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きゅんきゅんハニー  作者: 松宮星
堕ちた勇者
142/236

真実の鏡

《と、いうわけでー ユーシャのナカマになっちゃいましたー》

 死神王サリーが、左のげんこつで自分の頭を軽くコツンと叩く。てへ★って感じに、ペロッと舌を出しながら。

《ユーシャのカミのカゴがついちゃってー あたし、ヒトにワルさができないカラダになっちゃったんだー》


 城門を抜けると、広い庭園だった。色とりどりの花々が咲き誇り、天使の彫像がかわいらしく時にはユーモラスに配置された美しい庭だ。

 みとれていると、その先の城から、すごい勢いでたくさんの人間が飛び出して来た。

 サリーに魅了され、操られ、強制的に『人形』にされていた人間たち。

 綺麗な人、愛らしい子、素敵な方……美男美女ばかりだ。


 彼らに取り囲まれたサリーは、ごめんねー と明るく謝っている。

《ユーシャのナカマのシルシがキえるまでー ヒトをコロしたり、キズつけたり、センノーできないんだー だからねー キミたちにかけたマホウもとけちゃったわけー》


 全員、死神サリーとまったく同じ格好。

 頭に輪っか飾りをつけ、背中に羽飾りがついた白いミニドレスを着てたりする。ミニドレスは、スケスケのレースだから下着が丸見えだ。

 この格好……女の子がやると、すっごく可愛い。色っぽいおねえさまが黒レースの下着なんか着てると、ドキドキしちゃう。

 だけど……

 男まで、天使コスプレなのよ!

 細マッチョな美形が、スケスケ・ミニドレスとか〜〜〜〜

 レース柄のメンズブラとか〜〜〜〜

 お揃いのショーツとか~~~~

 視覚の暴力よ!

 アリス先輩ならガン見だろうけど、アタシには無理!


……うつむくしかない。


《ニンゲンへのシハイリョクをウシなったからー と〜ってもザンネンだけど、キミたちはもとのセカイにかえすね》


 庭園が、悲痛な声に包まれた。


「あああ、どうぞご慈悲を。この愛の城にずっと置いてくださいまし。私はあなた様の愛人形でいたいのです」

「やだやだやだ! サリーさまといっしょがいい!」

「もとの世界に還されるぐらいなら……今ここで命を断ちます」

「ボクも死にます! サリー様のいない人生なんて考えられない!」

「サリー様、愛しています!」

 ボクも私もオレもと、みんなが死神王に群がる。


《う〜ん……でもぉ、ユーシャちゃんのセカイのカミさまがぁ、ニンゲンでお人形あそびしちゃダメってゆうんだもん》


 天使コスプレの人たちが、ギン! とアタシを睨みつける。

 敵意も露わというか……殺気までビンビン!


 おかしい!

 あんたたち、洗脳が解けたのよね?

 魔眼で洗脳されて、むりやり生き人形にされてたんじゃ?

 なんで、怨みがましい目で睨むのよ!


 アタシのが悪役みたい……。


………


 えっと……


「残りたい人は、残ってもいいんじゃない? 本人の希望なら、神様も文句言わないと思う」

 うぉぉぉ! と、大歓声。狂喜乱舞する天使たちで、城前は揺れに揺れた。

「サリー。この人たちが還りたがったら、いつでも還してあげてよ」

 アタシの言うことなんか、死神王も天使コスプレの人たちも聞いちゃいない。手を取り合い、抱き合い、涙を流して喜びを分かち合っている。


……すっごい疎外感。




 残留が決定した人間たちは、ほくほく顔で城に戻って行った。


 サリーにくっついて、お城の中を歩いた。屍王ダーモットが並んで歩き、その後を荷物を担いだルーチェさんとヴァンがついてくる。

 おとぎの城は、外もすごいけど中もすごかった。綺麗なシャンデリア、透かし彫り、彫刻、メルヘンチックな家具……女の子が喜びそうな、かわいくてゴージャスな内装だ。

 で、城の中には死神サリーの人形……サリーお気に入りの生き物がいっぱい居る。

 廊下、小部屋に、いるわいるわ。美形魔族、美形モンスター、美犬、美猫、美兎……みんな、頭に輪っか飾り、背中に白い翼の、天使コスプレだ。


 そして、天使の装いをさせた生き物の側には、漏れなく死神サリーが。

 あっちにもこっちにもそっちにも、ハート眼帯のチビッコ天使が!


