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きゅんきゅんハニー  作者: 松宮星
精霊の棲む領界
37/236

さすらいの舞踏家

「いかしてるぜ、その髪形」


「いいねえ、そのドレス。グッとくる。足が綺麗だからだな」


「フフッ。かわいいな。明るくてきっぷのいい女は好きだぜ」


「しっとりとしたいい声だ……ずっと聞いていたくなる」


「俺好みの女を演じなくてもいいんだぜ……素のあんたを見せてくれ……」



 うはぁぁ……


 ドロ様ぁぁぁ……


 セクシぃぃ……


 ドキドキしちゃう……






「・・何をしてるのだ、女?」

 背からかかった声に振り返れば、お目ざめになった使徒様が床の上であぐらをかいていた。


「輝かしき聖戦から還って来た俺を、濡れ場で迎えるドレッドもドレッドだが・・」

 左の指をパチンと鳴らして、使徒様がくわえ煙草に魔法で火を点ける。

「指をくわえて見ているきさまも、おかしい。内なる俺の霊魂はマッハで、きさまらにあきれている・・」


 むぅ。

 あんたにだけは、『おかしい』なんて言われたくない。


 だいたい、見るなって方が無理でしょ。

 すぐ近くでドロ様が、美女を口説いてるんだから!


 赤い髪に赤い衣装。炎の精霊達の変化――綺麗どころに、ドロ様は囲まれている。

 明るい元気っ()から、セクシー系、凛々しいおねえ様まで。全員、ドロ様のしもべ志願者だ。

 甘えてくる美女達を、ドロ様は男くさく笑って、軽くあしらっている。

 でも、時には誉め、時には共に笑い、時には相手の目をじっと見つめて微笑みかけ……


 大人の男の魅力全開で……


 ス・テ・キ……


 炎の精霊達も、うっとりとドロ様を見ている。

 みんな、ドロ様の虜。

 全員モノにできちゃいそう。




「・・他人の濡れ場を見ている暇があったら、セクシー・ポーズの一つでもとってみてはどうだ?」

 ゆっくりとスーッと吸い込んだ煙を、使徒様がふは〜と吐き出す。

「あまりにもシュールで、リアリティに欠け、ありえぬことだが、特殊な趣味の精霊を狙い撃ちできる可能性も絶無ではない」


 やかましいわ!


 使徒様がお眠りあそばしている間も今も、精霊はちらほらと神殿にやっては来てるのだ。

 目的は、アタシじゃないけど。


 ドロ様の所に美女が六名。

 兄さまの所にはファンシーでラブリーなクマちゃんとワンちゃんとウサちゃんとリスさんと小鹿さんが……


 んでもって、アタシの所にはゼロ。

……精霊支配者になるのが難しいことは、わかっていた。

 大多数の精霊は、魔力の高い人間を好む。

 アタシみたいな魔力ゼロ人間にも興味を持ってくれる、ニッチ好みの精霊を気長に待つしかない……その覚悟はあった。


 だけど……


 美女達に寄りそわれ、肉食獣のように笑うドロ様。

 ファンシーな生き物達に囲まれて、ほんわかしている兄さま。


 この二人も魔力ゼロだ。二人とアタシの違いは何なんだろ?


 それに……


「うわ、うわ、うわぁぁ。いいな、いいなー リスさんも、かわいい! ジョゼぇぇ、ボクにも抱っこさせてぇ!」

 クロードの所にも、しもべ希望者が現れてない。

 魔術師の魔法はさっぱりだけど、クロードには魔力がある。初級の回復・強化魔法なら使えるのに、何でガン無視されてるんだろ? 魔力がショボすぎるせい?



 と、そこへ。

《あの……すみません、私をしもべに……いえ、その前に、少しお話を……》

 背後から声が。


 キタァァァアアア! 


 ついにキタァァァ!!!


 アタシの魅力にキュンキュンくる精霊も、やっぱ居るのよ! 何ったってアタシ、勇者だし!


