賢者の書【これまでの QnQnハニー】
○月×日
聖女マリーちゃんから心話。
邪霊化してたセリアさんのお母さんを清めたものの、次元通路が開いてしまったとのこと。
空間が落ち着くまでボーヴォワール家の絵の部屋をマリーちゃんが封印するって言うんで、了解した。オレの精霊たちにも交替で様子を見に行かせる事にした。
次元通路の先は、セリアさんの双子のお兄さん(流行病で六才で死去)が生きている並行世界みたいだ。
○月×日
聖女マリーちゃんから心話。
占い師イザベルさんが「三日後の夜、月の光が漏れ入る時に、絵の部屋で賢者と勇者の運命を大きく揺るがす何かが起きる」と占ったとのこと。
イザベルさんの占いなら、絶対に当たる!
その日はボーヴォワール邸に詰めておけと、バカ弟子に命じておいた。
○月×日
バカ弟子とセリアさんと共に、マリーちゃんからボーヴォワール伯爵夫人を昇天させた日の話を聞く。
セリアさんのお兄さんの遺影から『ドレッド』という悪魔が現れて、マリーちゃんに憑依した『マッハな方』のアシスタントみたいな事をしたようだ。
イザベルさんのお告げの日、その『ドレッド』悪魔がまたやって来るんだろうか?
○月×日
何が起きるかわからないとのことなので!
護衛として、アナベラにも来てもらうことにした!
アナベラはちょ〜一流の戦士だしね!
たまたま暇してるとのことなので! 依頼に行って、久々にアナベラに会った!
目に嬉しい、ぷるんぷるんのぷりんぷりん! やっぱイイ! ビキニアーマー最高!
○月×日
ついに、お告げの日。
絵の部屋に夕方前から、セリアさん、マリーちゃん、イザベルさん、アナベラ、バカ弟子と共に詰めていた。
月が出てから、バカ弟子が「『賢者と勇者』に関わることなら、もと賢者のシルヴィ様にも立ち会ってもらった方がよくはないかね?」とか言い出した。
すごくもっともだが、もっと早くに言って欲しかった。
移動魔法で、お師匠様を迎えに行った。絵の部屋に精霊達を残してくから、何かあったらすぐに知らせてもらえる、すぐに駆けつけられる。そう思ったんだが……
何がいけなかったんだろう?
お茶の飲み過ぎか? 昼のハムか? ちょっと熟れ過ぎだったイチゴがいけなかったのか?
オレは、やむにやまれぬ事情で動けなくなった。
なのに、土精霊の奴、はしゃぎやがって! 《ここぞっていう時には、しっかりトホホ! さすが、ご主人様、わかっていらっしゃる!》とか! 狙ってやったわけねーだろ!
どんな状態異常も、半日もあれば治るけど。半日経ったら、夜が明けちゃうし。
水精霊を呼んで、回復魔法をかけてもらったわけだ。
そんでも……薬を飲んで、おなかが落ち着くまで動くに動けず……
その間に! 次元通路が開き!
なんと! 並行世界の百一代目勇者がやって来たのだ!
風精霊の心話による実況中継を、歯がみしながら聞いていた。
並行世界の百一代目は、十六歳の女の子。
その護衛に裸戦士やごっつい男やらが来て、(こっちでは亡くなっている)セリアさんのお兄さんが来た……のまではいいとして。
シャルルまで来たって聞いて、耳を疑った。
並行世界のシャルルは、ボワエルデュー侯爵家嫡男だそうで。
侯爵家の名前の『ポ』と『ボ』が違うだけで、見た目も性格もそっくり……。
シャルルが二匹とか!
そっち行きたくなくなった!って、アウラさんにこぼしたら《百一代目ジャンヌちゃん、かわいいわよー 元気で明るくって、子犬みたい。おにーさん好みよ〜ん》とか誘惑するし……。
まあ……並行世界じゃ賢者が敵方に回って大混乱みたいだし、この世界の賢者として力を貸すのは当然なわけで……覚悟を決めて行ったけどさ! お師匠様を連れて!
百一代目ジャンヌちゃんは、お師匠様を見て泣き出した。
彼女を裏切った賢者――もと九十六代目シメオンは、お師匠様と顔や雰囲気が似ているらしい。
勇者時代からの嗜み、白いハンカチを彼女に渡し続け、涙が枯れる時を待った。
何とか涙をこらえようと顔をしかめて、それでもこぼれる涙に悔しそうに唇を噛んで、『勇者』であろうと必死な彼女。けなげでいじらしくって……オレのハートはキュンキュンと鳴った。
その後、『ドレッド』悪魔が現れ……てか、ぜんぜんドレッドじゃないじゃん! 髪の毛は黒い翼じゃん!
