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きゅんきゅんハニー  作者: 松宮星
幻想の野ふたたび
177/236

大団円……と思いきや

 ドワーフの王様が鍛えてくれたアタシの武器。


 宝石や模様で彩られた鞘。

 柄頭は、口を大きく開いた勇ましい顔のドラゴン。モデルは、たぶんデ・ルドリウ様だ。

 柄は長すぎず、短すぎず。握りやすく、細身で軽いから振りやすい。

 試し切りさせてもらったら、アタシの胸まであるような大岩を一撃でパカーンと割れた。勇者(アイ)でみたところ、ダメージは64万ダメージ! 今まではオニキリを使っても、10万ちょっとしか出せなかったのに!


 アタシの手にしっくり馴染むいい武器だと思う。


 何かが足りなくって、真の力は引き出せてないみたいだけど……

 それでも、十二分に強くなってる。


 ドワーフの王様にお礼を言って、アタシの剣を受け取った。


 長い間お借りしていた『不死鳥の剣』はお返しする。

 ジパング界でゾンビに囲まれた時、この剣に助けられた。お別れはちょっぴり寂しいけど、アタシにはヨリミツ君から借りたオニキリと、ドワーフの王様からいただいたアタシの剣がある。

 手は二本しかないんだもん。不死鳥の剣はもう持てない。


「そなたの剣に名前をつけてやってくれ」

 ドワーフの王様に頼まれたので、ちょっと考えた。

 ベタに『勇者の剣』でいいような気もする。

 でも……

「世界に一本しかない、アタシだけの武器だから……『ジャンヌの剣』にします」


「わかりやすい。いい名前だ」

 ドワーフの王様は、満足そうに頷いた。



* * * * * *


 

 アタシは、モテモテだ。


 部屋に押しかけて来た男どもが、寝させてくれない……。


「ヨメ。いい月。オレさま走る。群れ、いこう。エドモン、いっしょ。二人とも、オレさまのもの」

《こら。やめろよ。おねーちゃんは、もう寝るんだよ。帰るんならひとりで帰れよ。オオカミのおねえさんがまってたぞ》

「すまん、カトヴァド、聞き分けてくれ。ジャンヌはまだ忙しいんだ、おまえとは一緒に行けない」

《そーだよ。つれてくんなら、エドモンおにーちゃんだけにして》

「いや。エドモンを差し出したら、ジュネが怒るぞ……カトヴァド、走るのは無しだ。今日は寝よう」

「ねる? いいぞ、ねる。オレさま、ヨメのベッド」

《ダメに決まってるだろ!》

「オレさま、ちっちゃい。いっしょ、へいき」

《むぅぅ。なら、ぼくもいっしょにねる! ぼくはおねーちゃんの騎士(ナイト)だもん! いいよね、ジョゼおにーちゃん?》

「あ、ああ……」


……小狼、美少年、兄さまに囲まれてても、ぜんぜん嬉しくない。

 ひとん家(ドワーフの洞窟)でいつまで騒いでる気? ドワーフさんたちに迷惑よ?

 アタシ、そろそろ寝間着に着替えたいんだけど?

 出てってくれない?


「ジャンヌぅぅ!」

 また一人増えるし!

「聞いて聞いて! ダーモットさんと連絡ついたんだ!」


 お?




 クロードにひっぱられて、どんどん地下へ。

 兄さまや、ニコラ、カトちゃんもついて来て。

 長い階段を下りてった先は、ドワーフの採掘所だった。


 入口の所で、ドワーフの魔法使い二人が合流。

 (ライティング)魔法と、結界魔法。

 二つの魔法を操る彼等に案内され、アタシたちはキラキラと光る水晶の林の中に入って行った。


 水晶ってほんのちょっと大きくなるだけで百年かかるらしい。

 なのに、ここの水晶は、大きなものは柱みたいにデカイ。中には橋ぐらい巨大なものまで。

 大きな水晶体が、足元からも天井からも壁からも無秩序に生えていて……。


 なんというか、圧巻。


 魔法の光に照らされた水晶が、透き通った輝きを放っている……。


《キレイだねえ……》

「石、まずい」

《え? マズイ? 水晶を食べるの?》

「食える」

……食えるのか。さすが幻想世界の狼。

 小狼が、舌で口の周りをペロペロ口。

「肉ある、肉いい。石、食わない」

 非常食扱いなのかな?


