる別れ。英雄世界からやって来た二人。賢者としてこの世界に残る兄と、英雄世界に還る弟。二人の別れのシーンで、少年は涙を禁じえなくなっていた。
二十八代目様、二十九代目様は、実在の勇者。
しかし、描かれたその別れのシーンは、絵本作家の創作だ。
勇者物語として人口に膾炙しているものも、魔王戦に関してはほぼ創作。
歴代魔王戦の詳細は公とされていない。ましてや、魔王戦の後など不明なことばかりだ。
この世界に残留された二十八代目様は、三十代目コレット様も導かれた。
いつご勇退なさったのか、確たる記録はない。
しかし、推測は容易だ。三十三代目様の代のPTが、『勇者や仲間ばかりか、賢者までもが女性』と公的記録に残っているからだ(三十一代目様、三十二代目様は男名。むろん、女性が男名を名乗られた可能性もあるが)。
二十八代目様は、三十代目様に賢者を譲られたのであろう。
賢者を退かれた後のご消息は、まったく伝わっていない。英雄世界に還られた可能性もなきにしもあらずだが、この世界でただ人としてひっそりと生涯を終えられたのではないかと思っている。
白い幽霊が、シャルロットの腕にすがり、『ばくれつ だぜ』を早く聞かせてとねだる。
シャルロットは、毎日オランジュ邸に顔を見せる。
ジョゼフ様のゴーレムのピアと、使徒マルタン様のゲボクに魔力を注入しに来てくれているのだ。
そのついでに、ニコラ君と遊び、私の仕事を手伝ってくれ……
優秀なまたいとこ殿には、助けられてばかりだ。
白い幽霊は、夜はアンヌ様と共に過ごし、眠るあの方につきそっている。
しかし、日中は相手をしてもらえぬ事が多い。
『わかってるよ。アンヌは忙しいんだ。お仕事の邪魔はしないよ』
そう強がりながらも、少年は寂しいのだ。
勇者様の部屋にやって来ては、『ジョゼおにーちゃんとおねーちゃん、はやく還ってこないかなあ……』と魔法絹布の前の床に膝を抱えてジーッと座り込んだりしている。
五十二年前に亡くなったニコラ君は、精神年齢も当時のまま。子供なのだ。
魔王戦をつつがなく終える為にも、ニコラ君の精神ケアには気を配るべきだ。
善に傾いている魂の均衡が崩れれば、彼は再び悪霊化する危険がある。
魔法絹布の見える位置で雑務をこなしているので、彼の孤独な姿は目の当たりにしている。
慰め、励まし、気晴らしをさせてやらねば……
そうとわかっている。
わかっているのだが……
具体的に何をすればいいのかがわからない。
子供は苦手だ。
家庭教師も、十才未満の子女はお断りしてきている。
学生の頃の夏季休暇で、シャルルやシャルロットの遊び相手を頼まれた事がある。あれが子供と接した最後の時かもしれない。あの頃、またいとこ達は十にもならない子供だった。外遊びをしたくなかったので、歴代勇者様の物語を語って聞かせた記憶はあるが……。
子供とどんな私的な会話を交わせばいいのか、さっぱりわからない。
時折、『よかったら手伝っていただけませんか?』と、単純な計算や、書類の並べ直しをニコラ君に頼んでいる。
用事をいいつけると、少年は喜々として手伝ってくれる。
けれども、彼に頼めることは、残念ながらあまりないのだ。
同室に居るのに、私達の会話はたいへん少ない。
孤独な少年の相手は、もっぱらゴーレムに任せている。
オレンジのぬいぐまは、児童に人気のシリーズを模したものらしい。そう言われれば、他の場所でそのデザインを目にしたような気もする。少年は、ゴーレムを『ピアさん』と呼んで可愛がり、抱きついたり、戦いごっこの相手役にしている。
白い雲とは、よく追いかけっこをしている。上に乗りたがるニコラ君から雲が逃げ回っているだけなのだが、鬼ごっこ感覚で楽しんでいるようだ。
しかし、ゴーレムだけでは、ニコラ君の相手にも限界があって……
シャルロットには、本当に助けられている……
シャルロットに読み聞かせの才能があったのは、正直、驚きだったが。
聞かせどころをしっかり把握した、よどみのない語り。感情豊かに役になりきり、時には歌も交えていた。きちんと下読みをした上で、独自の工夫を加え、聞き手を楽しませていた。
シャルロットの『ふたりの ゆうしゃ』は、吟遊詩人の愛だ恋だばかりのつまらぬ歌よりも、よほど聞くに値する語りだった。
