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きゅんきゅんハニー  作者: 松宮星
幻想の野ふたたび
171/236

忍び寄る刺客

 森の王の姿も小さな白い花も、何もかもが遠退いてゆき……


 気がつけば、アタシとニコラはもとの場所に戻っていた。



 天を摩するほどの大木に囲まれた場所――森の王の座所だ。


 けれども、そこには、誰もいない。

 ジョゼ兄さまもジュネさんも。

 エドモンもエルドグゥインも。

 エルフたちも。


 鳥の声すらしない。


 森は静寂に包まれていた。


《おねーちゃん》

 つないでた手をぐいっとひっぱられる。

 ニコラだ。

 いつも通りの。

 髪も肌も服も目まで真っ白で半分透けている。


《……だいじょうぶ?》

「なにが?」

 ニコラはほんの少し目を細め、悲しそうにアタシを見あげている。

《泣いてるよ》


「え?」


 あいてる方の手で、慌てて顔をぬぐった。


 気づかなかった……。


 昔、デ・ルドリウ様とお師匠様は仲良くなかった。

 まあ……愛娘(マルヴィナ)が異世界勇者の騎乗竜になる、怪しい男にくっついて行って異世界で命がけで戦って来るなんて言い出したわけだから、パパがプッツンするのも当然なわけで。

『勇者の書 96――シメオン』の中で、お師匠様はデ・ルドリウ様から一方的に嫌われていた。


 だけど、このまえ、二人はたいへん穏やかに対面していて……

 書の中の二人と結びつかなかった。


 お師匠様が勇者を退いた後、二人の関係が変わるような事件があったんだろうとは思っていた。


 それが、こんな悲しい事件だったなんて。


 マルヴィナの死を伝えに来たお師匠様を、デ・ルドリウ様は怒り狂って襲い……

 不死のお師匠様は抵抗もせずに、殺され続けた。


 マルヴィナの思いに応えなかった自分を悔いながら。


 お師匠様は、心からマルヴィナを愛していたのだ……


 おそらく今も……


『私は、あらゆることに、倦んでいたようだ。その思い故に、ブラック女神の器に選ばれたのだろう』

 そう言った時、お師匠様はほんの少しだけ口角をあげていた。

 まるで微笑むかのように。



《おねーちゃん……》

 ぎゅっと手を握られた。


「大丈夫よ」

 笑みをつくった。

 泣いてなんか、いられない。

 泣いても、ニコラを不安にさせるだけ。

 早く行かなきゃ。


 お師匠様がデ・ルドリウ様を暴れさせているのなら、なんとしても止めなきゃ。


《うわぁ!》

 ニコラが突然大きな声をあげる。

《なに、これ?》


 ニコラが左手を、アタシに見せる。

 ニコラの掌に……

 あの花が咲いていた。


「え?」


 掌を大地の代わりとして、小さな白い花がすくっと立っている。茎も葉もある。

 けど、本物じゃない。

 触ろうとしても、触れない。手は、すかっと宙を切るだけだ。

 それに、ニコラが掌を下向きにすると、花はフッと消えてしまった。

 で、掌を上にすれば、また白い花が現れる。


 手の甲の方に根があるわけでもないし。


 淡く綺麗に光っている……。


「幻……?」

 よね?


《これ、森の王さまからのおくりもの?》

「そうね」

 そうとしか考えられない。

《これで、ピアさんを助けられるの?》

「きっと、そうね」

 そうなんだと思う!

 どうやって使うんだか、わかんないけど!


 アタシは、辺りを見渡した。

 やっぱり、誰もいない。

 てか……

 静かすぎない?

 小鳥や虫の声もしない。

 森は、ひっそりとしすぎている……。


 なんで、こんなに静かなんだろう……?