 ドワーフ用の狭い通路を歩く。

 くねくね曲がってるし、水晶が障害物になってて先の方が見通せない。かなり遠くまで、水晶の林は続いている。


氷柱(つらら)みたい……」

 天井の水晶群を見ながらつぶやいたら、ドワーフさんたちに笑われてしまった。


《氷柱なわけないじゃん、ジャンヌ》

 ポケットから、赤クマさんが顔を覗かせる。

《ここねー むちゃくちゃ暑いんだよー 蒸し風呂よりずーっと暑いんだからー》

 へー そーなのか。

《そーなの。だーかーらー ひよわなジャンヌたちのために、ファーくんは魔法使いさんを用意したんだよ。闇を照らす光と冷風効果のある結界をプレゼントしてるんだー》

 ファーくん……

 緑クマさんが小声で《ファーガス王、ファーガス王》って教えてくれる……。覚えてるわよ、ドワーフの王様の名前ぐらい! だいたいだけど!

 てか、ピオさんったら、また『かわいこぶりっこ』口調に戻ったのね。キャラつくらないで、()でしゃべればいいのに。

《むぅぅ。ぼくにばっか文句? んもう。キャラづくりは、ピクもやってるのにー》

《お、おら、まえは話相手いなかったから、しゃべらなかったし……。もう、『ピクさん』が素というか、ずっとこのままでいきてぇと思っでる……》


《まあ、ピクはー まねっこ上手だから、いいかもだけどー ピロおじーちゃんなんかー》

《ピオ》

 ヴァンの制止に、ピオさんが慌てて口を閉ざす。


 右手の袖の下のラピスラズリのブレスレットを、そっと撫でた。

 左手の袖の下のアメジストのブレスレット、左の中指のサファイヤの指輪も意識した。


 ピロおじーちゃん、レイ、ラルムは四散したままだ。まだ復活していない……。


《実は、女王さま》

 黄色クマが、コホンと咳払いをする。

《今、ワタクシ、キャラをつくっておりまして……本当のワタクシは黄クマではないのです。女王さまがどーしてもとお望みでしたら、黄クマを脱ぎ捨て、初めてお会いした時の益荒男(ますらお)姿で……》

 いらない。

《マッチョ禿な、裸ネクタイ。ブーメランパンツは脱いでしまいましたので、下がすっぽんぽん……》

 黙れ、変態!

 いらんって言ってるだろうが!


……てか、それ、あんた流の元気づけよね。

 いちお、言っとく。

 ありがとう、ソル。




 精霊たちと内緒話をしてる間に、クリスタルの林のかなり奥の方まで来ていた。


 ひときわ大きな水晶の前に、ドワーフの王様とデ・ルドリウ様、それにエドモンとジュネさんが居る。


 それから……ドワーフの王様より小さな子が三体。

 一体は、エドモンにぴったりくっついている、キャベツ。イケメン風の顔に、すらりと長い手足がステキ。

 もう一体は、横たわった水晶の上で丸まっている。黒猫のミーだ。ピクピクっと耳は動いているけど、細い目は閉じたまんま。すっかりお眠りモード。


 そして、もう一体の子は……

 カラコロカラコロ、鉄下駄の音を響かせて、アタシのもとへ駆け寄って来る。

 垂れたお耳がラブリーな、白学ランの黒ウサギだ。

 その肩に抱えているのは、黒い木刀……ピロおじーちゃんを一撃で斬り裂いた武器だ。


 思わず身構えちゃったけど。


 クロさんは、木刀を両手で高々と掲げあげ、後ろ足で立った姿勢でアタシの前にストップした。


 つぶらな丸い瞳のクロさんが、アタシを見上げる。

 まっすぐに、ジーッと。

 そして、ほんのちょっとだけ抱え上げている黒木刀を揺らす。


「武装を解除する。受け取ってくれって、言ってるんじゃないか?」と、兄さま。

 見れば、向こうでデ・ルドリウ様も頷いている。


 アタシがそれを手に取った瞬間!