「分身魔法?」

 アタシの問いに答えたのは、サリーのお友達のリッチだ。

(しか)り。一体一体を寵愛する為に、人形すべてに自分をあてがっているそうだ》


 お人形相手に、剣の相手をしたり、料理をつくってあげたり、マッサージしてたり。

 犬や猫や兎を抱っこして、うっとり顔でブラッシングしてる死神王まで……。


《さっきの子たちにもー あたしのブンシン、だしなおしてあげたんだ》


《気づいておるか、勇者。死神王の城には穢れがない。城の結界が、瘴気を完全に遮断しているのだ》

 言われてみれば……

「そういえば、呼吸が楽ね」

《澄み切った空気、あたたかな部屋、栄養豊富で美味な食事。人形たちは、主人に寵愛されあらゆる願いごとを叶えてもらえるのだ。魔界にありながら、この城は人形たちの楽園なのだ》


《だって〜 み〜んな、かわいいんだもん。えがおにしてあげたいんだ〜》

 チビッコ天使はニコニコ笑顔だ。


 天使コスプレたちも、笑顔だ。幸せそう。


《勇者。不満そうだな。魔族のつくりし楽園など許せぬのか?》

 リッチがカラカラと喉を震わせて笑う。

「べつに……」

 アタシは唇を尖らせた。

「アタシは死神王のお人形なんかご免だけど……幸せの形は、人それぞれだもん。当人たちが幸せなら、横から口をはさむべきじゃない。ほっといたげるわよ」


『魔族はぜんぶ、滅ぼすべき悪だ』なんて、もう思ってないもの。


「それより、聞きたいんだけど……」

 歩きながら、アタシはリッチを見上げた。背が高いんだ、こいつ。

「なんで、あなた、ここに居るの?」


《ダーちゃんはね、あたしのアイテムかりにきたんだよ♪》


 ぶっ!


「ダーちゃん?」


 ちっちゃな翼をパタパタさせて空を飛ぶ死神王と、ボロのローブをまとったガイコツが顔を合わせる。


《我が呼称を改めよ、死神王。再三再四、求めたはずだ》


《え〜 かわいいよ、『ダーちゃん』。ユーシャちゃんも、いいとおもうよね?》


「え?」


 アタシは、死神王と屍王を見比べた。


「……『ダーちゃん』は、あんま合わない……かな?」

 赤ちゃんっぽいし。


 それみろとばかり、リッチが頷く。


《え〜 つまんなーい。『ダーくん』じゃ、かわいくない。つまんないつまんな〜い》

 大鎌を持った天使が、ジタバタと暴れる……やだ、かわいい。

《汝、再考せよ、死神王。『ちゃん』も『くん』も、受け入れがたし》

《ん〜 じゃ、『ダーぴょん』》

《再考を求める》


 仲いいわね、あんたたち。


「ダーモットも、魔界貴族なの?」


《然り》


《ニシのとなりのとなりが、ダーちょんのクニ》


《その呼称も拒否する》


《ダーたんは、あたしといっしょ。ひきこもりさん。フシシャ(不死者)を、いっぱいかかえてるけど、ぜったいセンソー(戦争)しないんだー リョウドをぜ〜んぶ、ハカバ(墓場)にして、テシタをねむらせてんの。あのクニをせめると、すっごいかずのシシャ(死者)がめざめておそってくるから、ダーたんのクニをおそうバカはほとんどいないよー》


《その呼称も拒否する》


《あたしとダーりんは、ダーりんが生きてたときからのおともだちー ダーりんを、ほんとーは、お人形にしてあげたかったんだけどー よのなかうまくいかないよね》


《その呼称だけは、断固拒否する。死神王、二度と口にすることを許さぬ》


……ほんと、仲いいわね。


「ねえ、ここで再会したのは、偶然……よね?」

 アタシが魔界に来たのも偶然だし。


 不死の魔法使いが、眼球のない目でアタシを見つめる。

《偶然であり必然。我は真実を求めてこの地を訪れ、汝はつきまとう暗い影ゆえに魔界に到る。我らの道が交錯したことこそが、『運命』であろう》

 むぅ?