 アタシはバッ! と振り返った。

「お話しましょ! お互い、知り合う、ことが、たいせ……」

 アタシの言葉は尻すぼみで終わった……


 というのも……


「ククク・・俺に語れというのだな、精霊?」

《え、いや、あの、す、素敵な魔力を、お持ちだなあ、と思って、その……》

 女性に変化した精霊が、使徒様の前に座っている。

「ほう。俺の聖気(オーラ)が見えるのか? いい眼をしてるな、精霊・・」

《いえ、オーラではなくて、魔力……》

 使徒様が、両手を胸の前で交差(クロス)させたアレなポーズをとって、精霊に両手の甲の五芒星マークを見せつける。

「良かろう! 神の使徒たるこの俺の聖なる軌跡を、きっちり、かっちり、正確に、話してやろうではないか!」

《……すみません。しもべになりたいと思ったのは、勘違いだったみたいです。帰らせていただきます》

 人型の精霊の襟を、使徒様ががっしりと掴む。

《きゃああ! 嘘? なんで、逃げられない???? 人間に捕まった???》

「マッハで帰るな、精霊・・内なる俺の霊魂は、きさまにねっとりじっくり微に入り細に入り聖戦を語れと告げている・・」

《いやぁぁ! 助けてぇぇ! 放してぇぇぇ!》

……かわいそうだから、放してあげなさいよ。


 てか、あの精霊も、うかつよね。

 心を読めば、マルタンがアレな性格なのは一発でわかるでしょうに……不用意に近づいちゃって……


《読めないよー》

 アタシの心に、元気な声が聞こえてきた。

《マルくんも、ドロくんも、オシショーくんも、心が読めないんだよー》

 兄さまのもとからトテトテと歩いてきたのは、クマのピオさんだ。いや、ピオさんにそっくりな、炎の精霊だ。

 しかし……

 マルくん……ドロくん……オシショーくん……


「マルタンとドロ様とお師匠様の心は読めないの?」

 ピオさんが頷く。

「どーして?」

《まぶしすぎるからー》

「え?」

《ボクらよりもねー 強い子が守ってるからー 心が読めないのー》

 精霊よりも強い子?

 それって……

「神様に守られてるってこと?」

 ピオさんが大きな頭をかしげる。

《わかんなーい》

 そっか、わかんないのか。


 マルタンとお師匠様は、キャピキャピ神に守られてる……?

 ドロ様は……? むぅぅぅ? 占いの神様に加護されてる……?


《心が読めなくてもー かまわない子もいるのー 魔力とかー お顔とか、体とか、おしゃべりとかー 気に入ればいいみたいー》

 ふーん。

《でもね、ボクはいやなのー それじゃ、つまんないのー》

 赤いぬいぐまが、黒い瞳でジーッとアタシを見つめる。


《ボクはねー ジョゼがいいのー》

「うん」

《ジョゼはねー 魂がねー 熱いの。ななめにかまえてても、悪くなれないのー ピュアなのー 何にでもいっしょーけんめーで、がんばりやなのー》

「うん、そうよね」

 アタシはしゃがんで、ピオさんに目線を近づけた。

「よく知ってるわ、アタシの義理のお兄さんだもん。アタシも、兄さまが大好きよ」


《ジョゼがいいヤツだからー ジョゼのキオクにあった、絵本のピオさんのワザ、いっしょに使いたいなーって……わくわくしたのー》

 おおお!

「兄さまに宿って、炎のパンチとかー 炎のキックとかー?」

 クマさんが大きく頷く。

《くまくまファイヤーとかー》

 おおおお!

「ピオさんの必殺技! いや〜ん、素敵! 見たい、見たい、見たい!」


《でもー ダメー。オシショーくんが、魔王戦でジョゼといっしょになっちゃダメって……。ボク、魔王にくまくまファイヤーを叩きこめないんだ……》

 クマさんが、しょぼんとうなだれる。


 チクッと胸が痛んだ。


「ごめんね……」

 クマさんを、ぎゅっと抱きしめた。

「アタシが萌えちゃったせいで……ごめんなさい」


 すまなく思いながら、やわらかいピオさんをハグし続けた……


《……ジャンヌも、熱いねー》

 ん?