 クロさんは、その場でずべしゃっと潰れてしまった!


 は、腹這い! 寝そべりポーズ!


《土下座だそうじゃ》と、デ・ルドリウ様。


「は?」


《そなたに刃を向けたこと、そなたの配下のものを斬ったことを謝っておる。死んで詫びたい、斬ってくれと望んでいるぞ》


 いやいやいやいや!


「そんなのできないわ!」


 てゆーか!

 足をうにょーんと伸ばして寝るその姿は、土下座じゃない! うささんのリラックス・ポーズでしょ?

 か、可愛い……


 胸がキュンキュンした……


 思わず!

 兄さまやニコラといっしょに、身を乗り出しちゃった!


《好きにしてくれ、どんな罰でも受ける、と言っている》


 うほ!


 そこで、ごろりん!


 仰向けポーズ!


 クロさんがバンザイして、おなか見せて寝てるぅぅぅ! わんこの降参ポーズみたい!


 キャァァァァ――!


「かわいい! かわいい! かわいい!」


 アタシの胸はキュンキュンキュンキュンした! 


 クロさんにダイブ!

 ギュッした!

 あああ!

 ほんとは抱き上げたい!

 こんなにふわふわでもこもこな外見なのに、大岩みたいに重いだなんて!

 もっふもっふに見えて、冷たくて硬い。ゴーレムだもんなあ!


「ヨメ、それ、ゴーレム。抱きつく、ダメ。オレさまにしろ」

 嫉妬したのか、小狼のカトちゃんがのっかってきて背中をスリスリ。

 いやん! くすぐったい!


「今、仲直りしてるところなんだ。待ってやれ、カトヴァド」

 兄さまがカトちゃんをどけてくれたもよう。

 ありがとう!


 アタシは腕の中のクロさんに、頬ずりした。

「『ごめんなさい』って気持ちは、ちゃんと伝わったわ! アタシのことはぜんぜん気にしないで! ピロおじーちゃんには、今度謝ってくれればいいわ! クロさんはあの時正気じゃなかったんだもん、気にし過ぎちゃ駄目よ!」


 クロさんのちっちゃな手が、ギュッを返してくれる。


 ああああ、クロさん!


《おねーちゃん……ぼくも、その子を、ちょっとだけギュッしたい……後ででいいから》


「ううう。仲直りできて良かったね、クロさん、ジャンヌ! すっきりしたらさ、ジャンヌ、あっち行ってくれる? ダーモットさんが、あっちで待ってるから!」


 ん?


 デ・ルドリウ様、ドワーフの王様、エドモンとジュネさんがこっちを見て笑ってる。

 彼らのそばには、ひときわ大きな水晶。

 そこに、黒い影が映っている。

 黒のボロボロのローブをまとった、骸骨。肉も皮もない乾いた姿……不死者の王ダーモットだ。


「ダーモット、体は大丈夫?」


《良くはなし》

 水晶の中の骸骨が、カラカラ笑う。

《なれど、しばし我が領域に籠れば問題なし。汝が魔王と戦うが前に、復活を果たすことをかたく約す》

 ダーモットが水晶の中に入ってる……わけじゃなさそう。

 遠くにあるものを映す魔法が働いてるのかな?


《竜王、獣の王エドモン、その相方ジュネ、我が弟子クロードには助言を授けた。勇者ジャンヌよ、汝にも伝えたき事がある》


「何でしょう?」

 アタシは水晶へと歩み寄って行った。

 近寄る必要はないのかもしれないけど……人と話す時は、目と目をしっかり合わせたいもの!