「意味がわかんない。……あなた、預言者?」


 骸骨が、カラカラと笑う。

《そのような者ではない。我は魔に堕ちた、愚かな魔法使い。未来予知の魔法であれば、多少は嗜むがな》


《ねー ダーちゃん。ユーシャちゃんに、アレつかうの?》

 サリーの問い。呼称がもとに戻ってしまったものの、ダーモットは文句は言わなかった。

《勇者かクロードに用いようと思うていた。本人がこの場に来たのだ。まさに『運命』であろう》


 アタシかクロードに使うつもりだった?


「アレって、なに?」


《カガミだよ、ユーシャちゃん》

 堕天使がニコニコ笑う。

《あたしのおシロにね、ふしぎなカガミがあるの》


《隠された真実を教え、光の道を示す聖なる道具。遥か昔、天界の至宝の一つであったものだ》


「そんなものが、どうして魔界(ここ)に?」


 ダーモットは沈黙し、サリーは悪戯っぽくえへへと笑うだけだ。


 もしかして……サリーが盗んだの?


《勇者よ。汝が四つ、魔術師クロードが五才の秋、強大なるものが汝らの前に現れたはず。幼きクロードはその者に危機を感じ、魔力にて退けた……我が力で知り得た事はそれだけであった。我が魔力では、クロードの忘却の魔法を払うことかなわず。我以上の力を有する者が、クロードの記憶を改竄したことのみを知りえた》


 それは……


「ブラック女神の器らしいわ」


《ほう? 思い出せたのか?》


「それはまだだけど。マルタンが……アタシの仲間が教えてくれたの。あの日、そいつが邪霊をけしかけたらしいわ」


《魔力にて視た。クロードに忘却の魔法をかけし存在と、先日、汝を次元穴にて襲撃した存在は同一。汝は、幼き頃より、ブラック女神の器とやらに命を狙われている》

 骸骨姿の魔法使いが、アタシを静かに見つめる。

 血肉のないその顔から、感情をうかがうのは難しい。


《汝、真実の鏡の前に立つ勇気はあるか?》


「え?」


《敵を滅ぼす手立て、知りたくはないか?》

 アタシは目をしばたたかせた。

「あいつを倒す方法なんてあるの?」


《あるとは、断言はできぬ。しかし、真実の鏡が、失った記憶、汝の敵の真なる姿を伝えてくれよう。我は不死の魔法使い。汝とは異なる目を持つ者。共に知恵を巡らせれば、汝の進むべき光の道を推し量ることができるのではあるまいか》


「共に知恵を巡らす……?」

 アタシは、リッチを見つめた。


 しゃれこうべに、表情なんかない。だけど、光の陰影のせいか、ひどく禍々しい笑みを浮かべているように見える……


「……どういうこと?」


《どうとは?》


「なんで、そんなに協力してくれるの? なにをたくらんでるわけ?」


《これは異なこと。汝が仲間クロードは我が弟子。弟子の為に師が動くのはおかしいか?》


「弟子ぃ? たった一日だけの弟子でしょ? 肩入れするとか、おかしいわ」


《ますます異なことを。好悪の感情は一瞬で決まることもあろう。一目で、黒兎、黒猫、キャベツのゴーレムに惚れた汝の言葉とは思えぬ》


 ぐ!