《心が》

「……勇者だから」

 だからこそ、申し訳ない気持ちでいっぱいになる……

 世を救う勇者が、他人の気持ちを踏みにじるなんて……

「ごめんなさい。ピオさんがかわいいから、ついキュンキュンしちゃったの。ピオさんは兄さまのしもべになりたくて現れたのに、横から……。最低よね、ごめんなさい」


《……ちぇっ》

 ピオさんがアタシの腕の中で、溜息をつく。

《あんたが腐ったヤツなら、スパッと切り捨てられたのに……》

 ん?

《熱くていいヤツなんだもんなあ》

 ピオ……さん?

《あ〜 もう、やめやめ。ウダウダすんのは、性に合わねえや》

 口調が変よ、ピオさん?


《決めた。俺、あんたのしもべになる》


 え?


「……いいの?」


 ピオさんからちょっと離れる。

 愛らしいぬいぐるみが、まっすぐにアタシを見ている。

《ああ、男に二言はない》

 男……

《精霊には性別はない。けど俺は、異世界の『熱い男の魂』に憧れてきた。男道を突っ走りたいんだ》

 不思議だ。

 ぬいぐるみのはずなのに、男前に見える……


 でも、何か口調が……変。


《あ? こっちが()。だけど、あんたもジョゼも喜ぶから、ずっとピオでいるよ》

「ありがとう。でも、別にいいのよ、他の話し方をしても。それに、姿が違ってもいい。あなたの好きにして」


 ピオさんのつぶらな瞳が、アタシだけを見つめる。

《それ、ほんとー?》

 う。

 また、そんな、ほんわ〜 とした話し方に切り替わっちゃって。

「う、うん」

《でもー》

「うん」

《でもー でもー》

「うん、うん」

《でもー でもー でもー》

「うん! うん! うん!」

 ピオさんがデッカイ頭をちょっとだけ傾ける。


《この方が、うれしー……よね?》


……アタシのハートに、ずっきゅんと何かが突き刺さった。


 魂の奥深いところが揺さぶられてしまったのだ……



 胸がキュンキュンキュンキュン鳴った!

 鳴り響いてしまった!


「あぁぁぁ、ピオさん!」

 アタシは赤いぬいぐまを抱きしめた。

 思いっきり!

 心ゆくまで!

 愛をこめて!