 抱っこしろって蒼狼が追っかけて来たんで、左腕で抱え上げた。


《汝がゴーレムより受け取りし剣であるが、あれは》


「剣?」

 ハッとした。

 さっきクロさんから黒木刀を貰った。でも、手にはない。持ってるのは、カトちゃんだけ……。


「ジャンヌ。これを」

 兄さまが黒い木刀を差し出して来る。

 落っことしちゃってたのか……


「ありがと、兄さま」

 右手で触れると、それはたちまち形を変えた。

 薄く平べったく。

 アタシの掌よりも少し大きいぐらいの。

 宝石みたいにキラキラと輝く黒の鱗へと。


《竜王の鱗だ》


「デ・ルドリウ様の?」


 水晶の前の隻眼の王が重々しく頷く。

《鱗を持つものは、我が庇護下に入る。遠き地にあろうとも、そなたと予は繋がり続ける。助けが要る時は呼ぶが良い。予は空間交替(コンバート)を封じられるゆえ、すぐには駆けつけられぬやもしれぬ。しかし、予が動けぬ時は我が友に頼もう。必ずやそなたを救う》

「ありがとうございます」


 水晶の中のダーモットが静かに語りかけてくる。

《竜王が鱗は、この世界のあらゆる金属よりも硬く、物理防御ばかりか魔法防御にも優れる。ドワーフ王に頼み、汝の望む形としてもらうが良い。汝には既にドワーフ王の鍛えし剣がある。防具にすることを薦める》


 ドワーフの王様が、真面目な顔でアタシを見上げる。

「全身甲冑もつくれるが、時間がかかるぞ」

 う〜ん。

「わしの見たところ、勇者殿は仰々しい鎧は好きではないな?」

「そうですね。防御力は高くても、動きづらくなったら困ります」

 うむうむと、ドワーフ王が頷く。

「魔法金属の鎖帷子に鱗を編み込むのでどうだ? 明日の昼までに出来るが」

 お?

「鎖帷子と言っても、薄いし軽いぞ。通気性も良い。ずっと着てても蒸れぬゆえ、肌着代わりに着ることも出来る」

 おおお!

「ぜひ、それでお願いします!」

 着て帰れます!

「わかった。任せろ。未完成の剣を渡して申し訳なく思うていたのだ。その詫びもこめ、そなたの鎧、できうる限り良いものに仕上げてみせよう」

「ありがとうございます!」



 水晶から、ダーモットの声。

《勇者よ。竜王のゴーレムが倒せしものを含め、汝は三体の精霊を失っている。四散し精霊の復活を早める手段を教える》


「え?」

 そんな方法あるの?


《精霊が司る力を契約の石に注ぐのだ。雷の精霊であれば雷の力を、水精霊であれば水の力を。注ぐ量が多ければ多いほど、復活時期を短縮できる》


 !


《魔素を使ってもよい。雷魔法が得意であるクロード或はクロード配下の雷精霊に、雷精霊との契約の証を託し、雷の魔素の注入を頼むがいい。その他の精霊の分は、ドワーフの魔法使いに頼んではどうか?》




 鎖帷子が出来るまで、ドワーフの洞窟に滞在した。


 ベッドでの攻防は……

 小狼のカトちゃん、ニコラ、それにクロさんもくわえて、みんなで寝る事で解決した。

 青地に黄色のお星様模様。ナイトキャップにお寝間着のクロさんは、ほ〜んとラブリーで……

 アタシはニマニマ、ニコラもニコニコ。

 カトちゃんと違って、クロさんはニコラにも愛想がいい。触らせてもらえてニコラは上機嫌。

 アタシとくっつけて、カトちゃんもご機嫌だ。


 兄さまは何か言いたそうだったけど……

 これ以上人数増やすのはナニなんで、『兄さまもいっしょに寝る?』とは誘わなかった。


……アタシももう六つの子供じゃないんだし。兄さまに添い寝してもらうとか、恥ずかしくって無理だから!