 アタシが一歩前に踏み出すと、地面からぬ〜っと人影が現れる。そこから生えてきたのかのように。


「うひぃ?」

 びっくりして後ずさるアタシ。

 現れたのは、エルドグゥインだ……半透明の。

 どう見ても、実体じゃない。

 胸元に手をあててエルフの王子が、こちらへと会釈をする。

【勇者さま、そして獣の王殿。私は、あなた方が決めた決戦の地へ向かいます。森の王を信じ、一昼夜だけ待ちましょう。あなた方が現れぬ時は、美しく強く賢い私が勇者となり、竜王を倒すだけです】

 彼の左手には弓があった。いや、前も持ってたんだけど。形が変わっている。

 弓に蔓が絡まりついてるわ、妙な模様がついているわ、やけに大きくなっているわ……長弓がエルドグゥインの身長よりもデカくなっている。

 この物騒な武器が、森の王からの祝福なのだろうか?


 現れた時と同様に、唐突にエルドグゥインの姿が消える。


 ニコラの頭の上から、小指サイズの白クマさんがひょこっと顔をのぞかせる。

《メッセージ魔法だクマー。特定の人物が近寄った時のみに幻影が現れる仕掛け。伝言入りの種を地中に埋めておいたのじゃな》

 へー

 そいや、エルドグゥイン、このまえもそんな魔法使ってたような。


「アタシ、どれぐらい森の王の国に行ってたのかしら?」


《さてのう。妖精の国というのは、えてして時の流れが異なる。ようわからんが……》

 白クマさんが、首を傾げる。

「この気温、木々の間に漏れ入る光の角度から察するに……今は朝じゃなクマー》


「朝ぁ?」

 森の王の座所に着いたのは、昼過ぎだった。


 てことは……少なくとも半日以上あっちに行ってたわけで。


 サーッと血の気が引く。


 エルドグゥインは、もうデ・ルドリウ様に挑んでしまったのだろうか?

 それとも、まだぎりぎりセーフ?


「早く行かなきゃ!」

 ニコラの手を引いて走り出したアタシに、ピロおじーちゃんがのんびりと言う。

《そっちは南じゃクマー。精霊支配者よ、ドワーフの洞窟は、悠久の森より東ではなかったかクマー?》

 そういうことは早く言って!


《まずは、落ち着くのだ、精霊支配者よ。状況確認じゃ。配下の者と連絡をとるがいい》

 配下の者?

 って誰?

《ソルを獣使いに、ヴァンを弓使いにつけたであろう? 契約の石を通じて、それぞれの状況を問うがいい。外界でどれほどの時が流れておるかもわかるじゃろう》


 あ。


 そっか。護衛兼連絡役に、ソルたちを預けてたんだっけ!


《また、精霊支配者の兄の炎精霊は、ピオの半身。同世界であれば、どれほど遠く離れていてもおしゃべりできるはずじゃぞ……あ、いや、クマー》

 そいや、そうだった!


 んじゃ、さっそく。

 走りながら、アタシは左右の耳のイヤリングを通して問いかけた。

「アタシがこもってから、どれぐらい経った? そっちはどうなってる? 教えて」と。


 イヤリングから、二人の声がする。

《あああ、女王さま。よくぞご無事で。女王さまが異空間に籠られてから、十八時間が経過しております。ワタクシですか? 獣使いの指導の下、昼夜兼行の突貫作業中にございます。なかなかに激しいお方で、ビシバシと容赦なく使われております。で、ですが、ワタクシは、やはり未成熟な果実のような女王さまの愛の方が、より、》

《よ。オジョーチャン、無事で何より。こっちも少し前に出て来たばっか。現在、獣の王のあんちゃんを目的地に護送中〜 あ〜 森の王の祝福も、ばっちりもらったぜ。なんというか……いろんな意味ですごいことになってるよ、うん。再会に、乞うご期待!》


 ピオさんも、ペンダントから出て来てもらった。

《んー ピナが教えてくれたー エルグくんはー もうジョゼといっしょにいるよ》

 エルグくん……

《けど、まだデルドくんと戦ってないよー デルドくん、好き勝手にあばれてるんだってー だから、エルグくん、すっごいカリカリしてるー もう()る気まんまんって感じ》

 デルドくん……


 でも、良かった……アタシの伴侶二人がまだ戦ってなくって……


「あ、そうだ。誰か、クロード知らない?」


《しらなーい》

《一緒には居ないぜ》

《あのMの坊やですか? こちらには来ておりませんよ、女王さま》

 ちょっ! ソルにM呼ばわりされたら、終わりなんじゃ!