 ぎゅぅぅぅ、と。


 ああ……抱き心地最高……


《あのねー ジャンヌ、おねがいがあるのー》

「なぁに?」

《ボクの代わりにー ボクのだいじな子、ジョゼのしもべにしてほしーのー》

 ピオさんが、兄さまの側のラブリーなワンちゃんを指さす。


《同じ炎から、生まれた子なのー 今まで、何をするのもいっしょだったのー》

「じゃ、兄弟?」

《う〜ん》

「幼馴染み?」

《う〜ん》

「半身?」

《そーかも》

 そっか。

 よくわかんないけど、あの子はピオさんにとって、とても大事な子なのね。


《いっしょに、異世界へ行きたいのー それで、あの子とジョゼで、くまくまファイヤーをうってほしーの》

「おお!」

《ボク、見たいんだー》

「アタシも見たい!」

 クマさんが、にっこりと微笑んだ……ように見える。


《あの子をしもべにしてって、お願いしてくれるー?》


「いいわよ、それぐらい」

 頷いてから、ちょっとひらめいた。

「精霊ってどんな姿にもなれるのよね?」

《うんー》

「だったら……」






「あれがジョゼフのしもべか……」

 頭痛をこらえるかのように、お師匠様が額に手をあてている。無表情だけど。


「ピナさんは、森のクマさんシリーズのぬいぐるみなの。職業は、さすらいのバレリーナさん」

「なぜ、クマがバレリーナ……いや、そもそも、どうしてさすらうのだ……?」

 理解できない、とお師匠様が眉を微かにしかめる。

「ピナさんは、伝説のトゥシューズを探して旅をしているの。で、ピオさんとは旅先で知り合って、最初はライバルだったんだけど、そのうち恋人に……」

「……森のクマさんシリーズの説明はもういい」

 月のような美貌を曇らせもせず、お師匠様が息を吐く。


 兄さまが抱きかかえているのは、ピオさんと同じくらいの大きさのクマさん。

 毛の色はピンク。白いチュチュと、白鳥のティアラが可愛らしい、バレリーナだ。


「……そんなデザインのクマでは、連れ歩けぬであろう? 変身させてはどうか?」

 お師匠様にそう言われ、兄さまがムッと眉をしかめる。

「断る」

「しかし、」

「一度この姿となったものを、俺の都合でコロコロと変えさせたくない。一度しょいこむと決めたものを、恥ずかしいなどという惰弱な理由で放りだしたくない」

 おおお、さすが兄さま。

「ジョゼフ。アンヌ様の前で、そのクマを抱けるのか?」


「………」


 あ、顔がひきつった。

「で、できるさ。……いや、おばあ様に軟弱な男と見捨てられれば、むしろ好都合だ。俺を跡取りにしたいなどという願望も、きっと……」

 兄さまの頬がどんどん赤くなってゆく。


 うん、恥ずかしいのね。

 ピンク色の毛で、しかも白いバレリーナ。ピナさんを抱いて歩くのは、かなりの覚悟がいると思う。

 でも、兄さまは、32回転キックのピナさんも実はものすご〜〜〜く好きだったのだ。昔、いっしょに絵本を読んだからアタシは知っている……


 それに、絵本の中で、ピナさんは一回だけ、くまくまファイヤーを使っている。怪我をしたピオさんを守って。

 ピナさんが兄さまと一体化してくまくまファイヤーを使えば、ピオさんもきっと満足。

 だから、ピオさんの半身の精霊にはピナさんになってもらったわけ。決して兄さまイジメじゃないのよ……


「ピナさんは、普段はピオさんと一緒にアタシのリュックに入ってもらってもいい? 二人は仲良しだから、一緒がいいと思うの」

 アタシをジーッと見つめ、兄さまが照れたような顔になる。

「……すまんな、ジャンヌ」

 ううん、謝らないで。わかってるわよ、義妹だもん。


《わたし、歩く時、ジョゼと一体化しても、いいわ〜》と、ピナさん。

《コブシや足に燃える炎をくっつけちゃえるの〜 かっこいいわよ〜》

「……ありがとう、ピナさん」


 お師匠様が、あきらめたかのように息をつく。

「ピオはジャンヌのものに、ピナはジョゼフのものに……。そう決まったのであれば、正式に契約を結ぶがいい」

 む?

「契約って……どうやるんでしたっけ?」

『勇者の書』に書いてあったっけ?


「自分の所有物である印を精霊につけるのだ。魔力で精霊に刻印を刻むのが一般的だが、魔法が使えぬおまえ達は代替物を用いればいい」

「代替物?」

「何でもいい。持ち物でも、体の一部でも。爪、歯、髪などでもいい。そこに精霊を宿らせ、主従の誓いを立てるのだ。契約の証が存在する限り、主従契約が生きる。しもべ達は主人と共に異世界へ行け、おまえ達はしもべに命令ができる」

 へぇぇ。

「何でもいいんですか? じゃ、絶対無くさないものがいいか……」

 アタシはポケットに手をつっこんだ。

 ハンカチ……ヘアピン、筆記用具……ろくな物がないなあ……


珊瑚(コーラル)のペンダントを契約の証にしたらどうだい?」

 ドロ様だ。しなだれかかる赤毛美女の腰に手を回し、セクシーに微笑んでいる。

「お嬢ちゃんとジョゼフ君に、同じものを渡したろう?」


 アタシと兄さまは、首にかかっているペンダントを取りだした。

 デザインは一緒だけど、アタシの珊瑚の方がややピンク、兄さまのは赤珊瑚だ。

 コーラルは『幸福と長寿』の象徴。身につけていれば寿命が延びるって、プレゼントされたのだ。


「炎の精霊に海の宝石……ミスマッチだが……ピンクに赤、と色はまずまず……二体で一つの精霊……義妹と義兄……同じデザイン……悪くない。生命力と活力を高める珊瑚に精霊の加護が加わるんだ……災いは遠ざけられ、運気はアップするだろう」

 おおお!