『ばくれつ だぜ』が聞けないのは残念だが、シャルロットが来たのであれば……
「あら。テオ兄さま、お出かけですの?」
「ルネさんの屋敷へ行ってきます。武器開発の進捗が気になっていますので」
発明家のルネには、隻腕のセザール様の為に、片腕でも扱える武器或いは義手を発明するよう命じてある。しかし……
「あらあらあら、そういえば、まったく進捗報告がございませんものね」
シャルロットが口元に手をそえて、コロコロと笑う。
「テオ兄さまに内緒で開発を進め、既に武器が完成していたりして」
「それはありえません」
開発に入る前に、必ず私にもアイデア書を見せるよう、発明家には念を押しておいた。
貧乏発明家のあの男が、金庫番であるこの私をないがしろにするとは思えない。
けれども、つい、うっかり、発明に熱中しすぎて『報告を忘れている』可能性もありそうだ、あの男なら。
《ルネおじちゃんは、セザールの武器をつくってるんだよね?》
『ふたりの ゆうしゃ』を小脇に抱えたままの幽霊が、私に尋ねる。
「そうです。セザール様は九十八代目様の魔王戦の折、石化の呪いで、右手の肘から先を失われました。義手か武器を作るよう、命じています」
《ふぅん》
幽霊が、睨むように私を見つめる。
《あいつさ……アンヌの家に来ないよね?》
『あいつ』とは……ルネのことか?
「おそらく、今日は来ないでしょう。勇者様のご帰還の折には、あれにもご挨拶に顔を出させますが」
《そうか……おねーちゃんたちが還って来たら、ここに来ちゃうのか……》
少年の眼差しがきつい。髪も体もそれどころか目までも白い為か、表情が恐ろしげに見える。
《めざわりな男だ……消してやりたいが……まあ、いい。どうせ長くは……》
白い幽霊が、微笑んでいる。
口元を歪めた、冷笑だ。
子供が浮かべる表情ではない……
「……どういう意味です?」
背筋に冷たいものが流れた。
「消してやりたいとは……不穏な」
《やらないよ》
少年が楽しそうに笑う。
《ぼく、もう悪いことはしない。神さまに誓ったんだ》
クスクスと笑う……
《ぼくが悪いことをしたら、ジョゼおにーちゃんやおねーちゃんが悲しむもの。大切な人を悲しませるようなことはしない。ぼくは男だから》
その白い目が冷たく輝く。
《ぼくが何もしなくても……ちょっとの間、がまんしてれば、終わるし。さっさと居なくなってくれれば、いいのに》
「テオ兄さま」
シャルロットの声で、我にかえった。
私は……
魅入られたのように、少年を見つめていたようだ。
「……私が、この子とお話をしますわ。いろんな思いを、聞いてさしあげます。テオ兄さまはお出かけになって」
またいとこ殿に頷きを返し、私はその場を立ち去った。
馬車の中で、仮眠をとる事にした。
最近、あまり睡眠時間がとれない。
王宮や軍、魔術師協会、聖教会、各種ギルド。各組織からの要請に応え、諜報員からあがる情報を整理しておくのも、留守居役の私の務め。
秘宝探し中の仲間たちへの援助、活動資金の管理……
雑事が多い。
そんな中でも、私の専門分野『技法応用学』の研究を続けている。
魔王戦で『先制攻撃の法』を唱えるのは当然として、それ以外にも技法の有効活用はないか……あらゆる可能性を千慮し、賢者様や勇者様に提案していきたい。
百一代目勇者ジャンヌ様の仲間として、お役に立ちたいのだ。
眠れる時には、少しでも休んでおきたい。
だが、いっこうに眠れない。
先程のニコラ君が気になる。
凄惨な事件で亡くなった子供は、昇天できぬまま五十二年もの間彷徨い、邪霊にまどわされ悪霊化した。
勇者様とジョゼフ様の真心に触れ、清められたと聞いていたが……
先程のニコラ君は、決して、無邪気な子供ではなかった。
使徒マルタン様の言葉が心に蘇る。
神の庇護下に入り光の性質がプラスされたニコラは、もはや人に害をなせない。とり殺すことはもちろん、生命力を吸うことも怪我を負わせることも不可能なのだそうだ。
けれども、罪が許されたわけではない。
『ガキの魂は、かなり癒された。このまま安息を得ていれば、最悪の結末だけは避けられるかもしれん』
邪悪な誘惑に負ければ、ニコラ君の性質は光から遠退く。
ニコラ君の存在が、勇者様の未来に陰を落とさねば良いのだが……