《クロードは『良い人間』だ。それ故、我は気に入り、あの者の未来の影を取り払うべく動いている》

 リッチはまっすぐにアタシを見ている。

(われ)が魔族ゆえ、不安に思うているのだな。案じずともいい。代償なぞ、何も求めぬ。汝からも、汝の幼馴染からも。死神王とは貸借の契約を結び終えている。汝は、ただ鏡を使えばいい》


「ますますわかんないわ……あなたが何でそこまでしてくれるのか……」


《我は、クロードとそして汝に好意を抱いている》

 へ?

《汝らとの邂逅は、久々の心地よい刺激であった。二人の未来が闇に閉ざされてはつまらぬ。それゆえ、助力しておるのだ》


 ますます意味がわかんない。

 気に入られるようなこと、した覚えないんだけど。

 腐った沼の島で会って、《力が欲しくないか?》って聞かれたから、つっぱねた。

 それだけなのに。


 むぅぅ?


……一目惚れされた?


《そーそーそー みかえりはいらなーい。すきなだけ、カガミつかっていいよー》

 チビッコ堕天使が、にっこりと笑う。

《かりちんは、ダーちゃんがはらってくれたから♪》

 ダーちゃんの天使さん、うつくしかった〜 などとサリーは浮かれている。またやってくんない? とお願いしたら、屍王に断固拒否すると断られてたけど。


 このガイコツが、天使コスプレ……?


 つけまつげビンビンの口紅べったりのガイコツが、スケスケ・ミニドレスを着ている姿が脳裏に浮かんだ。


………


 ふらっとよろめいたアタシを、後ろにいたクマさんたちが支えてくれる。


 美しい? 正気? 骨にスケスケドレス着せて、何が楽しいの? 目が腐ってない?

 サリーに言いたいことはいっぱいあるものの……


 アタシは、あらためてリッチを見上げた。

 これだけは言っておくべきだろう。やっぱ……


「失礼なこと言ってすみませんでした。いろいろと……その、ありがとうございました」

 クロードやアタシのために、あのナニな天使コスプレを……。

 ぜったい、喜んで女装するタイプじゃないのに。

 どうして、そこまで尽くしてくれるのかさっぱりわかんないけど……感謝、感謝だわ!

「鏡、お借りします」


《うむ》

 リッチが重々しく頷く。

 この骸骨が天使コスプレか……。


《ん〜 じゃ、きゅうけいだね♪》

 へら〜と、サリーが笑う。

《アレつかうと、すっごいつかれちゃうからー たいりょくかいふくがさき〜 おちゃにしよー》




 サリーが案内してくれたのは、テーブルクロスからしてレースひらひらの乙女チックな内装の部屋だった。


 なのは、いいとして!


 先客がいたのだ!


 テーブルの上にのっかって、イヒヒと笑ってる!


《よぉ。大活躍だったねえ、ゆーちゃちゃま。なかなかの見物(みもの)だったよ》


「死霊王!」

 首から下がハーピーな奴に向かって叫んだ。

「よくもアタシの前に顔を出せたわね!」


《おや? ごきげんななめだねえ。怒ると、小じわが増えるよ》

 グヒヒと笑う下品な顔が、頭くる!