「無くさないようずっと持ち続けるのならば、宝石が良い。魅力的な女が一層美しく輝くのは、見ていて楽しいからな」

 あら、やだ。ドロ様ったら……

「それに、美しいものに宿ってもらった方が、精霊に愛着が持てるってもんだ」

 確かに!

「お揃いのアクセサリーは、お二人の親密さを表しますしね」

 ニヤニヤ笑いながら、ドロ様が兄さまとアタシを見渡す。


「契約の証を身につけるのはな、仕える側の為でもある。側を遠く離れていても、石を通して主人の声が聞こえ、契約の石のもとへ駆けつけられるんだ」

 へー


「……詳しいな、アレッサンドロ」

 お師匠様が顎の下に手をあてて、首を傾げる。


「俺は精霊支配者になると、水晶が告げたんでね……素人なりに勉強したんですよ」

 ドロ様が、おどけるように肩をすくめる。

「と言っても、広く浅くいかがわしい本を読んだだけ。学者先生がお怒りになりそうな、エセ知識しかありませんが」

 ドロ様がフフッと笑う。

「ま、でも、こうして……」

 ドロ様が赤毛の女性をぐっと引きよせ、腕に抱く。

「俺の炎の女……『フラム』を手に入れられました」

 燃えるような赤髪の美女が、ドロ様に微笑みかける。何というか、お色気たっぷりの妖しい笑顔……妖艶って言えばいいのか……

 男くさく笑って応えるドロ様。その左の小指には、指輪がある。血のように赤いルビーの指輪。『フラム』との契約の証だ。


 一方……

「阿鼻叫喚たる地獄絵図・・死したるものどもは、無限に死の痛みを味わい続け、生者を怨み、己の死を嘆く。執着から解き放ち、浄化することこそ慈悲。それゆえ、俺は、いっせいに、こぞって、景気よく、邪悪どもを一発昇天させるべく聖気(オーラ)を磨き・・・」

《ごめんなさい……勘弁してください……》

「それで、俺は言ってやったのだ、『殺人未遂、傷害、騒乱、器物破損、強盗、脅迫、誘拐の現行犯だ。内なる俺の霊魂が、マッハで、きさまらの罪を言い渡す』と」

《その話は、七回目ですぅぅぅ……》

「ならば、七回目の感動を味わせてやろう! 颯爽と、華麗に、軽やかに、人馬より飛び降りた俺は、ふぬけの異世界勇者どもの前で聖霊光を高めつつも頭脳プレイで邪悪なる獣を・・」

《帰してぇぇ……もう、私を帰してくださぃぃぃ……》

 シクシクと泣き崩れる精霊。使徒様は、逃すまいと精霊をがっしりとつかまえて、気持ち良さそうに妄想を語っている……



 魔王が目覚めるのは、八十八日後になった。



 水界へ移動する事になった。


 アタシはピオさん、兄さまはピナさん、ドロ様はフラムをしもべとした。

 使徒様とクロードは、しもべをゲットできず。

 てか、使徒様に捕まっていたかわいそうな精霊は、無事、逃げられた。使徒様が眠り病で沈没したおかげだ。あの精霊、きっと二度と、心が読めない人間のしもべになろうとしないだろうなあ。

 でもって、クロードのもとへは、最後までしもべ希望者が来なかった。おっかしいわよねえ……魔力があるのに。むぅぅぅ。


 炎界滞在中、アタシは何回かキュンキュンした。

 ウサちゃん、リスさん、小鹿さん。兄さまLOVEのファンシーな獣たちが、とってもキュートだったんで。

 でも、誰も仲間入りしなかったのだ。


「……ジョブ被りなのであろうなあ。各エリアごとに一体づつしか、ジャンヌは仲間にできぬのやもしれん」

 お師匠様の声には抑揚がない。とっても、平坦。

 けど、すっごく残念がってる……アタシにはわかる。

 攻撃力の高い精霊を各エリアでいっぱい集めたい……そう思ってくれてたんだもん。


 まあ、一エリアで一名しか仲間にできないのがルールなら、それはそれでしょうがない。


 水風土氷雷光闇。まだまだ七エリアもあるのだ。

 仲間探し&しもべ探し、がんばろう!


 ピオさんとピナさんを抱っこしながら、決意を新たにした。

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