そう言えば、ニコラ君に関しては占い師も何か言っていた。ニヤニヤと笑いながら。
『子供を天使にするも悪魔にするも、周囲の星次第だ。優しくしてやるといい、学者先生。真心を持って向き合えば、不器用な星でも、凍てついた星を照らせるかもしれない』
何故そんな話題になったのだったか……
不愉快な記憶を頭から追い出す。
占い師とは、賭けをしている。
炎水風土氷雷光闇。そのうちの一体でも仲間にできなければ、占い師の負け、占い師を廃業してもらう。
八大精霊を全て仲間にするなどと豪語しなければ、見逃してやったものを……。
あの男が全ての精霊を仲間とした時には、私が占われる事になる。
あの男の助言を聞かねばならなくなるが、まあ……万に一つもありえぬ事だ。八大精霊全てを仲間にするなど、一流の魔術師でも至難なこと。ましてや、あの男には魔力がない。精霊を惹きつける魅力に欠けているのだ。
私との賭けによって、あの男が発奮し、一体でも多く精霊を得てくれればいい。
その気持ちもあって、賭けをもちかけた。
精霊持ちとなってくれれば、戦力が底上げされる。あの無能な男でも勇者様のお役に立つはず……。
ニコラ君のことを考えていたはずが、何時の間にか思考は転がり……
次第に意識は遠のいてゆき……
「何処だ、ここは……?」
目覚めた私は馬車から降り、茫然と辺りを見回した。
きっちりと剪定された庭木、雑草が綺麗に刈り取られた来客馬車の駐車スペース、よく掃かれた玄関前、磨き抜かれた玄関扉……
あまりにも清潔すぎる。
玄関のドアノッカーを使用すると『お客様、お客様♪』とドアノッカーが歌い出す仕掛けは、いかにもあの発明家の家らしいが。
すぐに扉が開く。出て来た者は、前髪で両目を隠した背の低い男。男は『ああ……』と口の中でもごもご言ってから、
「ども……」
と、だけ言ってぺこりと頭を下げた。
男やもめのルネさん宅は、幽霊屋敷同然だった。庭は草木が生い茂り、家の中は埃だらけ、あちこちに物が散らばり、蜘蛛の巣が張っているところすらあった。
それが、見違えるほど綺麗になっている。木箱や空き瓶が無造作に置かれていた廊下も、本来の面目躍如というか……普通に通路として使える。
「あなたが掃除したのですか?」
先に立って歩くセザール様の孫――エドモン君に尋ねた。
なかなか返事が返らなかった。が、
「……うん」
ぼそぼそっと声がする。
「……足の踏み場がなかったんで」
……確かに。
十年と少し前まで、ルネさんは宝石商だった。
しかし、発明趣味が高じ、家業は次第に疎かとなり、妻子や親族から絶縁を言い渡され……今に至っている。先祖代々の財はほぼ残っておらず、召使いを雇う余裕もないようだった。
ご自宅は宝石商時代に築いたものなので、造り自体はたいへん立派なものだ。
掃除さえ行き届けば、見違えるほど雰囲気が変わる。
あの幽霊屋敷ではうさんくさく見えかねなかった発明品も、今の屋敷ならば色眼鏡抜きで商人に鑑定してもらえそうだ。
「……じいちゃんが……やっかいになってるんで……掃除や、洗濯、料理を……してる。あまりうまくないが……他に、おれに、できそうなことは……無いんで」
いや、この家をここまで磨いたのだ、少なくとも掃除は一流の清掃業者並の腕前と言えよう。
「山のご自宅に戻られたかと」
実際、そう言って、この男はオランジュ邸を出たのだ。
黄金弓の現在の使い手ではあるが、本業は農夫。畑が気になると言っていた。
「……帰った、二度」
「二度?」
「……ジュネにグリフォンを借りて……とんぼ帰りだが……帰った。もうすぐリンゴの花摘み……きちんと花を選んで、余分な花を摘んでおかねば、実が……」
ふぅと溜息が漏れる。
「……父さんと話して、畑の作付も減らすことにした……まあ、今年は魔王が出たし、しょうがない」
『魔王が出た』って……『熊が出た』じゃあるまいし。もう少し言い方というものが……
「……リンゴの樹の世話も、母さんが引きうけてくれた……。いいんだ、あっちは何とかなる」
だが、漏れるのは特大の溜息だ。帰りたくて、たまらなさそうだ。
「……おれは……じいちゃんのそばにいる」
彼のこういうところは好ましい。『愚息』ならぬ『愚孫』とののしられ続けても、祖父に敬意を示し、祖父の為に働こうとする。
「……学者さんが来たぞ」