「涼しい顔して! アタシを置いて、逃げたくせに!」


《逃げたぁ? バカ言うんじゃないよ、あたしゃ、あんたを見守ってたんだよ。ずっと離れた、遠い遠い空の上からね》

「それを逃げたって言うのよ!」

 死霊王がヒヒヒと笑う。

《サリーの魔眼を破るとは、正直驚きさ。小娘のくせに、頑張ったじゃないか。あんたには、ジャンとは違った面白さがあるね》


「それから、それ!」

 アタシは、ハーピー魔王をびしっと指差した。

「その癖、いいかげんやめて!」

《癖?》


「アタシはアタシよ! 勇者ジャンとは別人なの! なにかにつけて比較するのはやめてちょうだい! 不愉快だから!」


《なに怒ってるのさ。変な子だねえ。あんたとジャンが似てるのは、あたりまえだろ? あんたらは裏と表の》


「あんたと死神サリーはそっくり!」

 アタシが叫ぶと、室内はシーンとした。


「って、アタシが言ったら、あんた嫌でしょ?」


《あったりまえだろ! こんなイカレ堕天使といっしょにすんな! 陰険で執念深くってエゴイストで、こいつはほんとに最低な奴なんだから!》


《むぅぅ。ひっどぉい〜 ベティちゃんこそ、ボークン(暴君)じゃん》


《はぁ? あたしほど、子分にやさしい魔界貴族はいないよ。王自らが子分どもを切り刻んで、新たな姿につくりかえてあげてんだからね》


《いやがってる子も、むりやりカイゾーしちゃうでしょ》


《いいんだよ。最後には、みんな喜んでるんだから。あんただって、気に入った人間を誘拐しまくり、生贄要求しまくり。エゲツないハーレム魔王じゃないか》


《み〜んなひとしくあいしてるもん》


《愛? 天使コスプレさせて、尽くしまくるのが? ただの代償行為だろ。ほぉんとミジメったらしいったらありゃしない。あっちは、堕天したあんたなんざとっくのとうに忘れてるだろうに》


《うるさいよ、ベティちゃん。お人形にしちゃうぞ〜》



「ほぉぉら、そっくり!」

 声を張り上げた。

「人間から見れば、あんたたちは一緒よ! 魔界貴族、魔族、人類の敵!」

 死霊王を睨みつけた。

「そっくりって言われるのが嫌なら、あんたもやめて。二度と比べないで。あたしは、勇者ジャンじゃないんだから」



《汝の負けだ、死霊王》

 ハーピー魔王がすっごい目つきでリッチをねめつけ、それからぷいっと顔をそむけた。


《ケッ! 弱っちいくせに、このあたしに逆らうとはね! 生意気でバカな女だ。ジャンなら、このぐらいじゃ怒らないよ。自分をくさされたぐらいじゃ、へらへら笑ってやりすごす奴だったからね》

 また比べた! 言ってるそばから、もう!

《あいつより、あんたのが気が強い……たしかに、別の人間だね》

 ん?

《向こう見ずのバカ勇者。だれかれ構わずキャンキャン吠えてたら、そのうち首がふっとぶよ。ちったぁ慎みな》


 派手な化粧の死霊王が、アタシに顔を向ける。

《あんた……なんて名前だっけ?》


 忘れたのかよ。あんたの大好きなジャンと、ほぼ一緒の名前なのに!


「ジャンヌよ」


《ゆーちゃジャンヌちゃまか……》

 ハーピーが肩を揺らす。

《覚えてやるから、あんたもあたしを名前で呼びな》


 名前……


《『あんた』よばわりはいい加減やめとくれ。あたしゃ、死者を統べる死霊王なんだよ》


 名前……

 シンプルな名前だったわよね……死神王は何度も『ちゃん』付けで呼んでた。アレは愛称?……えっ? でも、あらら? なんだっけ?


《忘れたのかよ! 頭の悪い小娘だねえ! ジャン以上のバカだ!》

 ムカッ! あんただって忘れてたくせに!


《死霊王ベティだよ! 『ベティ様』か『ベティさん』って呼びな! いいつけにそむいたら、首ちょんぎってやるからね!》


「わかったわよ! ベティさん!」

『様』づけは、ぜったいにするもんかッ!


 ハーピーはクスッと小さく笑い、それから胸をそらして、ギヒヒヒヒと大笑いをした。大きな生胸(なまむね)を見せつけるかのように、たっぷんたっぷんに揺らして。


《なかなおりしたんなら、おちゃにしようか》

 ふと見ると、テーブルの周囲にチビッコ堕天使が五人。サリーの分身たちは、いそいそとお茶やお菓子を並べてる。

《ユーシャちゃんも、クマちゃんも、ベティちゃんも、ダーちゃんも、どうぞ〜 あたしんちのは、にんげんがたべてもドクじゃないから〜 なんだったら、そっちの子がもってるカミのたべものもたべて〜 げんきもりもりにならないと、カガミにのみこまれちゃうからねー》

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