 クロードは、まだ妖精の国なのかしら?

 むぅぅ。

 待ってらんないから、先に行こう!


 目指すは、ドワーフの洞窟手前の草原。

 そこにジュネさんが、エドモン専用の陣を組んでいる。

 草原にデ・ルドリウ様を誘い込む作戦らしい。


 ピロおじーちゃんがのんびりとした声で言う。

《記憶を読んだクマー。徒歩での移動は、すすめぬクマー。エルフの加護下ですら、目的地まで一日かかったのじゃぞ。加護なしでは、もっと遅くなる。到着した時には、すべてが終わってることになりかねぬクマー》

 え〜

 このまえは、移動速度アップ状態になってたわけ? 知らなかった!


《ヴァンの風渡りであれば、目的地までさほどかからぬ。どうする? 呼び戻すかの?》

「それは、ダメ。ヴァンには、今回の主役エドモンをとっとと運んでもらわないと」


《あ、オレ的にも、こっち専属のがいいかな》

 契約の証から、ヴァンの声がする。

《ちょっと今ね、お荷物(かりゅうど)がすっごく特殊な状態になっててさ、デリケートに運ばなきゃなんだわ。そっちでどうにかしてもらえるかな?》

 特殊な状態って……いったい今どうなってるの、エドモン?


《であれば、ピクを使うか》

 アタシと同化している闇精霊が、緊張しながら尋ねる

《なにすればいいんですか、ピロさま?》

《闇結界を張り、闇から闇へと渡り、東を目指すのじゃ》

《闇渡りですか。だども、今は朝の時間で……日の光がいっぱい……》

《ここは裸地ではない、森の中じゃ。光差すところには、陰が生まれておる。木の陰、葉陰、岩の陰。陰から陰に渡るがよい》

《陰から陰……》

《コツをつかめるまで、わしが導こう》

《ありがとうございますだ、ピロさま》

《なぁに、闇と光の精霊の性質は、風精霊の次に人間の運搬に向いておる。幻想世界では魔素も使えるゆえ、さほど難しきことではない……あ、いや、クマー》

 おじーちゃん、無理矢理『クマー』を付けなくても……。




 木々の間を縫うように、陰から陰へと移動する。

 飛ぶというより、大ジャンプに近い。

 一回に跳ぶ距離は、それほどでもない。

 けど、ジャンプを繰り返してくれるから、アタシが走るよりもよっぽど速い。


 結界がすっごく狭いのだけが、難点ではある。アタシとニコラは膝を抱えて座っている。立つのは無理。身じろぎもしづらい。

 でも、日の光の多い時間帯に、ピクさんは頑張ってくれてるんだ。

 文句を言ったら、ばちがあたる。


「ん?」

 前方が騒がしいような?

 静か過ぎた森の中に、徐々に音が戻ってきている。


 どどぉん……

 ばっさーん……


 海鳴に少し似てるような……?


 けど、この、バキバキって音は……?