ノックの後、エドモン君が扉を開いたのはルネさんの発明部屋で……
廊下に比べると雑然とした室内と、そこに居る者達が目に入った途端……
頭に血が上った。
「何ですか、これは?」
発明部屋に、真新しい箱が山積みとなっている。
開封された箱もあれば、いましがた届いたと言わんばかりの未開封のものも。
そして、巨大なテーブルの上には、魔法炉やネジ、チューブ、魔法金属板……箱から取り出したと思われる部品が多数……
部屋の主――ロボットアーマーが駆け寄って来る。
「おおお! これは、これは、テオドール様! いい所に! これから試作品作りでしてな!」
まったく悪びれた様子はない。
「試作品……?」
「はい! モヤモヤした曖昧なイメージを、ガガッとある程度形にいたします! 試作品を作ることで、イメージを更に研ぎ澄まし、完成品にフィードバックしてゆくのです! これぞというアイデアの試作品を幾つかご用意いたしますので、その後、共に検討を」
「アイデア書の段階で相談しろと言ったではありませんか」
思わず声を荒げてしまった。
旅の支度、魔王戦用武器の準備、情報の収集、仲間となった者への生活の援助。
シメオン様の私費とオランジュ伯爵からの援助で、全てを賄わなければいけないのだ。
無駄金は使えない。
何を発明するかよく吟味した上でなければ、資金は渡せないと……あれほど注意しておいたのに……
「未開封品は返品してください。活動資金は有限なのです。あなたの発明の為に使える金額には限度があってですね、」
「テオドール様、ご心配には及びません」
箱の前に白髪の老人が居る。狩人の居で立ちの老人は、毅然と頭をあげていた。
「この部屋に届いた物は全て、前払いで購入いたしました。支払いは終わっております」
「え?」
その通りだと、フルヘルメットの機械の塊も頷く。
「……じいちゃんが、自腹を切った」
すぐ側から、ぼそぼそっと声がする。
「……昔、もらった恩賞……まったく、使ってなかったんで……」
「セザール様がご自分の財を使われたのですか?」
部屋を見渡した。
「大型の魔法炉など、物によっては家が一軒買えるほどの値段になるでしょうに」
「……ジュネも、援助してた」
「ジュネさんが? 何故?」
「……なぜって……」
どうしてそんな質問をされるのかわからないって感じに、エドモン君が首を傾げる。
「……あいつも、じいちゃんを……本物のじいちゃんみたいに思ってる……と思う。十で、獣使い屋の徒弟になるまで……ジュネも、山暮らしだった……家族ぐるみの、つきあいというか……」
ジュネさんは、獣ショーの花形スターだ。貴族の後援者も多いあの方なら、ある程度の資金を準備できようが……
それにしても……
「わしは頭の固い老いぼれにございますれば」
老人が穏やかに微笑む。
「ルネ殿から千の説明をしていただいても、どのような発明品を作ってくださるおつもりなのか理解できぬのです」
いえ、それは……私にも理解できません。
この発明家が作ろうとしているものは、いろいろとおかしいです。
右手の肘から先にニメートルを越える銃を装着させるだ、ドリルやフックを義手にするだ……
正気を疑っています。
「だが、形としていただければ、わしとてわかりましょう。わしにとって、有用な武器か否か……」
老人の目が、まっすぐに私を見つめる。
「カンタン様の戦いの場で、わしはお役に立てませんでした。わしが不甲斐なかったばかりに、カンタン様は……」
唇を噛みしめてから老人が言葉を続ける。
「もう二度と、後悔はしたくない」
迷いのない、強い光をはらんだ瞳が、私を見すえる……
「百一代目ジャンヌ様のお役に立ちたいのです……強力な武器をはよう発明していただき、使いこなせるよう鍛錬を積みたい……。魔王が目覚めるまで、八十日しかないのです」
胸が熱くなった。
目の前にいらっしゃるのは……九十八代目勇者様と共に魔王を退治なさった偉大な先人……。
魔王戦で右手を失い、狩人としての生を断たれても尚、狩人であり続ける不屈の闘志をお持ちの方……。
正直、この発明家にセザール様の未来を託すのは不安だ。
しかし、それがセザール様のご意志であるのならば……
ご協力しよう。非常識な発明家が暴走しないよう、私が舵をとるのだ。