 朝起きてからは、デ・ルドリウ様と一緒に行動。

 近隣の種族に謝罪に行ったり。

 昔の話を聞いたり。

 カトちゃんが『遊べー』とじゃれてきた時は、抱っこしてあげたり。


 クロードは、帰るまでずーっと別行動。クリスタルの採掘所に籠って、ダーモットからいろいろアドバイスをもらっていたようだ。


 契約の証への魔素の注入は、

 レイの分は同じ雷精霊のトネールさんに頼み、ラルムとピロおじーちゃんの証にはドワーフの魔法使いにお願いしてやってもらった。


 還るぎりぎりまで頑張ってもらったものの……誰も復活しなかった。


 残念だけど……

 トネールさんたちのおかげで三体の復活は早まったのだ。

 じきにまた会える……そう思って、トネールさん達に感謝の言葉を伝えた。




 腰に『ジャンヌの剣』をさし、いつもの服の下におニューの鎧を着たアタシ。


 鎖帷子は銀製品のような見た目。だけど、軽くて、絹のようにサラサラ。たしかに肌着の代わりになりそう。

 しかも! 魔法金属製なんで! 自浄効果がついていて! 洗濯の必要も無いのだとか!

 防御力が高くって、お手入れ要らず!

 その上!

「魔法金属は、暑い時にはひんやりと肌になじみ、寒い時には防寒着となるぞ」

 という、いたせりつくせりの性能!

 素晴らしい!

 唯一残念なのは、胴着部分しかないこと。暑さ寒さよけになるとはいえ、手足や首から上に腰から下はノーガードなわけだから……寒い所に行く時はそれなりに着こまないと駄目そう。


 左胸のところに、デ・ルドリウ様の黒い鱗がついている。 

 アタシの掌よりもちょっと大きいサイズ。宝石みたいきらきらと光っていて綺麗だ。

 デ・ルドリウ様の鱗が、これからアタシの心臓を守ってくれるのだ……。



『勇者の書96――シメオン』を荷物の中から取り出した。



「それじゃあね、ジャンヌちゃん。あたしたち、こっちでがんばるから。仲間さがし、がんばってね♪」


「……手紙を書いた。じいちゃんに届けてくれ」


《こたびは約束を果たせなかった。が、魔王戦よりも前に仲間候補を集めておくようにいたす。百人の仲間を集められぬ時には、再来訪するがよい。強く美しきものを紹介いたそう》


 幻想世界に残るエドモンとジュネさん。

 正気に戻ったデ・ルドリウ様。

 かわいいクロさん。

 クロードに向かって、もこもこの太い尻尾を振っているミー。

 エドモンの足にぴったりとくっついているキャベツ。

 クゥーンクゥーン悲しそうな声をあげてはいるものの、ちゃっかりエドモンの腕の中におさまってるカトちゃん。

 手を振ってくれてるドワーフの王様。


 みんなに見送られながら、アタシは……


 幻想世界に別れを告げ、仲間達と共に、もとの世界へと還っていった……



 お師匠様には会えなかったけど。

 幻想世界に平和を取り戻せたし、デ・ルドリウ様もエルドグゥインも死なせずに済んだ。


 めでたし、めでたし、ね!





……などと思っていたアタシは、地を這うように恐ろしげな声に迎えられた。



「・・・ようやく帰還か、女。この俺を待たせるとは、つくづく、まったく、徹底的に、神を恐れぬ所業だな」


 魔法絹布を見下ろす位置に、冷たい笑みを浮かべた使徒様がいらっしゃって……


「慈悲深きこの俺が、遺言ぐらいは聞いてやろう。今すぐ、ただちに、とっとと言え、女。この俺の聖戦を邪魔してくれたのだ、その報いを受けるがいい」


 えっと……


 そう言えば、アタシ、グッバイの魔法を使わせてる最中に、こいつを体から追い出したんだっけ。



 もしかして、めちゃくちゃ怒ってる……?

きゅんきゅんハニー 第10章 《完》



 第11章は、10月半ばから連載開始の予定です。

 発表のめどがたちましたら、活動報告でお知らせします。


 これからも「きゅんきゅんハニー」をどうぞよろしくお願いいたします。

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