《精霊支配者よ。エルフたちが戦っておる》


 なにと? と、聞く前に、視界が開けた。


 それまでずっと、アタシたちは森の底に居た。

 顔を上げても、天井のように広がった枝と青葉が見えるばかりだった。他には、葉の間から漏れ入る日の光ぐらいしか見えなかったのに……


 その緑の天井が、無くなっているのだ。


 アタシの目に、大きな黒いものが飛び込んでくる。


「巨人……?」


《ゴーレムじゃな》


 見上げるほどに大きなそれは、魔界の王よりももっと大きく……そして醜かった。


 なんと言えばいいのか……

 下手くそな泥人形とでも言おうか。

 曲がったままの大きすぎる頭、目も鼻も口もない顔。長すぎる手、短すぎる足。

 すべてが、気持ち悪いほどにいびつだ。


《この子も、ゴーレムなの?》

 ニコラの声は、茫然としている。

 ピアさんとは似ても似つかない醜い姿に、驚いているようだ。


 魔法によって、土くれと岩より変化したもの。それが、ゴーレムだ。

 幻想世界では、わりとポピュラーな使い魔。外見は作り手次第ではあるけれど……作ったのは、ゴーレム魔法が苦手なひとか、デザイン・センスが皆無のひとなのか……このまえ見た野良のゴーレムのが、よっぽどマシな姿だった気がする。


《こやつ、気がピアとよう似ている……竜王のゴーレムじゃな》

 ピロおじーちゃんが、断言する。

《動物や鳥では花エルフに勝てぬゆえ、魔法生物を送りこんできおったのか?》


 体のバランスが悪いせいか、動きは緩慢だ。

 けれども、デカすぎるそれが、のろのろと動くだけで、森の樹木はなぎ倒され、潰されてゆく。


 森が壊されてゆく……。


 ゴーレムが目指す先は……

 森の王の座所?


 森の王を狙ってるの?


《おそらく、な》



 見れば……

 巨人を囲むように、エルフたちが居た。

 たぶん、エルドグゥインの取り巻きだったエルフたち。

 弓や魔法を、巨人に向け放っている。

 だけど、巨人の黒いボディは、全ての攻撃を弾いちゃう。ぜんぜんダメージになってない。

 魔法で巨人の足元を流砂状にしても、効果なし。大地がやわらかくなっても、黒い巨人は平然と歩いている。足止めになってない。


《愚かな。ゴーレムに土魔法なぞ効くか》


 迫る巨大ゴーレム。

 エルフたちは、じりじりと下がらざるをえない。


《精霊支配者よ、命令を》

 ピロおじーちゃんのリクエストに、とっさに答えた。

「任せる!」

 好きに動いて!

 ピオさんも、ピクさんも。


 ピロおじーちゃんから、ゆらりと白い霧が生まれ……

 瞬く間に、黒い巨人の足が凍りつく。

 氷が、ゴーレムを大地に縛りつける。


 巨大ゴーレムの歩みは止まった。


 エルフたちから、歓声があがる。


 けど、全身を凍らせたわけじゃない。氷の広がりは、ゴーレムの膝上あたりで止まってしまった。いつものピロおじーちゃんなら、敵を完全に氷の中におさめるのに。


《空気中の氷の魔素を使って、ここまでか……》

 声にも余裕がない。

《こやつ、魔法防御が高すぎる……》


《ピアさんの何百倍も強いよねー ゴーレムのもとになった石が、ピアさんのよりおっきいんじゃないのー? でも、まあ、ピロおじーちゃんなら、氷の古老だしー 足止め、ばっちりだよねー》