マリーちゃんに『マッハな方』が憑依した。けど、お得意のグッバイの魔法は唱えない。『ドレッド』悪魔の監視のために来たみたいだ。
それから、魔法陣反転の法の研究の時間となった。
オレは賢者だ。
助言する立場ではあるけれど……
大学レベルの技法理論なんか、さっぱりわかんない。
賢者になった時、あらゆるジョブの指導者になれる知識を神様から貰ってはいる。だが、しかし。指導できるのは、初級〜中級ジョブの人間まで。中等部レベルの知識しかオレにはないんだ。
セリアさん達の会話についてゆけるわけもなく……
バカ弟子の野郎は「テーブルが狭いから、どいてくれないか?」とか言いやがるし〜〜〜〜
接待役に回ることになった……
ジャンヌちゃんたちの方に行く前に、『マッハな方』から「きさま、まがりなりにも賢者になったのだ。神の御心にそわぬ言動をとるなよ」って釘をさされた。
そのへんは、まあ……わかってるつもりだ。
語るべきじゃないことを口にしたら、声が出なくなるとか、女神の強制降臨とか起きそう。せっかく異世界の百一代目が来たのに、そんな風になるのは嫌だと思った。
勇者ジャンヌちゃん、その義兄(向こうの世界のジョゼなんだが、むっさい兄ちゃん。納得いかん……)、『ドレッド』悪魔、それとイザベルさんと、いろんな話をした。
ジャンヌちゃんから得た情報から察するに、
彼女が行った、幻想世界、精霊界、英雄世界、ジパング界、エスエフ界は、
オレが行った同世界の、並行世界だ。似て非なる世界だ。
しかし、魔界は同じ世界と思われる。となれば、その裏世界の天界もまた同じ世界ではないだろうか?
彼女の世界の男神と、うちの な女神。
両者がどのような関係にあり、それぞれが何故並行世界を管理しているのかはわからない。
しかし、彼女の世界には、ブラック女神が居る。
な女神が、魔王戦の後、 で言った勇者と魔王を とする神魔の が、彼女の世界でもまた繰り広げられているのではないか?
だとしたら、 女神はまた、オレに をついたということになるのでは……
つーか!
女神様!
あんた、今、検閲してるだろ?
書いた文字、消しやがって!
前の方、意味不明になってるよ!
つまり、公開禁止事項なわけ? オレの推測は……。
百一代目ジャンヌちゃんは、
オレとシャルル、イザベルさんの精霊五体を伴侶とし、
お師匠様のファントムクリスタルを譲られて、もとの世界に還って行った。
彼女の世界で魔王が目覚めるのは、三十六日後。
残り世界 三。
仲間にする伴侶は、あと二十九人だ。
頑張ってくれ。
本当は、百人目の伴侶のことを伝えてあげたかったが……
女神様の邪魔が入るだろうから、言わずにおいた。
キミかキミの世界の人が真実に気づくことを、心から祈る。
* * * * *
『賢者の書 102代目勇者シャルルと共に ジャン記』
●女性プロフィール
名前 ジャンヌ
所属世界 勇者世界の裏世界(並行世界)
種族 人間
職業 百一代目勇者・精霊支配者
特徴 託宣を叶える術を探して、オレの世界に来た。
明るく朗らか。素直。感受性豊か。
おおざっぱで、細かいことは気にしない。
性格までオレに似てるとお師匠様は言ったけど、
彼女の方が勝気。怒りっぽい。
ベティさんをオレに押しつけようとした。
なにげに、ひどい。
戦闘方法 ジャンヌの剣(片手剣)。
オニキリ(ジパング刀。ヨリミツより借りた物。
その世界のヨリミツは男のようだ)。
精霊使役。
年齢 十六歳
容姿 黒髪黒目。
小柄、ほっそりしている。
胸もお尻も控えめ。
十六歳だし、成長過程と思われる。
口癖 『どうにかなる』『キュンキュン』
好きなもの 仲間・お師匠様(賢者シメオン)
嫌いなもの ベティさん?
賢者に一言 『あなた、賢者……よね?』
第12章本編は、明日アップし、以後隔日更新してゆく予定です。
みてみんに、アナベラのイラストなどがあります。そちらもご覧いただけると嬉しいです。
http://6753.mitemin.net/