 ピオさんは明るくそう言ってから、えへっと笑う。

《ピロおじーちゃん、今こそ、カッコイイおやくそくを言う時だよー》


《うむ。精霊支配者よ。ここはわしに任せ、先に進むがよい》

 ニコラの頭の上から宙へと、白クマさんが浮かび上がる。


「え? でも?」


《そなたには、勇者としての使命があるはずじゃ。このような所でグズグズしておらず、早く決戦の地に向かえ》

 ピロおじーちゃん……

《そして、ニコラよ。森の王より贈られた祝福には、必ずや意味がある。ピアの友人として、ピアのためになることは何かを考え、行動するがいい》

《うん。そうする。ありがとう、ピロさん》

《うむうむ。……あ、いや、クマー》

 それは、いいですってば。

「わかりました。アタシたちは、先を急ぎます」


 立ち去るアタシに、エルフたちが声をかけてくる。

「ありがとうございます、花エルフの友よ」

「卑劣な森の破壊者めを止めて下すったこと、赫々たる我が一族は感謝します」

「誇り高き我が一族は、受けた恩を決して忘れません。エルフの友の歌を語り継ぐことをお約束します」

「栄えある我が一族の王子と、あなた方の獣の王は、既にドワーフどもの洞窟へと向かいました。エルフの友よ、森の守護は大自然の護り手のエルフがいたします。あなたもどうぞお急ぎください」

 むぅ……エルドグゥインといっしょだわ。美辞麗句好きは、花エルフの一族特徴だったのか。


《てなわけで、ピク、Goだよ!》

《うん。わがっだ》

 でっかいゴーレムが通って来たところは、ひどい状態だ。長い時を生きてきたであろう木々が、無残にも倒されている。

 けど、日陰がぜんぶ無くなったわけじゃない。


《跳べる》

 日陰から日陰へピクさんが飛ぼうとした……時だった。


 ひゅんと、何かが宙を切り……


 アタシの目の端に、信じられないものが映る。


 もこもこの白い毛皮、つぶらな黒い瞳、小さなお鼻、小さなお口、丸いかわいいクマ耳。

 かわいらしい白クマさんが……

 一瞬で、真っ二つになった。


 頭から足までを、一気に両断されたのだ。


《ピロさまぁ!》


 ピロおじーちゃんは二つに分かれた姿のまま、空にのまれるようにフッと消え……


 巨大なゴーレムを封じていた氷が、少しづつひび割れ、ガラガラと音をたてて崩れ始める。

 術師が消滅したが為に。


《ジャンヌ!》

 突如、アタシの前に猛烈な勢いで炎が吹き上がる。

《ふぬけんな! 死ぬぜ!》

 宙に浮かんでいるのは……赤クマさんだ。

 こちらに背を向け、両手をつきだし、炎を操っている。

 前だけじゃなかった。炎はアタシの周囲全てを覆っている。アタシを守る炎結界だったのだ。

《あ〜 ちくしょう〜 だめだ》

 赤クマさんが、チッと舌打ちをする。口調が、すっかり別人だ。()に戻ってる。

《敵と炎の魔素の取り合いかよ》


 オレンジ色の炎。


 半透明な炎の壁の向こうに、敵が居る。


 黒くて長い棒――いや、先端が切っ先のように尖ったそれは、鍔のない刀のようにも見える――を持ったものが、炎の向こうから武器で挑みかかっているのだ。


《木刀を模した武器だ。けど、ああ見えてあれは、闇と炎の塊だ。硬度もムチャクチャ。あれはまちがいなく、》

 敵の攻撃を、ピオさんの炎の壁が防ぐ。

《武器の形をした、竜王の体の一部さ。ピロおじーちゃんは、こいつに負けたんじゃない。こいつの武器に、()られたんだ》


 敵は、とても小さい。

 身長は、アタシの膝ぐらいしかない。

 跳躍しては武器をぶつけ、着地してはカラコロと音を立てる。


「そんな……」


 こうなるかもしれないと、わかってはいた。

 覚悟もしていた。


 けれども、それでも……


 実際に目にすると、悲しい気持ちになる。


 垂れた耳、丸い瞳、闇のように黒い毛の、とても愛らしい姿。

 なのに、白の学ランを着ているのだ。長いお耳とお耳の間にちょこんとのってるのは白の学生帽、履いているのは鉄下駄、くわえているのは長い楊枝ならぬ牧草で……


「クロさん……」


 ピロおじーちゃんを四散させたのは、この子……。

 アタシのゴーレム。

 番長黒ウサギのクロさんだ。

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